住友化学
新パイロット設備
CO2からメタノール製造
【IRCの原理(概念図)】
住友化学(岩田圭一社長)は、CO2からメタノールを高効率に製造する実証に向けたパイロット設備を愛媛県新居浜市で稼働させている愛媛工場に新設し、運転を開始した。今回の設備は、NEDOのグリーンイノベーション(GI)基金事業の助成を受けて建設したもので、同社では今後、2028年までに実証を完了させ、30年代の事業化、他社へのライセンス供与を目指す。
CO2を回収利用する技術(Carbon Capture and Utilization、以下、CCU)は、地球温暖化防止や炭素循環型社会実現のための切り札として、その開発と普及への期待度が上昇。特にプラスチックや接着剤、薬品、塗料など、多様な製品の原料であるメタノールをCO2から製造する技術は、CCUの代表的な存在ながら、従来のCO2からのメタノール製造には、原料から生成物の方向と同時に、生成物から原料の方向へも進行する可逆反応であることから、収率の低さや副生する水による触媒劣化といった課題があった。
住友化学では、島根大学総合理工学部の小俣光司教授が研究を進めてきた内部凝縮型反応器(Internal Condensation Reactor、以下、ICR)に着目し、共同開発を進めることによってこれらの問題を解決した。ICRでは、既存技術では難しかった反応器内でのメタノールや水の凝縮分離が可能で、収率の向上、設備の小型化、省エネルギー化につながるとともに、触媒劣化の抑制も期待できる。
住友化学では現在、GI基金事業において、6つのテーマ(ケミカルリサイクル技術4テーマ、CO2分離膜、正極材リサイクル)で採択を受託。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、革新的な製造プロセスの研究開発、実証、社会実装を進めることで、サステナブルな社会の実現に向けて貢献していく。