日本ゼオン
導電性シリコンゴム
性能向上で医療機器に応用発
日本ゼオン(田中公章社長)は、単層カーボンナノチューブを用いてシリコンゴムの導電性を大幅に向上させるマスターバッチを開発した。このマスターバッチを用いたコンパウンドは、パーキンソン病や手や頭などが不随意に震える症状で、原因は不明とされているが、一般的には精神的な緊張やストレス、疲れなどにより悪化すると言われている本態性振戦の症状を軽減する医療機器への応用を目指しており、米国で液体シリコンゴム(LSR)および高濃度ゴム(HCR)用の高品質の分散液、添加剤、改質剤および着色剤を専門とする素材メーカーのノベーションソリューションズ(本社・オハイオ州バーバートン、以下、ノベーションSi社)と共同で研究を進めている。
今回日本ゼオンが開発したシリコンマスターバッチは、人体に神経調節療法を実行する医療機器の部材として使用される。シリコンゴムに、日本ゼオンの単層カーボンナノチューブ「ZEONANO SG101」を練り込むことで導電性が付与されるが、シリコン分散液メーカーであるノベーションSi社はさらにこのマスターバッチを用い、「PURmix高濃度ゴム(HCR)ヘルスケアコンパウンド」を開発した。単層カーボンナノチューブをコンパウンドに効果的に分散させることによって、硬化物の導電特性が大幅に向上することが確認されている。
パーキンソン病、本態性振戦はいずれも身体の震えを症状とする疾患で、悪化すると生活にも支障が出るケースがある。特に本態性振戦は症例が多く、40歳以上の4%が発症すると言われている。当疾患の抑制において、このシリコンゴムは米国FDAの認可を既に取得、臨床試験では多くの患者が震えの軽減を示したことが判明した。
なお、開発されたマスターバッチは日本ゼオンのグループ会社であるゼオンナノテクノロジーが販売を行うが、ZEONANO SG101を用いたHCRヘルスケアコンパウンドはノベーションSi社が、「PURmix」ブランドで米国限定で販売する予定で、この革新的技術が、神経疾患に苦しむ人々のQOL向上に寄与することが期待される。