アシックス
新中計2023策定
デジタル軸にした経営へ転換
アシックス(廣田康人社長)は2月12日、新しい中期経営計画「中期経営計画2023」を策定した。VISION2030では、アシックスが将来ありたい姿を長期的な視点で表した、2030年までの10年間にわたる長期ビジョンを策定。VISION2030の実現に向けて、持続的成長のための安定した財務基盤を目指すための体制づくりの第一歩。21年1月1日~23年12月31日を実行期間とし、将来の持続的核成長のための安定した財務基盤を確立する。財務指標として営業利益250億円、営業利益率6・0%以上、ROA4・0%を設定。戦略目標としてデジタルを軸にした経営への転換、事業活動を通じたサステナブルな社会の実現を目指す。
収益性高めることに注力
同社では、前中期経営計画「アシックス・グロース・プラン2020」の振り返りにおいて、残された課題として長期投資が足かせとなり、収益性の改善分野において抜本的な改革が未達で、デジタルをと中心としたオムニチャネルにおけるリテールビジネスの再編への取り組みを指摘。新中計では、そうした経験を踏まえて収益事業の拡大、収益事業への変革、経営基盤の強化を重点戦略として掲げた。収益事業への拡大については将来の収益の柱を見据え、インド、インドネシア、中東地域への投資により、一層の成長加速を実現する。サービス事業を次の収益の柱に育てる目的から既存サービス事業である低酸素環境下トレーニング施設の活用、機能訓練特化型デイサービス、健康経営サポート、施設管理事業を拡大、女性やキッズを対象とした事業開発にも力を注ぐ。収益事業への変革については、スポーツカテゴリーごとの戦略・収益性に基づき、注力に値するカテゴリーに集中する。中でもテニスへのフォーカス、グローバルでのインドアスポーツの成長、リージョン特性に応じたビジネス展開、スポーツカテゴリーごとの収益管理と規模の適正化を推進。直営店ビジネスについては「コロナ禍によって見直しが迫られており、サービスや喜びを提供していく形態への一層の変革が必要」(廣田社長)としている。
経営基盤の強化に対しては、次世代技術によるイノベーションの創造、サプライチェーン、生産改革、人財強化と活性化、ダイバーシティ&インクルージョン、カテゴリー経営2・0、財務戦略、バランスシートマネジメント、ガバナンス体制の充実などといった項目を、重点実施政策として固めた。
デジタルを軸にした経営への転換も重点項目として掲げており、デジタルを活用したタッチポイント拡大によるECビジネスの成長加速に着手。自社ECサイトでのパーソナライズ・価値向上、自社ECを中心としたオムニチャネル推進、oneASICS(ワンアシックス)によるロイヤリティ向上、データドリブンによるマーケテイングの強化などを推進し、23年度にはECコマースの売り上げを19年度比で3倍以上にまで引き上げる。
最近のデジタル活動に向けたトピックスとしては、コロナ禍によって、多くのマラソン大会が中止される状況にあって、ゴールドコースト・バーチャル・マラソンなどといった約1190大会のバーチャルマラソン大会において「ASICS Run Keeper(アシックスランキーパー)」が活躍。バーチャル駅伝レース「アシックスワールドエキデン2020」を開催した結果、5万6000人が参加、世界最大規模のバーチャルレースとして記録されている。これは、オンライン上で結成されたチームで「デジタルたすき」をつなぐ新しい形のランニングイベントで、全世界の人々とともにランニングを楽しむことができる機会として好評を得た。市場戦略としては、独自のセンシング機能により〝走り方〟をデータ化し、ランナーをサポートする先進的なスマートシューズ「EVORIDE ORPHE(エボライドオルフェ)」を販売。内蔵されたセンサーによってランニング時の動きを分析、その評価に基づくことで走りの質を上げるなど、トレーニングメニューの提案まで行う等、商品と環境の両面においてスポーツにおけるデジタル化を進めている。
新中計の行きつく先にあるVISION2030は、今後の10年とその先に向けて、「プロダクト」「ファシリティとコミュニティ」「アナリシスとダイアグノシス(分析と診断)」の3つの事業ドメインを成長、それぞれのドメインが交わり相乗効果を生み出すことで価値の最大化を図る。あらゆる角度から消費者一人ひとりに最適な価値を提供することで、健康的で豊かなライフスタイルの実現に貢献する企業体を目指している。