住友ゴム工業
ロードノイズ予測手法新開発

住友ゴム工業（山本悟社長）は、タイヤと車両の相互の振動によって発生するノイズの予測手法を新たに開発した。この手法の開発には、走行中のタイヤを想定したタイヤ転動シミュレーションを活用。同技術を応用することにより、タイヤメーカーと車両メーカーの双方で静粛性能の改善を図ることができる。車内静粛性が向上することで乗員の快適性を高めるとともに、開発工数削減による納期短縮や試作の削減による省資源を図ることが期待される。この技術を活用し、タイヤや車両のモデルベース開発（設計開発活動において、実物の試作部品ではなくコンピュータ上で再現した「モデル」にその軸足を置いて活動を進めることで、性能構想、設計、部品試作やテストにかかる時間と手間を大幅に短縮／削減し、効率的に開発を行おうとする開発スタイル）など、多様なユーザーニーズに迅速に対応するとともに、地球環境に優しいタイヤ開発を進めていく。

自動車走行時に路面凹凸の刺激がタイヤを通して車両に伝わり発生するロードノイズは、乗員の快適性を左右する非常に大きな要因の一つとなっている。今後、普及が予想されるＥＶではエンジン音が発生しないため、ロードノイズがより顕著になり、ロードノイズの低減がこれまで以上に要求される。

同社はロードノイズ低減のため、さまざまなタイヤシミュレーションを活用してきたが、ロードノイズはタイヤと車両が連成して発現する現象のため、タイヤだけでは実際に車両装着時の性能を高精度に予測することが困難であった。

今回、複雑なデータを分解してそれぞれの部分の動きを伝達関数として表現し、それらを組み合わせて全体の動きを予測する手法の「伝達関数合成法」を用いて、タイヤのみ、車両のみのロードノイズ性能を結合させてタイヤと車両が連成するロードノイズ性能を簡便に予測する手法を開発した。本手法では実験では評価することが困難なタイヤ転動状態でのタイヤ軸フリー転動振動特性を、シミュレーションで評価することを初めて可能にした。また、このタイヤ軸フリー転動振動特性をタイヤ静止状態と転動状態で比較した場合、ジャイロ効果（物体が回転する際に姿勢を乱されにくくなる現象）などによって振動特性の違いが出ることが確認でき、伝達関数合成法を転動状態で行うことの有効性が確認された。本研究内容は２０２３年自動車技術会秋季講演会で「伝達関数合成法によるタイヤ―サスペンション連成軸力予測手法の開発」として発表され、シミュレーションに必要な特許（特許出願公開番号：特開２０２２―３７６６６）を出願している。

この手法の確立によってタイヤ・車両の振動特性について、伝達関数という機密性が低く軽量なデータで両者を連成したロードノイズ性能予測を簡便に実施できるようになる。また、試作タイヤによる実車テストの工数削減が可能となるため、開発納期の短縮や資源削減を図ることも期待される。

同社ではＥＶの電費性能向上に効果的な「タイヤ空力シミュレーション」と今回のシミュレーション手法をタイヤ開発に活用することで、ＥＶタイヤや高機能タイヤ、モデルベース開発など日々変化する多様なユーザーニーズに迅速に対応するとともに、同社のタイヤ事業における独自のサーキュラーエコノミー構想「ＴＯＷＡＮＯＷＡ（トワノワ）」を通じ、資源の有効活用を図ることで地球環境に優しいタイヤ開発とＥＳＧ経営の推進をさらに加速させ、２０５０年のカーボンニュートラルの実現と持続可能な社会の発展に貢献していく。