フォルボ・ジークリング・ジャパン
インタビュー
社会や自然との共生を
顧客の潜在ニーズとらえ最適提案
【昨年を振り返って】
2019年12月期の業績については、売上高は前年比2%増となり、増収増益で着地すると見込んでいる。昨年は、従来にも増して〝タフな一年になる〟と気を引き締めていたが、当社が樹脂搬送ベルトを供給する多くの分野にわたって苦戦が続いた。さらなる拡販を期して攻勢をかけた食品関連も想定していたほど伸びなかった一方で、物流分野では年度後半における大型案件が売り上げに貢献した。その結果、通期全体では引き続き前年を上回る業績を達成することができた。市場環境が急速に変化する中でも多くのお客様に支えて頂いた結果として、着実な成長を果たせたことを一定の評価にしたいと考えている。
【設立50周年の記念の取り組みについて】
当社は2018年12月に設立50周年を迎えた。4~9月にかけて「ProsanフルシールHACCP」シリーズの〝無料トライアルキャンペーン〟を実施した。Prosanは競争激化が進む食品分野において、従来製品以上に衛生面に優れた特性を持っているためひと際高い伸びを継続している。キャンペーンではこれまで同製品を使用したことのないお客様にも製品特性を実感して頂く良い機会になった。使用環境や搬送物によってはProsan以外の製品を提案する場合もあったが、副次的な効果として食品業界向けの全体的な底上げにもつながり、さらにお客様と良好な関係を築き上げていく呼び水になったと感じている。
10月には記念講演会とともに感謝の会を開催した。これまでお世話になった皆様一人ひとりに深い感謝の思いと、当社の将来に向けた方向性を率直にお伝えできたことで開催して本当に良かったと思っている。多くのお客様からありがたいお祝いの言葉を頂いた。これを励みに、全社一丸となって次なる成長に挑戦していきたいと決意を新たにしている。
【今期の計画と方針について】
2014年の社長就任以降、2018年までの5年間は年率5%成長の目標をほぼ達成し続けてきたが、昨年来の市場を取り巻く環境の変化を織り込んで、今期は売上高前年比3%アップの計画でスタートを切った。昨年の反省をバネとして、主力の食品分野で厳しさを増す競争環境に立ち向かい巻き返しを図っていきたい。改正食品衛生法におけるHACCPの義務化が6月より施行されるので、そのタイミングに向けて製品スペックの優位性を打ち出しながら、お客様の使用環境に適した製品提案を行うためにも、さらなる製品の拡充を行い、販売を強化していく。
もう一つの柱である物流関連においては、EC領域の物流施設開設・拡張が依然進んでおり、引き続き成長分野として力を入れる。課題としては需要自体がおう盛なだけに、納期対応で二の足を踏むと商機の逸失につながりかねないので、供給対応力のさらなる確保に努めていきたい。また、商品ラインアップを拡充させるとともに一層のサービス向上に努め、お客様の潜在ニーズをとらえる最適提案を実現させていきたい。
【注目する需要分野について】
化学産業での原材料搬送や繊維分野での販売が伸びている。主軸となる食品分野と物流分野と並行して全体の底上げを図っていきたい。近年、営業活動を強化している自動車関係では、自動車メーカーに供給される部品メーカーへの展開に取り組んでいる。代理店の協力を得ながら、すそ野への深耕を目指しており、まだ刈り取りまでには時間を要するだろうが、変革期にある自動車産業の課題解決に貢献できる製品の提案を進めていく。
【今後の課題について】
工場の生産性改善に向けては、売り上げの成長に伴い毎年5%前後の改善を目指している。これまでは瞬間的に立ち上がった需要に対応できないケースもあったが、そのような局面でもしっかり対処できる工場の体制づくりを急ぐ。もともと当社は多品種少量のハイエンドな製品を作り上げていくことが得意であったので、中・大量生産のご注文への対応もこたえることのできる体制への見直しを図り、原反の製造だけではなく加工のスピードを上げることを重視していく。静岡の工場では加工ラインを中心に増員しており、必要に応じて設備の増強も随時行っている。それでも当社の工場だけでは間に合わない場合は、エンドレス加工を手掛けるパートナーの代理店のご協力も仰ぎながら、お客様のニーズにしっかりとこたえていきたい。
環境問題が世界的に大きくクローズアップされている中、当社は約10年前からグローバルに活動する企業として「サステナビリティ(持続可能性)」の価値観を取り入れている。樹脂ベルト産業に従事する企業として、社会や自然との共生を見据えながら、持続可能な開発に取り組んでいくことは、グローバル企業の大きな責務であると考えており、今後も継続的に取り組んでいく。
【今年の抱負を】
計画数値を達成するためには、より綿密で具体的な戦略を打ち立てる必要がある。グループ全体で掲げている戦略をベースとして、日本市場に合わせた戦略づくりも重要である。日本市場におけるニーズを吸い上げてボトムアップで組み込んでいくことが必要になる。世代交代が進む中で社員の自主性を尊重する風土へと改革が進んでおり、戦略については議論を重ねながら立案し、成長に向けた意思統一を全社で行い、これまで以上にまい進する。今年も事業を取り巻く環境は厳しさを増すことが予測されるが、変化はチャンスと前向きにとらえて、果敢に挑戦を続けていきたい。