日本ゼオン
革新的な視覚効果の新素材開発
広帯域化コレステリック液晶素材
日本ゼオン(豊嶋哲也社長)は、光学フィルム事業などで培った独自技術によって革新的な視覚効果を持つ新たな素材「広帯域化コレステリック液晶素材」を開発した。
同技術は中南米に生息しているプラチナコガネの生体模倣から着想を得ており、プラチナコガネは金属成分なしで金や白金の色を再現している。この特長的な色の秘密は表面構造が特異的な光学特性構造になっているためで、特殊な構造によって広い波長の光、可視領域ほぼすべての光を反射させることができるため、あたかも金属光沢のような金色や銀色、白金のような鮮やかな色を再現している。これと同じ仕組みを人工的に再現したものが、今回の技術。同社が長年の研究で生み出した液晶材料、塗工プロセス、光学設計の3つの技術を組み合わせることにより、これまでにない革新的な視覚効果を実現した。
新素材は、光の反射を利用したさまざまな視覚効果を実現できる広帯域化(反射光波長が可視光域以上の広帯域にわたること)コレステリック液晶(分子をらせん状に配列した構造。らせんのピッチ長により反射する色を変えることが可能)で、ゼオン独自設計の液晶材料および特殊な塗工プロセスにより、コレステリック構造のらせんピッチをナノオーダーレベルで制御し、フィルムに成形したもの。同社はこの超精密に構造を制御したフィルムやこれを粉砕し、フレーク化して印刷したものに革新的な視覚効果を持たせることに成功した。特長的な3つの視覚効果として▽透明なシートでありながら、表と裏で別の図柄が見える「表裏反転タイプ」▽スマートフォン画面の光を当てたり、偏光機能を持つビューワーで見たりすることで、図柄が浮かび上がる「潜像タイプ」▽肉眼で見える図柄や色が、偏光機能を持つビューワーを通すと見えなくなる「消像タイプ」がある。
この新素材は、今までにない新しいデザイン素材としての利用や、独自製造技術により偽造防止目的での活用が期待されるだけでなく、機能的でありながら人々に楽しさも提供できる可能性を秘めている。材料としての特長としては①高い汎用性とデザイン性=フレークの印刷はスクリーン印刷等の印刷技術を用いることができ、曲面にも使用可能。デザインに制限はなく、さまざまな表現が可能②豊富なカラーバリエーション=幅広い色を表現することが可能。コレステリック構造のらせんピッチをナノオーダーレベルで制御することで、光の反射を利用して長波長の赤から短波長の青紫まで、さらに同色でも淡色から濃色に至る色を表現できるほか、すべての可視光を同時に反射させて銀色(無着色の金属光沢。金属成分なしの薄膜単層での銀色発色は世界初)を表現することも可能③金属不使用=金属光沢を持つ外観を表現するのに金属を一切使用しないため、金属アレルギーの人が身に着けるものにも使用可能④高い模倣難度=ゼオン独自の素材と特殊製法で作られているため、模倣が極めて困難――が挙げられる。
なお、この新素材は美術作品、服飾品、エンターテインメント用途として想定されているが、現時点では研究開発品であり、今後の市場開拓に向けて開発が進められている。
独自素材使用の美術作品をジョイントプロモ
また同社は、世界的アーティストであるロメロ ブリット氏が同社独自新素材(広帯域化コレステリック液晶素材)を使用した美術作品を、ジョイントプロモーションで世界初披露する。
今回、ブリット氏が世界で初めてその素材を採用した美術作品を10点制作し、そのうちの5点が4月2日から伊勢丹新宿店で開催される同氏の個展において日本ゼオンブースで展示される。同氏が各作品に込めた隠されたメッセージを、肉眼では見えない潜像が偏光機能を持つビューワー越しに見ることができるデザインを作品に施すことにより、これまでにない表現方法を実現した。
ブリット氏は「この特別な材料は、デザインとして作品に取り入れることができるため、鑑賞する人が楽しみながらこの作品が本物だと分かるところが秀逸」とコメントしている。