2020年1月10日

ブリヂストン
インタビュー

未来に向けたソリューション推進
共創をキーワードに大きな一歩を

津谷 正明 CEO

【昨年を振り返って】
津谷CEO 昨年4月、デジタルフリートソリューション事業を運営するトムトムテレマティクスをグループ傘下に収め、社名を新たに「ウェブフリート・ソリューションズ」と改名し、次世代のモビリティ社会に貢献する事業の拡大をさらに推し進めている。同社の買収時点においては、トラックを中心にサービスを提供する車両データは約87万台であったが、現在では約100万台にまで拡大している。今年はさらに中身と量を充実させながら、これまで培ってきたタイヤ事業の知見と融合させることで、ソリューションビジネスの展開に一層拍車を掛けたい。

5月に開催されたインディ500では、当社と大変関係が深いマリオ・アンドレッティ氏が優勝してから50年目の記念すべき大会で、佐藤琢磨選手も健闘し、3位に入賞したこともあってとても良いイベントになった。シニアゴルフのメジャー大会「ブリヂストン・シニア・プレイヤーズ選手権」が、オハイオ州アクロンのファイアストンCCで開催されたことも当社が米国で事業を営む上で非常に意義深い取り組みだと考えている。東京2020オリンピック・パラリンピックを1年後に控えたイベントでは、トーマス・バッハIOC会長から「今回の東京五輪ほど準備が整った開催は例を見ない」というコメントを頂いた。当社としても公式パートナーとして、7カ月後の開催に向けてさらに盛り上げを図る。

9月にブリヂストン・アメリカス本社で開かれた「ブリヂストングループ・グローバルTQM大会」においては、各国事業所から多くの改善事例の発表があった。これまで国内からの参加者に対しても英語でのプレゼンテーションを奨励してきたが、下関工場の代表者が日本を代表して素晴らしいプレゼンテーションを行い、同じ日本人として誠に頼もしく誇りに思う。10月に開催された太陽光を動力源にオーストラリア大陸を縦断する「ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ」では、初めて当社の「エコピア・ウィズ・オロジック」を装着したチームが優勝を飾った。表彰の場で、向こう10年間のスポンサー契約延長を約1000人の参加者に伝えた時には大きな歓声が沸き起こり、若きエンジニアたちの熱い思いにとても感激した。

環境問題・サステナビリティについては、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)において、「タイヤ産業プロジェクト」の取り組みに参画、推進してきた。今年はWBCSDが創立25年の節目となり、タイヤ産業プロジェクトも設立15周年を迎えることから、秋に東京で記念イベントの開催が予定されている。当日はこれまでの取り組みのまとめを行うとともに、確認された成果を詳しく外部に向けて発信したいと考えている。

江藤 彰洋 COO

【事業の進化と成長について】
江藤COO 生産拠点の整備については、昨年10月に日本を除いてアジア初となる建設・鉱山車両用タイヤの新工場を開設した。乗用車用およびトラック・バス用タイヤにおいては、欧州はスペイン工場とポーランド工場、北米ではウィルソン工場での生産能力増強を進めており、これらの追加投資は単に数量を追い求めるのではなく、さらに品質を高めてプレミアム性の高い製品の安定供給を主眼としている。一方、技術センターついては国内はもとより米・欧・中国・アジアと各地域に拠点を置いており、日本では小平市の開発・生産拠点を再構築し、新たな価値の創造に向けて「ブリヂストン・イノベーションパーク」を展開していく。

事業の変革に向けては、〝断トツ〟の商品とサービスおよびサービスネットワークをデジタルでつなぎ、「ブリヂストンT&DPaaS」といった未来に向けたソリューションを推進する。製品・技術の一例を挙げると、CO2排出量と省資源化に貢献できるタイヤ軽量化技術「エンライトン」、天然ゴムを上回る強度・耐摩耗性を持ち、従来より少ない量で求められる性能を発揮できる新ポリマー「サシム」、利用者の乗り降りを容易にするバス停バリアレス縁石システムなど、こういった独自技術の展開によって資源の有効活用と環境負荷軽減に努め、社会価値と顧客価値の向上にも努める。

国内事業の体制としては、昨年9月に国内タイヤ事業と化工品ソリューション事業を合わせて”BSJP新組織”を発足させた。当社ではグローバルにSBU制を敷いており、日本でも同様にグローバルとローカルでバランスを取りながら、国内事業をしっかりと統括できる仕組みをつくり上げていきたい。

石橋 秀一 副会長

【ソリューションとイノベーションについて】
石橋副会長 ブリヂストンT&DPaaSはモビリティの進化に伴った事業の変革に向け、当社独自のソリューションプラットホームとなる。タイヤは自動車において唯一路面に接しているパーツであり、〝走る〟〝曲がる〟〝止まる〟機能を支え、命を乗せている。OE、リプレイスで構築されているビジネスであり、さらにメンテナンスも非常に重要になる。当社ではこうした点を踏まえ、従来の車の部品としてのタイヤから、モビリティのシステムを支えるソリューションシステムの構築に取り組んでいく。それによって社会とお客様に貢献していくことが当社のビジネスモデルの軸であり、今後もさらに新たな価値をつくり出して提供していく。ソリューションを支える技術革新においても、〝MaaS〟〝CASE〟に対応する事業展開と同じく、「共創」がキーワードになる。社会・パートナー・お客様が一緒になってイノベーションの創造に取り組んでいきたい。

新たに開設する小平地区のイノベーションパークでは、技術・ビジネスモデル・デザインの進化を加速させる場として、持続的なイノベーションを生み出すことのできる拠点に育て上げていく。今年はグループのデザイン・ブランドを核にした社内外の交流、共創の拠点として、「ブリヂストン・クロスポイント」(ミュージアムタワー京橋)もオープンする。これらの取り組みによって社会・お客様・パートナーとの価値の共創をさらに促進させ、将来に向けての大きな一歩となる年にしていきたい。