2024年1月10日

新春トップインタビュー2024
バンドー化学

柔軟性持ち計画成し遂げる
一丸で勇健に前進

【2023年を振り返って】
世の中の変化はますます激しくなり、予測できないようなことが多発した。海外においてはイスラエル・パレスチナ問題など、地政学リスクが顕在化し、貿易摩擦や為替動向をはじめ、難しい舵取りを迫られた一年であった。

昨年は新中長期経営計画(Creating New Value for the Future)のスタートの年として、〝繋(つなぐ)〟というキーワードを掲げて推進してきた。この言葉には、新たな目標に向かって全従業員の気持ちを一つにして臨みたいという思いを込めており、計画の方向性を従業員一人ひとりが認識し、力を一つに繋ぎ合わせていくことを主眼に置いた。

その実現に向け、昨年はグループ会社を含めた国内17カ所の拠点を回り、自身の言葉で会社の方針を従業員に伝えてきた。また、海外拠点にも順次訪れ、コロナ禍では難しかったスタッフとの対面でのコミュニケーションに努めた。新中長計においても、前中計からの大きな方向性を踏襲しており、やるべき課題にしっかりと取り組んできた。計画初年度としては思い描いた軌道に乗っていると思う。グループの全従業員と思いを共有し続けていく重要性を実感しており、今後も現場に足を運んで対話を重ねながら進めていきたい。

【現状と通期の業績見込みについて】
2024年3月期の第2四半期の業績については、売上収益は前年同期比3・3%増の539億2700万円となり、増収増益で折り返した。中国の景気減速などの影響もあったが、為替の追い風を受けたことが大きかった。通期の見通しについては、期初に掲げた売上収益1050億円、コア営業利益75億円という計画値は据え置いているが、為替が想定より円安基調で推移していることで親会社に帰属する当期純利益は63億円に上方修正した。決して簡単ではないが、目標必達に向けてしっかりと取り組んでいきたい。

【新規事業の進ちょくについて】
新たな事業分野に向けては多様な案件を手掛けているが、特に前中計から継続して力を入れている医療機器・ヘルスケア機器市場への連続的な上市に向けて余念がない。グループ会社のAimedic MMTとの連携による取り組みを加速させており、同社から昨年4月に吸収性骨再生用材料「e=Bone(イーボーン)」の販売を開始した。医療機器・ヘルスケア機器事業については、今後のさらなる成長に向けて確かな手ごたえを感じている。

一方、電子資材事業においては、銀ナノ粒子接合材「FlowMetal(フローメタル)」に注力している。銀ナノ粒子の特長として低温による焼結結合を可能としており、半導体関系の需要拡大が本格化していく中で、引き合いも増加している。こういった新しい取り組みを着実に事業化していくことで、将来を担う柱の一つに成長させていきたい。

【原材料・ユーティリティコストの高騰や2024年問題への対応は】
原材料については、一時の高騰に歯止めが掛からない状況に比べると落ち着きを見せているものの、エネルギーコストとともに高止まりしており、依然収益面の大きな障壁として立ちはだかっている。製造業としては当然のことではあるが、不良やロスの削減をはじめ、一層の生産性改善を図りながら、厳しさを増す外部環境への対応に努めたい。

物流面では、コロナ禍において混乱した状況はある程度正常化している。しかしながら、物流業界の人手不足を背景とする物流コストの上昇は避けられない課題ととらえており、ルートの集約や在庫の持ち方などをさらに見直しながら、供給面でお客様にご迷惑をかけない備えを整えている。

【研究開発と製造現場の体制について】
新中計では今後、育て上げていくべき戦略分野への投資に重きを置いている。一方、コア事業についても、まだまだ需要の拡大が見込める分野が顕在化しており、具体的には大型農機向けベルトや、多用途4輪車用ベルトなどの拡販に向けた取り組みを進めながら、新中長計で掲げた施策の遂行に弾みをつけていきたい。ほかにも、カーボンニュートラルの達成に向けては、中計のロードマップで描いた環境目標に必要となる投資を計画的に実施していく。

【自動車のEV化への対応は】
欧米・中国におけるEV化の進展は想定よりも加速しており、将来的には内燃機関に搭載されるベルトの需要が縮小していくことは否めない。一方、インドや南半球に多くある新興国では、ハイブリッドを含めた内燃機関向けのベルトの需要が一定の水準で継続すると見込んでいる。そういった各地の市場の動きに追随していくためには、一方に偏らないニュートラルな姿勢を維持しながら臨みたい。現状の大きな方向性としては、グローバルでのアフターマーケットにおけるベルト交換需要の取り込みに注力しているほか、EV車に対してはEPS、パワースライドドアなどエンジン以外の駆動部で使われるベルトの拡販に向けた取り組みにも注力している。

【今年の抱負を】
事業環境の変化のスピードは加速の度合いを強めており、正解を導き出すことが難しい時代ではあるが、一つのプロセスにとらわれることなく柔軟性を持って計画を成し遂げていく。

今年の意気込みを表す漢字一文字を挙げるなら〝勇〟とした。新中長計で打ち出したコンセプトから決してぶれることなく、全社が一丸となって勇健に前進していきたい。