2024年2月20日

ミシュラン
仏に初の工場規模の試作設備

バイオ由来エタノールからブタジエン
新技術の商業化へ大きな一歩

ミシュラン(フロラン・メネゴーCEO)、IFP Energies nouⅴells(以下、IFPEN)およびアクセンス(ジャン・サンテナック会長兼CEO)は、フランス・ボルドー近郊のバッサンスに所在するミシュランの工場で、同国初のバイオマス(植物)由来のブタジエンを生産する工業規模の試作設備を開設したことを発表した。同設備は石油由来のブタジエンに代わる材料として、バイオ由来のエタノールからブタジエンを製造することを目指し、ADEME(フランス環境エネルギー管理庁)の支援を受け、3つのパートナーが参加するバイオバタフライ・プロジェクトの枠組みの中で建設された。バイオバタフライ・プロジェクトは、バイオベースの合成エラストマー産業を創出する上で、重要な一歩を踏み出すこととなる。

ブタジエンはC4ジオレフィンで、多くのポリマーの製造において重要な中間体。ブタジエンの40%はタイヤ市場向けのエラストマー生産に使用され、残りの60%は主にワニス、樹脂、ABS樹脂、自動車用ナイロン、織物、建築資材の製造に使用されており、こうした広範な用途は、バイオ由来のブタジエンに新たな市場を提供する。

昨年7月に開始された工業規模の試作設備では、バイオ由来ブタジエンの製造工程における各段階を検証する必要があった。こうしたプロセスを経て、技術的および経済的な実現性が証明され、年間の生産能力が20㌧から30㌧に向上し、迅速な発展が可能になる。

この試作段階は、新しいプロセスをグローバルに商業化するための道筋を提供し、化石資源に依存しない革新的な合成ゴムの製造を可能にし、新しいバイオ由来のブタジエン市場をさらなる発展へと導く。アクセンスによるこの技術の商業化は、再生可能なブタジエンを大量に確保するための重要なステップとなる。

試作設備の開設はミシュラングループ、IFPEN、アクセンスの3つのパートナーがフランスのバイオ由来の合成エラストマーセクターの発展を促進し、より持続可能な産業に積極的に取り組み、新しい産業を創造することを目指す。

ミシュラン経営評議会執行副社長、研究開発部門運営ディレクターのエリック・ヴィネス氏は「ミシュランは合成ゴムの製造に石油由来のブタジエンを使用している。この技術は、2050年までに当社のタイヤで天然由来材料・リサイクル素材を100%使用するという目標を達成するための素晴らしい機会。また当グループは、循環型素材や再生材料・リサイクル素材の使用というミシュランの中核目標に沿い、再生可能なブタジエン製造部門の発展を支援したいと考えている」と、述べている。

また、ミシュランはパートナーと連携して新しいエコシステムを構築し、バリューチェーンにかかわるさまざまなプレーヤーとのシナジーを発展させ、再生可能なブタジエンの製造を推進している。将来的にこれらのエコシステムは持続可能でバイオ由来の製品への需要の高まりに対応するため、世界中に工場の建設を予定している。

現在までに、バイオバタフライ・プロジェクトは総額8000万ユーロ以上の投資を表しており、そのうちADEME主導の「未来への投資プログラム」による支援は1470万ユーロになる。同プロジェクトは、ヌーヴェル=アキテーヌ地域とボルドー都市コミュニティからも支援を受けており、バッサンスに所在するミシュランの工場では、これまでに20人分の新規雇用が創出されている。

IFPENは、エネルギー、輸送および環境分野における主要な研究・研修機関。気候、環境および循環型経済、再生可能エネルギー、持続可能なモビリティおよび責任ある炭化水素資源という4つの戦略的優先分野に基づいて、基礎研究からの科学的概念から、応用研究における技術革新がすべての活動の中心になっている。

IFPENグループの子会社であるアクセンスは、石油とバイオマスのクリーン燃料への変換、石油精製・石油化学向けのプロセス技術ライセンス、触媒販売およびガソリン処理と変換のためのソリューションを提供するグループ。技術、機器、加熱炉、モジュラーユニット、触媒、吸着剤および関連サービスを提供。フィージビリティスタディーから装置の立ち上げとフォローアップに至るまで、バリューチェーン全体を網羅している。環境負荷低減に寄与し、最高品質のパフォーマンスを保証する。高度な訓練を受けた人材、最新の生産施設、産業および技術サポートとビジネスサービスのためのグローバルネットワークにより、ソリューションをグローバルに提供している。