【夏季トップインタビュー】ニッタ
石切山靖順社長 企業としての価値を一段と高める
eコマースの需要ますます拡大
今年で創業135周年を迎え、年輪のごとく成長を続けるニッタ。世界的に新型コロナウイルス感染拡大の脅威にさらされている渦中、腰を据えて次期中長期経営計画の策定作業を進めている。昨年10月の策定当初より国内外のグループ企業が参加し、グループ全体で一体感を持った計画策定に取り組んでいる。市場環境が厳しい中、経営のかじ取りを行っている石切山靖順社長に話を聞いた。
【現時点までの事業を取り巻く状況は】
8月7日に2021年3月期における第1四半期連結決算の内容を開示したが、今期の滑り出しである第1四半期の4—6月までの累計期間では、非常に厳しい事業環境に置かれた。これまでも今年に入ってから、3月までに中国をはじめとするアジア地域で、市況の厳しさが増していたが、4月から6月に入ってからは欧米市場も勢いを失い始めてきた。その結果、今第1四半期の売上高は前年同期を9・6%下回る189億6200万円と伸び悩んだ。特に北米市場は当社にとって主力市場の一つであり、新型コロナウイルスによる世界的な感染拡大の状況下で、その勢いにも陰りが見えてきたものの、まだまだ踏ん張ってくれるものと期待している。このほか中国市場が盛り返してきており、今後もこの流れが持続するよう望んでいる。中国政府の支援策が打ち出されている背景があり、多くの産業がその恩恵に預かることで、短期間で盛り返しを果たすものと期待している。恐らく第2四半期において業績に反映されてくるだろう。分野別に見ると、半導体分野は好調に推移しているが、生産台数が大きく落ち込んだ自動車、建設機械や工作機械の復調はまだ厳しい状況だ。
【新型コロナウイルスによる影響は】
第1四半期において、新型コロナウイルスの感染拡大による政府の緊急事態宣言の発令もあって〝巣ごもり消費〟が伸びるにつれて、eコマースの需要がますます拡大してきた。当社としても、ベルトの需要が活発化しており、ダンボールの製函工程でも当社の専用ベルトが貢献している。公共事業向け、電子部品製造向けも堅調に推移している。時事的な展開としては、当社が新たに開発した抗菌フィルターがウイルスにも有効であることが判明し、この製品も社会貢献にリンクした形態で何らかの手ごたえが得られるだろう。
【グループ企業の状況は】
TOYO TIREグループより、トラック・バス用空気バネ事業の移管を受けた。当社グループは既に鉄道車両用空気バネ事業の譲渡を受けているが、トラック・バス用の分野において、カーメーカーとの緊密な協力体制を構築していく。
医療用機器・部材を手掛けている浪華ゴム工業については、売上高も前年並みを確保しており、順調に事業を進めている。ニッタグループのブランドバリューが加わり、今後の成長に期待している。ニッタ・ハースから社名が変わったニッタ・デュポンについても、主力顧客分野である半導体業界の浮沈に大きな影響を受ける背景はあるものの、下期においても好調維持を期待している。
【今後の課題と展望について】
まずは直面している課題に一つ一つ対応する。
今回のコロナ禍では、グループ各企業のレビューを行い、既存の事業を成長させながら第4、第5の柱を打ち立てていく重要性を再認識した。事業部門間にまたがる新しい事業分野が生み出されるようにも努力する。生産体制についてもAIを活用した検査機器、ITやリモートを使った現場の生産管理体制を模索し、企業としての価値を今後も一段と高めていく。