2024年1月20日

新春トップインタビュー2024
三ツ星ベルト

供給体制を最適化
変化を見据え歩み着実に

【2023年を振り返って】
第1~第2四半期(2023年4―9月)については、射出成形機や工作機械などといった設備投資に関する案件が伸び悩んだことによって、一般産業用ベルトが厳しい状況に置かれた。2021年、2022年における価格改定に伴う市中在庫の買い増しの動きが背景にあり、2022年の受注の好調な伸びが以降の在庫調整の局面を呼び込んだと言える。第3四半期以降の下期に需要が回復する見通しを立てていたが、現時点においては顕著な盛り返しの気配は見られず、第4四半期以降に状況が回復に向かうものと予測している。自動車用ベルトは、部品不足による生産調整の局面が解消されたこともあって需要が回復している。

【海外市場における動向については】
海外における事業展開は〝現地生産・現地供給〟の姿勢を基本としており、経済環境の変化や地政学リスクの高まりによるお客様のさまざまな生産体制の変化に対応し、当社としては、生産品目と生産地域の組み合わせなどによってお客様の状況に沿った供給体制の最適化を図っている。2012年にインドのムンバイに自動車や二輪車用ベルトの新工場を開設した。その後の需要の増加に伴い、2017年には新工場に移管して供給体制の拡大に取り組み、その後も需要増の勢いは衰えを見せなかったことから、新たに8万平方㍍の敷地をインドのマハラシュトラ州のスパ工業団地に取得し、2023年4月に新工場を立ち上げて稼働を開始させた。現在、インドにおける生産はムンバイの現工場と新工場の2拠点体制で生産を行っているが、2025年ごろには新工場に生産機能を完全移管して稼働させる計画を立てており、2026年には生産体制再構築の第1ステップを完了させる。インド市場における自動車や二輪車用ベルトの需要は一段とおう盛に拡大しており、生産体制構築の完了が業績と利益にしっかりと反映されるものと期待している。

【2024年の物流問題への対応については】
深刻な問題ととらえており、国内の体制再編の一環として、名古屋工場において生産ラインと物流倉庫を併設した新棟を建設中で、2026年までに完成させる。自動倉庫も導入し、国内各工場から発送していたOEM製品を名古屋工場に集約し、一元管理をしていく。物流の効率化では、全国に販売網を備えている販売会社である三ツ星ベルト販賣の拠点も活用していく。三ツ星ベルト販賣が構えている全国各地の拠点のうち北海道、東北、関東、関西、中国、九州といった主要なエリア各地域において製品の在庫を充実させ、お客様に効率的に供給する体制を構築していく。

【EV化への流れの対応について】
自動車に限らず、あらゆる機械において電動化が進むことによって、ベルト需要拡大のチャンスが広がるものと見ている。自動車のEV化では、EPS(電動パワーステアリング)やPSD(パワースライドドア)に組み込まれるタイミングベルトの需要が伸びを見せており、国内外の生産拠点においてラインの増設を行っている。特にEPS向けが好調に推移しており、日系だけでなく海外メーカーからの引き合いも増加している。二輪車用も電動化になれば、チェーンやギアに比べて静粛性や軽量、メンテナンスが容易といった利点からベルトへの置き換えを進めたい。さまざまな機械で電動化が進むことで、タイミングベルトやプーリなどの用途が広がることによって、新たな需要を創出できる可能性も高まる。内燃機関の補修部品の需要も現在のところおう盛で、当社としてはEVだけでなく、内燃機関用ベルトの拡販も継続して実施していく。ユーザーからの要望に対して愚直に対応する姿勢を大切にしているが、この姿勢は当社の強みでもあり、国内外で情報を共有しながら拡販活動を進め、新たなビジネスチャンスの獲得にもつなげていきたい。

【2024年の経営方針と抱負について】
2022年5月に見直した’21中期経営計画において、2030年度のありたい姿として〝変化にぶれない強い企業体質の確立〟を掲げている。収益性、資本効率性、設備投資、人材戦略、ESGなどといった切り口から各施策に取り組み、業績面については、2030年度の売上高として1000億円を目標に掲げており、現状までの売上高の推移で見通せば、達成可能な数字として予想している。また、当社では人的資本経営を基本にしており、人材戦略強化の一環として、ダイバーシティの推進、安全と健康、働きがいのある職場づくりといった3点に力を注いでいる。従業員のエンゲージメント向上については、職場環境などの充実を図り、〝変革を恐れないチャレンジ精神を大切にする企業風土〟の醸成を促進していく。デジタル戦略本部主導により、全社的な変革に向けたDX(デジタルトランスメーション)化を推進しているが、人材戦略の一端としてまずは人材育成から取り組み、階層別にDX教育を推進している。

当社の2024年の活動指針を言い表す漢字一文字としては〝視〟を上げており、急激な変化を遂げている市場や情勢を常に注視しながら、新たな可能性を見据え、次のステップアップに向けた企業としての歩みを着実に進めていく。