2020年8月25日

住友理工
新たなマイクロ流路装置を開発

ライラックファーマと
精密ゴム成型技術生かし

住友理工(清水和志社長)と、医薬品、化粧品などの研究開発および調査・コンサルティングなどを展開する北海道大学発のベンチャー、ライラックファーマ(本社・札幌市北区、須佐太樹代表取締役)は共同で、新しい「マイクロ流路装置(脂質ナノ粒子製造ツール)」を開発した。同製品は脂質ナノ粒子を形成するマイクロ流路チップ(写真①)と、マイクロ流路チップに原料液を供給する送液装置(同②)がセット。流路チップは、粒径がそろった高品質の粒子を再現性高く製造できるライラックファーマ独自のマイクロ流路「iLiNP(アイリンプ)」と同形状の流路が採用されている。アイリンプは北海道大学大学院工学研究院の渡慶次学教授、真栄城正寿助教らが開発し、ライラックファーマが技術導入した独自の流路形状を持つマイクロ流路。

脂質を主成分とした膜を持つ球形の小胞の脂質ナノ粒子は10〜200ナノ㍍の極めて小さな球体の内部にさまざまな薬剤を封入することが可能。カプセル化により体内の分解酵素などから薬剤を守ることで、人体の隅々に確実に薬剤を届けることができるため、患部への集積、薬剤効果の持続や副作用の低減などの効果が認められている。また、従来にない新しく画期的な希少疾患治療薬やワクチン開発などでも使われ始めているほか、医薬以外の分野でも、薬剤の物性改善や性能付与を目的として、高品質の脂質ナノ粒子を簡便に再現性高く製造する技術のニーズが高まっている。

住友理工は1970年代から、自動車内部のワイヤーハーネスの先端に装着し、防水の役割を担うシール材として、シリコーンゴムを原料とするコネクタシールなどの開発・販売を行ってきた。この精密ゴム成型技術を生かしてマイクロ流路チップの製造・販売を開始し、昨年からライラックファーマとの共同開発をスタートさせた。

今回のマイクロ流路チップは、住友理工の高分子材料技術(材料配合・微細加工)を生かし、高透明シリコーンによる製品化を実現。従来のガラス製や樹脂製のチップと比較すると、依頼に応じた形状の製品を、コストを抑えてスピーディーに供給することが可能となった。新たに開発したマイクロ流路チップを多くの研究者に簡便に使用してもらうよう、本マイクロ流路チップに合わせて送液装置を開発。ポート一体型のカートリッジにしたチップを装置にセットするだけで簡単に人為的なミスを防ぎ、さまざまな配合の脂質ナノ粒子を短時間で試作できるようになる。同製品は今冬から予約販売を開始する予定で、装置価格は未定。

住友理工は長年にわたって培ってきた技術を生かし、バイオ・メディカル領域に向けた事業展開を加速させていく予定。今後も幅広くライフサイエンス研究機関との連携を深め、マイクロ流路チップをはじめとした製品開発の支援を行っていく。

なお、同製品は高品質の脂質ナノ粒子を簡単に試作できる研究用機器として、8月28、29日に開催される「第36回日本DDS学会学術集会」で出展を行う(企業展示はオンライン)。