JSR
2020年3月期決算
ほぼ業績予想並みで着地
ライフサイエンス事業 増収増益達成
JSR(エリック・ジョンソンCEOは)は4月27日、電話会議を通じて「2020年3月期決算説明会」を開催した。決算説明を行ったのは同社の宮崎秀樹取締役常務執行役員で、質疑応答にも応じた。それによると前期の売上収益は前期比4・7%減の4719億6700万円、営業利益は同27・3%減の328億8400万円、当期利益は同27・4%減の226億400万円となった。
ただし、今年3月26日に通期業績予想の修正を行った見通しと照らし合わせると、実績としてはほぼ業績予想並みで着地した。先月1日のJMエナジーの株式譲渡に伴って、リチウムイオンキャパシタ事業を非継続事業として分類したことから、売上収益、営業損益などは継続事業の金額として表示されている。対応する前連結会計年度についても、同様に組み替えて比較分析が行われている。
セグメント別では、エラストマー事業部門の売上収益は同10・9%減の1787億9400万円、営業損益は17億5800万円の損失(前期は74億2100万円の利益)。事業全体の販売数量が伸び悩み、原料市況下落による販売価格の低下の影響から、売上収益は前期を下回った。営業損益については売上収益の減少、売買スプレッドの低下、第4四半期に実施した一部固定資産の減損処理を行ったことなどにより営業赤字となった。主要な需要業界である自動車タイヤの生産は、中国が12月にかけて上半期の低迷から脱しつつあったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響により1月は対前年比で12%減、2月は同80%減と前年を大きく下回った。欧州をはじめとするタイヤメーカーの工場では、新型コロナウイルス感染防止に向けて生産の一時停止や生産縮小を実施したことなどから、グローバルでは年間を通して低調に推移した。エラストマー事業については、同社が戦略製品と位置付ける溶液重合スチレン・ブタジエンゴムの販売数量が世界のタイヤ生産量が対前期減の環境にあって前期の実績を上回った。
合成樹脂事業部門の売上収益は同9・8%減の950億9200万円、営業利益は同32・3%減の62億3700万円。自動車業界が海外を中心に低調に推移した影響に加え、第4四半期には新型コロナウイルスの影響も重なり販売数量が減少、原料市況下落による販売単価の下落などもあり、売上収益が伸び悩んだ。営業利益も売上収益の減少に加え、売買スプレッドの縮小により前期を下回った。
デジタルソリューション事業部門の売上収益は同1・8%増の1448億500万円、営業利益は同5・3%減の309億1700万円。半導体材料事業は、メモリーについては単価下落の影響により前年度後半に引き続き低調に推移したものの、ロジックは上期より回復基調となった。最先端フォトレジストを中心に販売が堅調に推移、EUVレジストや洗浄剤などの新製品の販売拡大、実装材料を中心とした中国市場の成長により売上収益は前期を上回った。半導体材料事業については新型コロナウイルスの影響は受けず、ディスプレイ材料事業は注力している大型TV用液晶パネル向けの配向膜、絶縁膜が中国向けに販売数量が拡大。一方で液晶ディスプレイの生産が韓国・台湾から中国にシフトする市場変化の中で一部顧客での生産撤退を含む、稼働調整の影響を受けた。エッジコンピューティング事業はNIRカットフィルターの販売が拡大。営業利益については、半導体材料事業は洗浄剤の拡販に伴う費用増や廃棄損などの一時費用があったものの増益を確保、堅調に推移した。
ライフサイエンス事業部門の売上収益は同15・1%増の504億9600万円、営業利益は同360・4%増の35億9400万円。グループ会社のKBI、セレクシスが展開するCDMO事業および18年5月に子会社化したクラウン・バイオのCRO事業も好調に推移した。診断薬材料やバイオプロセス材料の売り上げも増加、医学生物学研究所についても診断薬事業が堅調に推移し、全体の売上収益を押し上げた。営業利益は売上収益の拡大に加え、前期に行った事業構造改革の成果が実り、前期を大幅に上回った。
今期の見通しについては売上収益は前期比10・4%減の4230億円、営業利益は同30・1%減の230億円、当期利益は同33・6%減の150億円を見込んでいる。なお、業績見通しは新型コロナウイルス感染拡大の収束時期が見えない中で、足元の需要見通しから各事業の販売減少リスクを織り込んで作成されている。実際の業績などは今後の感染拡大状況、社会状況、経済状況の推移により大きく異なる可能性があり、修正の必要が生じた場合には速やかに開示される。