2024年2月20日

トップインタビュー2024
住友理工

売上高 事業利益 過去最高更新へ
持続的成長が最大の目標

【昨年を振り返って】
主力の自動車用品においては半導体不足の問題が収束したことで、事業を取り巻く環境は大きく好転したものの、海外では地政学リスクが顕在化し、決して平穏とは言えない一年だった。しかしながら、業績面では期初に想定以上の自動車生産が回復したことで、今期(2024年3月期)第3四半期までは非常に好調に推移した。ようやく事業においては、コロナ禍による影響から抜け出したと実感している。今期がスタートした時点では上期までは自動車減産の影響は残ると見込んでいたものの、スピード感を持って自動車メーカーの生産が立ち上がったことで、通期の業績予想の売上高5600億円、事業利益200億円を、8月に売上高5900億円、事業利益270億円へ、10月に売上高は6000億円、事業利益は280億円、そして1月には売上高は6100億円、事業利益は340億円へと上方修正を行った。

一方、一般産業用品の化成品においてはここ数年、プリンターや複写機など事務機器向けの精密製品が在宅勤務の普及を背景に伸び悩んでおり、コロナが収束に向かったことで持ち直しの動きを期待したものの、現状ではコロナ禍以前の水準まで回復していない。近年では、ペーパーレス化に伴って市場規模は緩やかな縮小傾向にあることから、現在は工場集約によって需要に見合った生産体制を整えており、今後も収益性を高めていくことを念頭に着実な需要の取り込みに専心する。

また、産業用ホースについては、事業を展開している中国において、現地経済低迷の影響を被った。景気低迷のあおりを受けており、当社の販売においても一昨年までの勢いが見られなかった。

そのほかの製品分野では、鉄道車両用防振ゴムが安定した需要に支えられ堅調に推移した。また、免震・制震関係については、ビル用制震システム「TRCダンパー」が建て替えを行った中日ビルでの案件を獲得したほか、橋りょう用免震ゴム支承は東海環状自動車道において採用された。近年、類を見ない大型案件でもあり、2026年の全線開通に向けて引き続き供給に力を入れている。

【通期の見通しと今年の需要予測について】
今期はまだ第4四半期を残しているものの、グローバルの自動車生産台数がコロナ禍以前の実績を下回っている中で、前期に引き続き売上高、事業利益とも過去最高を更新すると見込んでいる。自動車用品では、中国や欧州の景況感に不安要素があるものの、計画通りに推移している。中国ではまだ日系カーメーカーが苦戦を余儀なくされると見ているが、グローバルでの自動車生産台数は今期よりさらに伸びると見込んでおり、市場の回復はさらに鮮明さを増している。一般産業用品においても中国経済の動向がカギになると見ているが、建設需要自体はあるので、補修市場における交換需要の取り込みに力を入れている。産業用ホースのさらなる拡販に向けては、中国現地代理店との取り組みを強化しており、昨年はコロナ禍で見合わせていた代理店会を4年ぶりに開催することができた。以前との比較では倍近くまで加盟店が増えており、会合では厳しい市場環境においても、拡販にまい進しようという頼もしい気構えを感じ取ることができた。

【中期経営計画の進ちょく状況について】
2025年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画「2025年 住友理工グループ中期経営計画(2025P)」においては、定量目標として売上高6200億円、事業利益280億円を掲げて推進しているが、事業利益については、初年度の今期で既に目標数値をクリアすると見込んでいる。この勢いを維持しながら、来期以降も着実な成長を果たしていきたい。計画の大きな方向性としては、数値目標はあくまで一つの指針であり、根底的には持続的な成長が最大の目標ととらえている。

【今後の課題と対応策、展望について】
業績的には、思い描いた軌道に乗っている。今後は事業の新規案件を確実に獲得することに努めお客様のニーズよりもさらに一歩先を行く事業展開に拍車を掛けたい。

自動車用品においては、これまで取り組んできたEV化への対応をさらに加速させる。また、一般産業用品では、プリンター用品は富士裾野製作所から住理工大分AEおよび当社グループのタイ法人に生産機能を集約し、需要に見合った体制で事業の再構築を図っていく。

現在推進中の経営ビジョン「2029年 住友理工グループVision(2029V)」の達成に向けては、まず小牧製作所の刷新に着手した。一層の成長と進化に向けて、小牧製作所全体の見直しと再配置を進めており、化工品工場においては新工場を建築し、小牧製作所内に分散している化工品工場の集約を行う。また、生産の最適化だけではなく安全性の向上と労働環境の改善を念頭に取り組んでおり、夏場の暑さ対策やゆとりのある労働スペースの確保など、従業員が働きやすく、さらに力を発揮できる職場環境を整える。

事業の遂行にあたっては為替や市場動向など、さまざまな外的要因の変動にいかに柔軟に対応していくかを心掛けて取り組みたい。日ごろから変化はチャンスでもあるととらえており、いかに急激な変化の波にさらされようとも決して惑わされることなくまい進する。

昨年来、描いてきた「過去の概念にとらわれずに、変化に柔軟に対応するチームづくり」というスローガンは今年も引き続き、掲げて臨む。ここ数年で、若い従業員を中心に変化に対応できる人材は増えてきたものの、中堅クラスにおいてはこれまでの成功体験によって、まだ過去の概念にとらわれてしまう傾向があると感じている。自分自身も含めて、組織の中核をなす従業員が課題の解決に向けて変わっていくことで、変化の激しい時代においても積極果敢に挑戦して乗り越えていける組織を築き上げていきたい。