2020年5月10日

日本ゼオン
「SZ-20PhaseⅢ」の進捗状況

新たな可能性探索
新型コロナの対応も説明

日本ゼオン(田中公章社長)は4月28日、音声ライブ配信により行われた「2020年3月期決算説明会」において、田中社長が「中期経営計画進捗状況(SZ―20PhaseⅢ)」「新型コロナウイルス感染症への対応」のテーマで状況の説明を行った。

SZ―20PhaseⅢにおいては、「化学の力で未来を今日にするZEON~わたしたちゼオンは、一人ひとりの成長を通じて、お客様の夢と快適な社会の実現に貢献し続けます~」を2020年のありたい姿と位置付け、着地年度である20年度に連結売上高5000億円以上を目指している。

セグメント別戦略としてエラストマー素材事業では、成長市場へのグローバルな対応とコスト競争力強化により、強みを発揮できる事業を一段と深化。蓄積してきた市場からの信頼と顧客との関係を生かし、新たな可能性を探索することで成長につなげる。高機能材料事業では重点的なリソース投入と外部との連携強化により、市場成長と技術発展のスピードに対応して事業を拡大する。エラストマー素材投資においては、内燃機関搭載車販売数は今後も一定数を維持、特殊ゴムの安定提供により産業を下支えする。ゼットポールについては、特殊架橋タイプの販売が着実な伸びを見せており、アクリルゴムについても現在日米3拠点で年産1万7000㌧を生産している。今年春にはタイ工場を完成させ、年産5000㌧の能力増強を図る予定。アジア技術サポートセンターとして17年に開設した「アジア・テクニカル・サポート・ラボラトリー(ATSL)」を活用して顧客対応、それに伴う同社ゴムの拡販などに向けた活動を積極的に継続している。

高機能材料事業は同社水島工場において、COPの生産能力増強に取り組んでいる。年産4600㌧規模で、来年7月に完工させる。原反フィルムについても高岡工場で生産能力を強化、今年春に稼働予定。大型TV用光学フィルム新ラインの建設についても同社敦賀工場で進めており、年産5000万平方㍍の規模で20年度第1四半期には稼働させる計画。米国についてはシリコンバレーに17年10月に高機能材料事業の拠点として「ゼオン・スペシャリティ・マテリアルズ社(ZSM)」を開設して進出している。18年1月から営業を開始しており、IT産業の集積地と言われるシリコンバレーへの直接の進出により、市場のニーズに一段と密着した対応力を獲得し、スピーディーさでも効果を上げている。ZSMでは高機能樹脂(シクロオレフィンポリマー)、高機能部材(光学フィルム)、電池材料(リチウムイオン二次電池バインダー)、電子材料(絶縁材料、レジスト、エッチングガス)の事業を手掛けている。

新型コロナウイルス感染症への対応については、企業としての姿勢を明確化した。感染拡大の収束時期が見えず、経済が大きな不確実性に見舞われた環境下にあって、同社では1月以降①従業員やその家族等の健康・安全の確保②安定的な資金繰り③サプライチェーンの維持の3点を中心に迅速・的確に対応策を実施してきた。従業員やその家族等の健康・安全の確保については感染防止として在宅勤務・時差出勤、イベント延期・中止、海外出張禁止、国内出張・移動制限、海外駐在員帰国、本社による海外拠点への支援、休日行動自粛を発令。安定的な資金繰りについては、足元の資金繰りは懸念ない状況にあり、流動性リスク顕在化の可能性に対しても景気悪化が長引く場合の流動性リスクに備え、コミットメントライン(予定額500億円)を設定する計画。今回の危機対応だけでなく、サプライチェーン維持の観点からも有効であると決めた。

サプライチェーンの維持に向けては製造拠点の操業は出社が前提であることから、感染防止策の徹底を必須と認識して対応中。国内外拠点の情報を適時に本社に集約するとともに、拠点間の情報共有を推進している。

今後の対応としては、リスク管理体制の充実に向け、「緊急対策本部」を立ち上げ、事業環境などの情報を集約、急速に悪化する世界経済の下で売上高が激減する等のリスクに備え、在庫削減やコスト削減等の緊急対策を実施中。今回の経験を基にリスク管理体制等の充実に生かす方針。