2023年11月20日

三井化学
アンモニアと水素の同時合成に成功

光バイオ触媒で空気と水から

三井化学(橋本修社長)は、九州大学のカーボンニュートラル国際研究所三井化学カーボンニュートラル研究センターの石原達己教授、Kosem Nuttaⅴut特任助教、大﨑穣特任助教らの研究グループが、従来のシアノバクテリアの生体機能の一部の代謝系を、光触媒を用いて代替することに加え、生成したアンモニアの代謝を抑止することによって常温、常圧下で窒素と水からアンモニアと水素の合成に成功したことを発表した。

アンモニアは肥料や工業原料として広く使われる有用な化学薬品で、近年はグリーン水素の運搬の媒体としても期待されている。従来は400度、200気圧以上という高温、高圧下で窒素と水素を用いて合成されており、エネルギー多消費のプロセスであった。一方で、ニトロゲナーゼという酵素では常温、常圧下で、アデノシン三リン酸(ATP)をエネルギー源としてアンモニアを合成するが、反応速度が非常に遅いことが課題となっている。

今回シアノバクテリア内のニトロゲナーゼに、光触媒を用いて還元した電子伝達媒体のメチルビオロゲンを用いて、直接電子を輸送することにより、大気中の窒素と水から直接、アンモニアを生体触媒に比べて80倍以上の速さで合成できることを見いだした。この生成速度は、従来の報告と比べても40倍以上の生成速度となる。さらに、シアノバクテリアの培養条件を最適化し、ニトロゲナーゼを含むヘテロシスト細胞を増加させたことで、比較的早い反応速度でのアンモニアと水素の合成を実現することができた。今回は、シアノバクテリアという生きている細胞内の酵素へ、光触媒で発生した電子を直接MVの電子伝達系を用いて伝達することで、100時間以上の長期にわたり反応を行うことができたことから、新しいアンモニアと水素の人工光合成の手法として期待される。

今後は、アンモニアの生成速度をさらに向上させることを目的に、他のタイプのニトロゲナーゼの応用と長期安定性の向上、電子伝達系の高速化、無機光触媒の可視光応答化による太陽光エネルギー変換効率の向上などを行う。特に電子伝達系を工夫することで、アンモニアと水素の生成速度の向上が期待できるとしている。一方で、5年程度後より実用化を考慮し、パネル型の反応器への応用を行い、実用性を三井化学と連携して進めていく。