2020年2月25日

TOYO TIRE
2つの技術を新たに確立

AI等融合のT―MODE活用

TOYO TIRE(清水隆史社長)は、CAE(コンピューター・エイデッド・エンジニアリング=コンピューター支援技術)とAIを融合した自動車用タイヤ開発プロセス「T―MODE(Tモード)」を活用し、リアルタイムシミュレーション技術とスノー予測技術を新たに確立した。

同社では、2000年にタイヤ設計基盤技術「T―mode」を確立し、それを進化させた自動車用タイヤ開発プロセスT―MODEを体系化。従来の開発プロセスでは、設計仕様をインプットしてシミュレーションを実行し、算出された性能値が目標性能に到達するまで、設計仕様を修正して再度シミュレーションを繰り返してきた。この頻度が多くなることで全体のプロセスタームは長期化することから、T―MODEでは、各種データを一元管理して標準化されたプロセスを共有できる基盤システム「SPDM(シミュレーション・プロセス・アンド・データ・マネージメント)」を活用、これまでのシミュレーションで蓄積していたさまざまなデータを集約することに成功した。

これらのデータを活用し、設計仕様をインプットすることで、AI技術を介してタイヤ性能の予測値を瞬時に導き出すことが可能になるという、画期的なリアルタイムシミュレーション技術を確立した。同社ではこの技術を確立するにあたって、大阪大学と共同研究を実施し、設計工学の考え方に基づいてタイヤの設計仕様とタイヤ性能を横断する階層図を作成。その下でデータサイエンスの手法を活用することにより、タイヤ設計仕様とタイヤ性能の関係の可視化に成功した。この関係に基づき、シミュレーションデータを題材として機械学習を実施したところ、短時間の計算で精度の良い予測が可能になった。

スノー予測技術に関しては、同社は従来から特定の雪質(新雪・シャーベット)におけるスノートラクション性能の予測手法を確立。T―MODEの新たに進化したシミュレーション基盤技術を活用し、実際の使用環境における雪質を考慮した高精度なスノートラクション性能の予測ができるようになった。タイヤを実際に使用する条件での雪からのせん断抵抗力を計測するにあたり、東京海洋大学、長岡技術科学大学、長野工業高等専門学校よりノウハウの提供を受け、共同で計測手法の開発および計測を行った。せん断抵抗力とは、接地部に深い溝で大きなブロックを設けたタイヤにより雪を踏み固め、接地面の方向にせん断する際の雪からの抵抗力で、環状せん断特性摩擦試験機を用いた試験により、駆動、制動時の荷重および車速を踏まえた、タイヤのゴムと自然雪との間のせん断力の計測を可能にした。これにより、さまざまなタイヤの使用環境における駆動、制動時のブロックやサイプの変形の可視化に成功し、使用環境に適したトレッドパターンの検討が実施できるようになった。

同社では、今回確立したスノー予測技術を、新たな商品の開発に活用していく。同社では、これからも、日々変化する市場の動きを細かく読み解き、この進化したT―MODEを駆使しながら、固有のリソースをフルに活用し、差別化された商品を生み出していく