NEDO
収縮特性に優れる軸方向繊維強化型人工筋肉
最大100倍の長寿命化に成功
新エネルギー・産業技術総合開発機構(石塚博昭理事長、以下、NEDO)では、「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」に取り組んでいるが、このほど中央大学(大村雅彦理事長)の理工学部中村研究室と、軸方向繊維強化型人工筋肉に用いるゴムの伸張結晶化特性を利用し、亀裂の広がりを防ぐことで、人工筋肉の最大100倍の長寿命化に成功した。
現在の高齢化社会では人口に対する労働力不足が問題となっており、現在、業務の自動化、機械化による効率改善が盛んに行われているが、農業、製造業、介護などの分野では、作業効率やスペース不足などの理由から自動化、機械化が困難な作業が存在する。そのため、身体装着型アシスト装置など、作業負担の軽減を目的とした機器の実用化が期待されている。
身体装着型アシスト装置で用いられる駆動装置(アクチュエーター)の一つに、空気圧ゴム人工筋肉の一種である軸方向繊維強化型人工筋肉がある。今回開発された人工筋肉は、ゴムチューブの中に軸方向にそろえた補強繊維を挿入した構造となっている。これに空気圧を加えることにより、半径方向には膨張、軸方向には収縮し、アクチュエーターとして利用することができる。また軽量で、柔軟なことから、低圧駆動で最大38%以上収縮するなど、一般的なマッキベン型人工筋肉(ゴムチューブをスリーブで覆った構造の一般的な空気圧人工筋肉)と比較して優れた収縮特性を備えている。しかしながらゴムが大きく変形するため、ゴムの劣化による亀裂が生じやすく、寿命が短いという欠点があり、実用化に向け課題となっていた。
今回、NEDOと中央大学理工学部中村研究室は、ゴムの伸張結晶化特性を利用することで、伸張により形成された結晶層が亀裂の広がりを防ぎ、ゴム材料の長寿命化を図ることを可能とした。
今後は可変粘弾性下肢アシスト装具「Airsist」シリーズの新型に適用するとともに、NEDOの別プロジェクトである大深度・海底や月面などの極限環境での掘削作業への適用が期待される土砂の搬送用ぜん動ポンプへの応用に向けた検討を行い、また、中央大学発のベンチャー企業であるソラリスを通じて、Airsistの事業化を目指す。