2024年1月10日

新春トップインタビュー2024
アキレス

シューズの復活へ
全社が一丸となって跳躍

【昨年を振り返って】
今期(2024年3月期)第2四半期までの需要分野ごとの業況としては、車輌用内装資材は中国の景気減速によって少なからず影響を受けたが、日本と北米は自動車メーカーの生産が回復基調に乗っていることで、おおむね販売は好調に推移した。また、建築資材関連においては新築住宅着工件数の減少を背景に住宅分野が伸び悩んだものの、物流倉庫や工場などの非住宅分野が活況を呈したことでカバーし、ほぼ前年同期並みの実績で折り返した。

一方、半導体関係を含むエレクトロニクス分野では、顧客の在庫調整の長期化によってフイルム製品と半導体ウエハー搬送材の需要低迷が想定より長引いている。しかしながら、半導体関係は中・長期的な需要の拡大を見込む重点分野であり、来る需要変動の波に備えて営業の種まき活動にじっくりと取り組んでいるところだ。

当社が事業を展開する幅広いマーケットを見渡すと好不調の明暗が浮き彫りになっている印象で、上期では車輌用内装資材や非住宅分野の建装資材など、新規の需要開拓が見込める分野に特化した拡販活動に専心してきた。現状では、そういった好調な分野以外の市場の回復が遅れていることは否めないが、半導体も来期以降は本格的な回復に向かうと見込んでおり、自動車関係でもさらに新車種への採用や非日系メーカーの新規開拓に努めながら、通期の計画を着実に達成していきたい。

【シューズ事業の取り組みについて】
昨年は主力のジュニアスポーツシューズ「瞬足」が発売開始20周年の節目を迎えた。数々の工夫を凝らした20周年記念モデルの投入や、5月には記念イベントを国立競技場で開催したが、久しぶりの競技会を楽しんでいる子どもたちを目にして、改めて〝シューズの復活〟に向けて決意を新たにした。当社のシューズ事業は「子どもたちの足を近年の社会環境の変化から守り、本来の健康な足の成長を促すこと」を目的とする『足育(そくいく)』理念に基づいて推進している。今後も子ども靴の根幹をなす『足育』という軸をぶらすことなく、SNSの活用など多様な形で、シリーズ累計販売足数8000万足を誇る瞬足の発信力を高めていきたい。

「ソルボセイン」を搭載した大人向けの商品「アキレス・ソルボ」と、米国ランニングシューズブランドの「BROOKS(ブルックス)」については前年より販売を伸ばすことができた。しかしながら、マーケット全体が活況とは言えない中、量販店では展開アイテムの再構築が進んでおり、PB商品や低価格商品へのシフトが加速していることで、当社のシューズ事業も苦戦を強いられている。

アキレス・ソルボについては、〝履きやすく長く歩いても疲れにくい〟という特長が多くのユーザーの支持を集めている。少子高齢化が進む中、シニア層の需要は今後も拡大していくと見通しており、幅広い支持層の獲得に向けて新しいデザインの展開も図りたい。また、その拡販には、接客が非常に重要なプロセスである。事前に研修を実施した当社採用の販売員を、百貨店を中心に派遣し、試し履きも合わせ、商品の機能の理解を深めながらの接客でアキレス・ソルボのファンづくりに取り組んでいる。

【今後さらに力を入れていく事業分野は】
各市場の回復度合いに隔たりが見られる中、伸びるセグメントにフォーカスして受注に結び付けていくため、防災事業、モビリティ関係、半導体をはじめとするエレクトロニクス分野、住宅市場を含めた省エネ事業など注力分野での取り組みを加速させる。ほかにも、防災事業におけるインフラ関係では、当社独自の土木工法の新規採用に向けてゼネコンへの訴求を強化する。

防災関連では、これまでも幾多のテーマを掲げて開発を進めているが、近年では事業所が所在する多くの自治体と災害時の協定を締結している。有事に避難所で使用する製品の供給および場所を提供することで、災害現場で活動するスタッフと被災された方にお役に立てることを念頭に取り組んでいる。

【現状の課題を挙げるとすれば】
ここ数年、続騰している原材料は高止まりしており、当社としては苦渋の決断として実施した価格改定の効果も、エネルギーコストや搬送コストの高騰といった、すべてのコストアップを吸収し切れていない実状がある。今後の対応策の一つとして、物流については搬送ルートを集約するなど、お客様と相互のメリットを享受できる体制を構築していきたい。

また、製造業としては当然のことではあるが、生産プロセスの効率化による収益性の向上にも力を入れている。昨年11月の〝品質月間〟においては、役員が全工場を回ってその取り組みの進ちょくと成果を確かめてきた。社長就任前に製造部門トップを務めていたころから「スマートプロセス」を掲げて改善活動に取り組んできたが、AIを駆使した検査工程の効率化をはじめ、さまざまな側面から成果が生まれている。さらに収益改善に向けた効果だけではなく、スマートプロセスの進化によってCO2の排出量削減にもつながっている。こうした改善活動についてスピード感を持って推進していくことで、地球環境の保全にも貢献し、製造業としての社会的な責任を果たしていきたい。

一方、製品面の取り組みでも品質と機能を担保しながらバイオマス度を高めていく開発を進めており、軟質ウレタンフォームなどではバイオナフサによる製品化も達成している。農業用フイルムでは、生分解性プラスチックを使った製品を上市しており、環境への配慮とともに作業者の労力が軽減されると評価を頂いている。

【従業員エンゲージメントの向上に向けては】
当社は創業時より〝人〟を大切にする企業文化が根付いており、離職率についても低い水準を保っていると自負している。世代による価値観の変化に伴った影響は全くないわけではないが、今後も人を大切にした事業運営を継承しながら、社員が〝やりがい〟を覚える、時代に即した企業風土を作り上げていきたい。具体的な例としては、若い世代にも仕事を任せて責任を持って取り組んでもらうことに重きを置いている。そのために社内の研修についても充実を図っており、新入社員向け、工場・営業スタッフそれぞれの研修、海外展開の強化に向けた研修など、〝人財〟を育て上げる投資にもこれまで以上に力を入れる。

【新年の抱負と意気込みを】
事業を取り巻く環境の変化は、加速度を増している。目まぐるしい変化の波に乗り遅れないよう推進することを鑑み、今年の漢字一文字は”跳”とした。現場に足を運び、現場起点で物事を考えることを大切にし、進むべき道を見定め、全社が一丸となって跳躍していく年にしていきたい。