建築ガスケット工業会
「令和3年度臨時セミナー」開く
ゴム・樹脂原材料動向テーマに
建築ガスケット工業会(堀田秀敏会長)は10月21日、オンラインにおいて臨時講演会「令和3年度臨時セミナー」を開催した。テーマは「ゴム・樹脂原材料動向について」で、化学品、ゴム原材料、ゴム製品の販売やコンサルタント業務を手掛けている加藤事務所の加藤進一社長に講師を依頼。取り扱っている製品のあらゆる原材料が高騰している事情や価格上昇が止まらないメカニズムのほか、今後の見通しなどについて解説した。
今回のセミナーは、ホッティーポリマーの堀田社長の尽力によって実現。冒頭、あいさつに立った堀田会長は「新型コロナウイルス感染症への対応として、今回もリモートで開催する。原材料価格の高騰が続いており、供給不足もあってメーカーとしては非常に厳しい局面に立たされている。今日のセミナーの内容によって、少しでも皆さんの経営に役立てられたらと思う」と開催の目的について述べた。
セミナーが開始され、加藤氏が「本日はガスケットの原料である合成ゴムについて、価格高騰や供給不足に陥ったマーケット事情について述べていきたい」とテーマの主題について前置きした。原材料の価格高騰は、原油高と材料不足が原因となっており、円安の局面もあってこれからも価格は15%程度上昇すると予測。材料不足はメーカーの工場の稼働率によるものだけではなく、世界規模での需要回復という状況が背景にある理由を補足した。需要増加に対して増産対応に歯止めが掛かっている事情として、合成ゴム事業が既に曲がり角に差し掛かっている時代背景を指摘。合成ゴムメーカーとしては増産に対して二の足を踏んでいるのが実情であり、加えて上場企業では脱炭素やカーボンニュートラルへの取り組みを強めている現状もあって、加硫やスチーム、ゴム練りによって大量の(火力発電による)電気を消費する合成ゴムの増産とはパラドックスが生じている状況も付け加えた。
合成ゴムの供給不足については、自動車生産の回復も大きな要因。自動車業界が合成ゴム全体の約8割の需要を占めており、急速な生産回復によって一気に合成ゴム不足が顕著化した。半導体不足などサプライチェーンの問題で、一時的に自動車生産の動きが鈍った状況にあってもタイヤによる需要によって合成ゴム不足の問題は継続。自動車生産の鈍化によって新車用タイヤの量は減ったものの、リプレイスタイヤ(市販用タイヤ)は好調を維持しており、それによって合成ゴムの需要が衰えることはなかった。自動車の生産規模も通常レベルに戻りつつあり、この状態が続けば「ナフサとブタジエン価格から推定した国内の合成ゴムの価格予想は、四半期ごとに上昇し、来年の春にかけて㌔当たり最低15円、円安などが重なれば20円は上昇する」(加藤氏)と指摘。最近では製造業全般において、脱炭素やカーボンニュートラルへの姿勢を強化する取り組みとして、直接消費するエネルギーを天然ガスに置き換える動きが強まっており、天然ガスの需要も急増。それに伴って天然ガスの価格も2倍以上に跳ね上がっており、欧州ではそのコストアップ分を調整金として合成ゴム価格に上乗せしている。米国においても日本よりさらに大きな値上げ幅で高騰が進んでおり、世界的に合成ゴムの価格高騰に歯止めの掛からない状況に陥っている。
現段階に至っては、合成ゴムの大幅な増産が行われなければ、顧客が値上げ要求を受け入れたとしても、安定供給への保障でさえ困難な状況。その回避に向けては、合成ゴムメーカーの経営判断が大きな比重を占めるが、加藤氏によると「今は合成ゴムメーカーにとっても受難の時代を迎えている。もとより合成ゴムの収益力は低く、設備が老朽化しても、更新するためのコストを割り当てにくくなっているのが実情。将来的には、自動車のEV化によって、エンジン回りの部品に使用される合成ゴムの量が減少することから、世界の大手化学業界としては合成ゴム事業との距離を置きたいという本音がある」(加藤氏)。こうした流れから、合成ゴムは今年11月と来年2月にも再び値上がりすると加藤氏は見ている。