2023年11月10日

【ホース・チューブ・継手特集】
ユーシー産業

長く愛用される製品を供給
新製品認知度UPへ普及活動加速

ユーシー産業の今期のこれまでの業況(2023年12月期1―9月)は、売上高は前年同期比100%となり、昨年2度にわたって実施した価格改定を勘案すると出荷量については前年の90%程度にとどまった。販売が想定より伸びなかった主な要因としては、空調機器メーカーおよび空調工事店向けの需要が年度後半に向けて鈍化。コロナ禍においては、巣ごもり需要の拡大や〝換気〟への関心の高さから空調関連は大きく出荷量を伸ばしたが、今期では新型コロナの5類感染症への移行に伴う反動が顕著に現れており、長らく続く物価上昇も足かせとなって購買意欲が低迷。さらには円安や原油高に起因して多くの製品が値上げされたことも市場の停滞に拍車を掛けており、7月、8月の夏場は猛暑を背景とする需要の持ち直しでばん回したものの、年度中盤における落ち込みをカバーして昨年実績を上回るまでには至らなかった。

一方、建築・建設資材など、そのほかの主力需要業界向けについては全体的にこれまでほどの勢いは見られないものの、直近では大阪・関西万博関連の引き合いなどが増加。同社としてはこういったニーズも取り込んでいくことで、来期以降には業績に着実に反映されていくものと大きな期待をかけている。

製品の動向については、来期に向けて新製品「断熱ドレンホースNDH型接続パーツ付」の認知度アップに向けた普及活動をさらに加速させていく。近年、主要な取り組みの一つとして展開しているSNSを活用したインフルエンサーとのコラボ企画なども空調資材のシーズンオフに実施。NDH型接続パーツ付は、昨年5月に同社の公式アンバサダーに就任した「エア魂女子(空調工業業界で高い知名度を誇るインスタグラマー)」により、SNSでの発信を通じてくみ上げた情報を生かして開発・製品化されており、同製品は今期シーズン半ばでの発売開始であったことから市場認知度はまだ高いとは言えないものの、オフシーズンにおける各種のプロモーションを強化していくことで、さらに認知度を向上させながら今後の販売拡大を図っていく。

また、コロナ禍によるさまざまな規制も緩和が進んだことで、各種の展示会が通常開催されていることも拡販活動の追い風となっている。今年7月に開催された「管工機材・設備総合展」では、建築・建設向け「エバフリー」において、BFP型の拡管なども参考出品。同製品は来場者の関心が高く確かな手ごたえをつかんだことで、来期の市場投入に向けて量産化の準備を、現在進めている。また、これまで対面による提案活動が叶わなかった地方の顧客や二次店へも積極的に訪問しており、NDH型接続パーツ付などの新製品においても、直接ユーザーへコンセプトと製品メリットを訴求できることで理解度も高まり、採用を獲得するケースが増えつつある。同社としては、今後もSNSやインフルエンサーとの協業による情報提供の取り組みも推進しながら、同時に従来までのフェイストゥフェイスの営業活動も大切にし、さらなる拡販に向けたシナジー効果を出していく方針。

現状の大きな課題としては今期においても原材料、物流費、エネルギーコストなどの高止まりが継続しており、昨年までの価格改定によって収益改善への一定の効果を得たものの、続騰するユーティリティコストの上昇分までは吸収できている状況とは言い難い。ユーザーにおいても価格転嫁を進めたことで製品の末端価格が上昇。そういった状況も手伝って市場での買い控えが誘発され、現状ではこれ以上の値上げについては難しいと考えられる中、同社としては、これまでも実施してきた社内合理化や自動化などをさらに推し進め、さらに収益性の改善を図っていく考え。具体的な取り組みとしては、数年前から立ち上げた専任の開発チーム「先行開発部」の主導で、製品開発だけではなく社内合理化に向けた設備を独自の設計で導入。二次加工、リーク検査、梱包など複数台が既に稼働しており、現在も並行して5台の合理化設備を製作中で、これらによってさらなる生産効率の向上に期待している。ほかにも全社的な「改善提案活動」をさらに活発に行いながら、引き続き製造現場におけるコストダウンに取り組んでいく。

物流体制においても、鳥取工場の倉庫を新設したことで在庫を集約。社内での物流の簡素化も進展しており、業務のスピードアップを実現した。今後の計画としてはスペース的な余裕が生まれたことで、さらに社内物流の効率化に向けたレイアウトなどを検討しており、自動搬送機などの導入も視野に入れながら、一層の物流の効率化を目指していく。

同社では今年、創立60周年という企業としての大きな節目を迎えた。独自性の高い多くの製品が「使用する側の求めている製品」という考え方を基本に開発されており、ユーザーの満足を得るためのモノづくりを信条として日々の開発に励んでいる。同社では今後とも「ただ〝売れるため〟〝利益を上げるため〟の商品ではなく、市場とエンドユーザーに必要とされる製品を追求し、結果として市場で受け入れられ、長く愛用してもらえる製品を供給し続けていくことで、顧客と社会にメーカーとしての責任を果たしていく」(永𠮷昭二社長)。