住友ゴム工業
「ビューロVE304」発売
最上級の静粛性と快適性を実現
【昨年を振り返って】
2019年度の上期においては、光学樹脂や光学フィルム、電池材料といった高機能材料が好調に推移したものの、主力のエラストマー素材事業が伸び悩んだことで、売上高、営業利益ともに前年同期の実績を下回った。米中貿易摩擦に端を発する世界経済の減速が事業に与えたインパクトは想定以上に大きく、ナフサ、ブタヂエンなど原料の変動に伴って製品価格が低下する中、原料フォーミュラが適用されない海外市場においても市況の低迷から適正価格を維持することが難しくなっており、下期に入ってからも厳しい状況が続いている。為替は円安に動いたことで追い風となっているものの、原料価格は上昇傾向に転じており、地政学的なリスクがもたらす先行きの不透明感は一層強まりを見せている。決して良い状況が続いているわけではないが、当社としては目まぐるしく変化する事業環境に左右されることなく、市場の動向に一層目を凝らしながら、第3四半期以降も着実に収益を確保していくことを目指してまい進する。
【2020年の見通しと取り組みについて】
今期では、現在推進中の中期計画「SZ―20PhaseⅢ」(2017―2020年度)で掲げる売上高5000億円の達成に向け、さまざまな投資に着手してきた。エラストマー素材では、川崎工場の特殊架橋タイプ「ゼットポール」ドライ品の乾燥能力を1・5倍までアップさせ、タイではアジア地域の内燃機関搭載車向けの需要を取り込んでいくため、アクリルゴムの工場を建設している。一方、高機能材料については、高岡工場の原反フィルム生産能力増強と敦賀工場の大型テレビ用光学フィルムのライン増設を進めており、それぞれ今春の稼働開始を予定している。また、COP(シクロオレフィンポリマー)においても水島工場の生産能力増強を決定しており、今年中に着工し、来年7月の完工を目指している。今後も目標数値の達成に向けては新たに投資を進めるべき案件が残されているものの、昨今の建設費用の高騰もあって新規の設備投資は実行しづらい状況になりつつある。しかしながら、拡販に向けては需要増に対応する製造設備が不可欠であり、今年も必要な部分に関しては投資を継続しながら、さらに売り上げの拡大を図っていく。
【成長に向けた企業風土の育成について】
2013年の社長就任以来、これまで風土を変えていこうと懸命に取り組んできたが、一定の成果は認められるものの、目指すレベルにはまだまだ至っていない。ただ、ここに来て具体的に問題となる部分が見えてきたので、課題解決に向けた対策を講じ、ようやく実行に移していく段階に入ってきた。若手・中堅社員においては、自発的に物事に取り組む気運が高まりつつあり、まずは行動を起こし、前向きに仕事を進めていく姿勢が全社的に定着しつつある。本来であれば中計最終年度となる来期を目前に控え、一層の進展を遂げていかなければならないところだが、決してあせることなく、さらなる改善を目指してじっくりと取り組みを継続していきたい。
【シンガポールの子会社の現状について】
一昨年、シンガポールのプラント(ゼオンケミカルシンガポール)では低燃費タイヤ向けS―SBR製造設備の減損処理を行ったが、現在は徳山工場からシンガポール工場への生産品の切り替えが順調に進んでおり、収益面についても立案した目標数値に近づきつつある。今後は、住友化学との合弁会社(ZSエラストマー)で開発を進めている“新ポリマー”の開発・試作をシンガポール工場でも鋭意進め、実用化に向けた動きにさらに拍車を掛ける。
【新ポリマーの概要は】
住友化学と当社のポリマー変成技術および生産技術を融合させ、タイヤの低燃費性能と耐摩耗性能の向上を既存品を大きく上回る水準で実現させていく。耐摩耗性に特化したタイプと低燃費性に優れたタイプの2つの試作品を作成しており、「シナジーポリマー」と呼んでいるこれらの新製品は既存ユーザーで既に評価をして頂いている。来年の販売開始を目指して開発を進めており、従来品をりょうがする低燃費性、耐摩耗性、ウエットグリップ性に加え、さらに第4、第5の性能を打ち出していくことを開発のテーマに掲げて推進している。
【高機能材料事業の新たな展開について】
大型液晶テレビや中・小型モバイル向けの光学フィルムのほかにも、高耐熱COP(T62R)がガラスの代替で車載センシングカメラ用に採用が決まった。中国では防犯カメラ用でも当社のCOPが使われており、使用環境によっては屋内用だけではなく屋外向けのカメラにもT62Rの提案を進めている。ほかにも、COPは低吸湿・低吸着・低不純物で割れることもないので、必然的に医療業界からの需要が強い。昨年はFDA(米国食品医薬品局)の技術セミナーにて、プレフィルドシリンジ用樹脂としてCOPの特長について説明を行った。欧州においても、プレフィルドシリンジ用でガラスからの置き換えが進んでおり、今後の需要増に期待が高まっている。
【今年の抱負を】
今年の干支である庚子(かのえね)は植物が成長して大きく育っていくことと、商売が繁盛して成就していく意味がある。当社としても目指す姿に少しでも近づき、変革を遂げて事業を成長させていく年にしたいと考えている。2020年度は現中計の最終年度であると同時に新たな計画に向けた準備の年でもある。仕事に対する意識と取り組み方を変え、目標に向かって高く羽ばたいていく年にしていきたい。