旭化成
世界初のサステナブルS―SBR生産へ
シェル社と売買契約を締結
旭化成(小堀秀毅社長)は先月23日、シンガポールのShell Eastern Petroleum(以下、シェル社)と、廃プラスチックおよびバイオマス由来のブタジエン(以下、サステナブルブタジエン)の購入に関する売買契約を締結した。契約調印式は、同日シンガポール・ブコム島において〝ジャーニー・フロム・ビジョン・トゥ・リアリティ〟と題し、開催されたサーキュラーエコノミーに関するイベント「クリエーティング・ザ・プラスチックサーキュラー・エコノミー・イン・シンガポール」で執り行われた。
旭化成は、来年3月末までにシンガポールに所在する同社の合成ゴムプラントにサステナブルブタジエンを投入すると同時に、これらを原材料としたサステナブルS―SBR(溶液重合法スチレンブタジエンゴム)の生産およびマーケティングを開始する予定。
S―SBRは、主に省燃費型高性能タイヤ(以下、エコタイヤ)に用いられる合成ゴム。近年、環境規制の強化や環境意識の高まりを背景に、世界的にエコタイヤの需要が拡大しており、S―SBRは、タイヤの安全性能を確保しながら省燃費性能を同時に向上させるエコタイヤに最適な材料として認知されている。
また昨今、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、自動車業界ではEV(電気自動車)化、タイヤ業界ではタイヤのさらなる省燃費・耐摩耗性能向上などといった脱炭素社会を目指す取り組みが加速。そのため、エコタイヤの材料であるS―SBRに対しても、よりサステナブル対応のニーズが高まっている。
旭化成はこのような状況下、自動車の航続距離増加やEV化による車両重量増への対応といったニーズにこたえ、特に省燃費性能や耐摩耗性能の向上を重視したさらなる高性能品の開発を進めている。製品性能の向上にとどまらず、サプライチェーン全体でのCO2削減を目指し、サステナブルな原材料への転換の検討も行っている。
一方のシェル社は、50年までにネットゼロのエネルギー事業体を目指し、化学品生産時のCO2排出量削減とサーキュラーエコノミーの実現に取り組んでいる。今回、シェル社はマスバランス(化学品の生産過程でサステナブル原材料と石油由来原材料が混ざった場合に、サステナブル原材料の割合を国際的に適用されている手法で、任意の特定製品に割り当てる考え方)管理されたサステナブルブタジエンを2つの製法で生産を行う。一つは廃プラスチックを熱分解油に変換し、同社のナフサクラッカーにフィードする製法、もう一つはバイオ原材料を同ナフサクラッカーにフィードする製法。
廃プラスチック由来のブタジエンを使用するS―SBRの生産は世界初であると同時に、バイオマス由来のブタジエンを使用するS―SBRの生産は日本企業初の試みとなる。
原材料、生産、使用(運転)、廃棄・リサイクルというタイヤのライフサイクルにおいて、各段階のCO2排出割合はガソリン車の場合、燃費にタイヤが大きく影響するため、使用(運転)段階のCO2排出割合が最も大きくなる。一方、今後EV化の進展によって使用時のCO2排出は大幅に低減されていくため、相対的にS―SBRなどタイヤの原材料由来のCO2排出割合が増加していく。このサステナブルS―SBRを用いた場合、タイヤのライフサイクルにおけるCO2排出量は従来のS―SBRを用いたタイヤと比べて大幅に削減されることが期待されるため、CO2排出削減効果の大きいサステナブルブタジエンを用いたS―SBR生産を通じてサプライチェーン全体のCO2削減に貢献していく。
今後、旭化成ではバイオマス由来原材料およびリサイクル原材料に関する国際的な認証の取得を目指し、準備を進めるとともに社会のカーボンニュートラルに向けS―SBRの製品性能向上と、製品ライフサイクル視点からのCO2削減の両面から引き続き貢献を果たし、顧客にとってのグローバルリーディングサステナブルパートナーを目指していく。