日本ゴム工業会
「第25回幹事会」
コロナで書面審議
新ゴム消費予想等を報告
日本ゴム工業会(池田育嗣会長)は1月20日、年明け初となる「第25回幹事会」を書面審議の形式で開催した。当初は、東京都千代田区の経団連会館で21日にリアル開催する予定で準備を進めてきたが、今年に入ってから新型コロナウイルスの感染状況が急速に悪化、まん延防止等重点措置が適用されたことから「参加者の健康・安全などを考慮し、書面審議に変更した」(事務局)。
書面による報告(議案)事項は、2021年の新ゴム消費見込みならびに22年の新ゴム消費予想に関する件、環境自主行動計画(「日本ゴム工業会の地球温暖化対策長期ビジョン(50年カーボンニュートラルへの取り組み)」)に関する件、令和4年度税制改正関係事項、資材関係の動向、労務委員会関係事項、ISO/TC45国内審議委員会関係事項、ゴム製品の生産および輸出入動向。加えて中小企業委員会関係事項(第91回中小企業会員景況調査の結果、DIによる中小企業の景況、信用金庫中小企業景況リポート)の8項目。今年の新ゴム消費予想量については、ゴムの主要製品(業種)別に検討された当年の新ゴム消費予想量をベースに、同会で策定された。
昨年の新ゴム消費見込みについては、国内経済が引き続いて新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたものの、9月の緊急事態宣言解除後は、持ち直しの動きが顕在化。主要経済指標は前年比で回復傾向にあり、前年比で鉱工業生産指数5・7%、実質GDP2・6%、実質民間企業設備投資2・5%増となった。一方、関連業界では、自動車の国内生産台数が半導体不足などによって年間では前年実績を下回ると見込まれている。こうした状況下にあって、主力の自動車タイヤは国内出荷・輸出とも回復傾向で推移。工業用品も前年を上回る月が多かったことから国内ゴム工業における新ゴム消費量は前年比15・3%増の125万2700㌧と算定し、2ケタ増の見込みを立てた。
22年は、オミクロン株の感染急拡大による景気の下振れが懸念されるものの、同7・9%増の135万1700㌧と上向きの予想を立てた。主要製品別の予想値は、タイヤ類が同8・3%増の110万9420㌧で、その内訳は自動車タ・チが同8・2%増の109万6210㌧。新車用は国内自動車生産が新型コロナウイルス感染拡大の影響から回復、半導体不足も解消に向かうと予想され、前年を大きく上回ると見込み、市販用も夏用タイヤ・冬用タイヤともに前年に引き続き増加の見通しと予測した。輸出用については、前年からの回復傾向が続くと見込み、増加と見込んだ。その他のタイヤ類は同14・2%増の1万3210㌧。更生タイヤについては、ワクチンのブースター接種などによりコロナ禍の影響が限定的になることに加え、環境志向の高まりによりリトレッドの普及も進むと思われることから、前年を上回ると予測。その他についても、移動制限の緩和等に伴う国内外の需要回復を見込んだ。
工業用品類の予測値は同6・6%増の22万4960㌧。内訳はゴムベルトが同8・0%増の2万1030㌧で、主力のコンベヤベルトが新型コロナウイルスの影響からの回復に伴い、国内向けでは鉄鋼メーカーなどの主力需要先での大幅な増加を見込んだ。輸出向けも鉱山需要が継続しており、合計で前年を上回ると予測した。伝動ベルトは、内需、輸出ともに自動車産業および工作機械産業の回復により、コロナ禍前の19年度を超えると予測した。
ゴムホースは同3・6%増の3万2900㌧。自動車用ホース(新ゴム消費量ベースでゴムホース全体の約7割を占める)が、新型コロナウイルスの影響から回復し、四輪車生産も下期には半導体不足の解消が見込まれることから、前年比で増加と予測。高圧用ホースも建設機械用や工作機械用などで需要が引き続き高水準で推移すると見込んだものの、その他用も含めゴムホース全体では、コロナ禍前の19年の水準までは戻らないと見通した。その他の工業用品(防振ゴム、各種パッキン、スポンジ製品、ゴム板、ゴムロール、防舷材、ゴムライニング等)が同7・0%増の17万1030㌧で、全体では前年に引き続きコロナ禍からの回復傾向が続くと予測。品目別でみると、防振ゴムは、半導体不足の解消による自動車メーカーの生産回復を期待した。パッキン類は、自動車向けの回復や住設関連向けの需要増加を見込み、スポンジ製品は、主力の自動車向けで顧客の生産回復が大幅に進むと見通した。ゴムロールは全体としては回復が見込まれるものの、製紙用で電子媒体化、製鉄用で客先の統廃合、印刷用で市場の縮小等が進み、需要拡大は見込み難いと予測。ライニングは主力の化学工業用(ソーダ用)、水処理関係などでも伸びる見込みながら下期は不透明感が強く、前年比では若干上回る程度と見通した。防舷材は一部で前年並みの民需が見込まれる一方、公共事業の減少や新型コロナウイルスの影響が続き、ゴム板は引き続き自動車や半導体向けが回復傾向にあるとした。
その他製品類が同2・5%増の1万7320㌧で、このうちゴム履物類(ゴム底布靴、総ゴム靴等)が同2・5%増の1240㌧。新型コロナウイルスの新たな変異株への懸念はあるものの、行動制限が緩和されて需要が回復傾向になりつつあることから、生産増加を見込んだ。その他のゴム製品(運動競技用品、医療衛生用品のほか、ゴム手袋、ゴム引布、家庭用品、事務用品等)が同2・6%増の1万6080㌧。医療衛生用品は、新型コロナウイルスから回復した前年の需要を上回る販売拡大を見込み、運動競技用品は、球技用ボールでは新型コロナウイルスの状況が落ち着き、国内外でスポーツ競技の開催増加が見込まれる上、ゴルフ用ボールでも世界的なラウンド数の回復傾向が継続すると予測した。ゴム手袋は、コロナ特需の反動減の影響を受けた前年水準から回復し、コロナ禍での衛生意識の向上で特に使い捨て手袋で長期的に需要が継続すると見込まれることから、コロナ禍前の水準を上回ると予測した。ゴム引布は、車両向けなど関連業界でコロナ禍からの回復が順調に進むと見込まれるほか、新製品の市場投入も考慮した結果、大きく伸びると推定した。