2021年8月25日

【夏季トップインタビュー】広島化成
宮地幹治社長

需要に的確に追随
筋肉質な体質への転換を目指す

今年の4月1日に広島化成のトップに就任し、コロナ禍に見舞われている厳しい事業環境にあって、持ち前の気骨で企業としての成長への道筋を常に探求し続けている宮地幹治社長。企業の伸び代を生かす原動力として、従業員の重要性を強く認識しており、そのポテンシャルを引き出すことができる職場環境、企業の体制づくりに各段の熱意を注いでいる。トップ就任からわずか数カ月で経営者としての資質を発揮し、強気ながら慎重な姿勢で同社の経営のかじ取りを行う宮地社長に今後の展望など話を聞いた。

【今年4月の社長就任後の状況について】
全国的に新型コロナウイルスの収束がまだ見えない中で、広島県においては5月、6月に発令された緊急事態宣言は解除されたものの、外出の自粛を求める要請は継続しており、対外的な事業活動が行いにくい状況は続いている。ただ、緊急事態宣言そのものは解除されているので、担当者がお客様の元を訪れる必要がある場合には出張も実施しており、顧客との打ち合わせや現地での業務も徐々にこなせるようになってきた。

今期(2021年12月期)上期の業況としては、全体の売上高については前年同期の実績を上回っている。昨年は特にシューズ製品が(コロナ禍による需要低迷で)4月、5月で過去に経験したことのない急激な需要減に見舞われたが、その後は回復基調に乗っており、工業用品の自動車部材も顧客自動車メーカーの生産回復に伴って少しずつ回復が進んでいる。ただ、いずれの分野も(19年度の)コロナ禍以前の水準にはまだ戻っていないことと、原材料、添加剤、副資材などさまざまなものの価格が高騰していることから依然として厳しい事業環境が続いていることは事実だ。

今後に向けては、社長就任時からの思いとして「いかなる環境下であっても明るさを失わず、伸び伸びと全力で仕事にチャレンジし、日々を通して成長していこう」と社員にメッセージを送っている。下期以降も予断を許さない状況が続くかもしれないが、この局面を全社で力を合わせて乗り越えながら、来るべき攻勢に転じるための準備を着々と進めていきたい。

【シューズ事業における取り組みについて】
従来の展示会も感染予防対策に十分な対策を講じた上で開催していく方針だが、新たな取引先への提案スタイルとして、オンラインで新商品など主要なアイテムを訴求する専用サイトを当社ホームページ内に立ち上げた。また、大手EC事業者を通じたネット販売にもこれまで以上に力を入れており、近年では主力のDUNLOPモータースポーツの売れ筋商品だけではなく「ゲイナー」や「ニッティー」といった自社ブランドの販売数も年々伸びている。今後もウェブによる販売比率を一層高めていくことを目指しており、小売業への販売もこれまで以上に大切にしながら、シューズ部門全体の売り上げ拡大につなげていきたい。そのほか、新たな試みとしては新商品のクラウドファンディングへの掲出にも乗り出しており、ネットの拡散によるPR効果で若い世代の共感や支持を獲得することを主眼に置いている。

【全社的な取り組みについて】
基幹システムの更新に一昨年から取り組んできた。グループ全社の会計機能などの管理系を手始めに、シューズ事業本部の販売管理システムの構築は既に完了している。今後は工業用品事業本部および化成品事業本部の生産管理システムの導入を視野に入れており、現在は要件定義を詰めている段階で来春の稼働を予定している。入社以来、製造サイドや営業系よりも間接部門を中心に歩んできたため、業務効率の向上や働く環境の整備による生産性向上は常に念頭に置いていた。これらのシステム刷新によってグループ経営の強化が大きく図れると期待を掛けており、効率化をさらに推し進め、たとえ売り上げが減少しても利益を確保できる、筋肉質な体質への転換を目指したい。

【化成品事業本部の取り組みでは】
昨年夏ごろはコロナの感染対策用途で間仕切りシートやビニールシートの需要が非常に大きな高まりを見せた。一方、災害復興需要でも防水シートの特需が沸き起こったが、こういった需要への対応は社会貢献の側面から重要な取り組みであるととらえている。環境商品など、機能に特長を持たせたシート製品で引き続き社会のお役に立っていきたい。使用される店舗や企業によっては衛生面・安全面で頻繁にシートを交換するケースも見受けられ、そのほか学校や市町村など公的施設からの問い合わせも多い。

【広島化成の強みとは】
これは創業時から受け継がれてきた当社のDNAだと感じているが、コツコツと地道な努力を積み重ねて成果に結び付けていく真面目な社員が多く、そういう〝人財〟を企業として大きな財産だととらえている。また、長らく培われてきた風土として経営サイドと社員との距離が近く、目標に向かって一丸となれる意思の疎通とコミュニケーションが図りやすい。
 一方、市場の変化や従業員の働き方など、世の中の移り変わりに呼応して改革していくべき点もまだまだ残されていると考えており、一例を挙げれば成果主義による人事評価の導入など、〝やりがいと働きがい〟をサポートできる、長く働きたいと思ってもらえる魅力ある企業を目指す。

【今後の見通しと意気込みを】
当社は今年で創業74年を迎えるが、この先の80、90、100周年に向けて、長期的な視野で永続的な発展を遂げていくことを目標としたい。当社が手掛ける自動車のドア周りのシーリング材などは、次世代自動車への変遷が進んでも需要が減少することはないと見通しており、むしろ自動車メーカーの高い要求性能を満たすことができる特長ある製品でその需要に的確に追随していきたいと考えている。