【夏季トップインタビュー】バンドー化学
吉井満隆社長 将来的な課題にも目を向け事業活動
真に社会に求められる企業として
新型コロナウイルスの感染拡大の渦中において、厳しい事業環境に置かれているバンドー化学。この災禍の中でも、時代の変化を察知し、中長期経営計画で示した成長を見据えた経営の道筋は変えない。その陣頭に立って経営の指揮を執る吉井満隆社長に足元の業況と今後の見通しを聞いた。
【第1四半期の業績結果について】
8月7日付けで、2021年3月期第1四半期決算を公表した。売上収益173億9900万円で前年同期比25・1%減と、売り上げ面での大きな落ち込みに見舞われた。ただし、これは新型コロナウイルスが影響を及ぼした結果だ。
【新型コロナウイルスによる影響は】
地域別でみれば、中国では、2月、3月と落ち込んでからの回復が早かったため、第1四半期ベースでみると前年同期に比べて大きな変化はなかった。一方で、インドやタイなどといったアジア地域でのダメージは大きかった。インドは4月にロックダウンが実施されたことで大きな影響が出た。こうした事態も徐々に解消され、回復傾向になってきている。その他、欧米や日本でも落ち込みを余儀なくされた。
事業別でみれば、自動車部品事業への影響が最も大きく、40%ほどの減収となった。産業資材事業や高機能エラストマー製品事業も10%以上の減収となった。これらの売上収益の減少により、利益も減少した。
【足元の業績を精査すると】
当社においては、売上収益から経費などを差し引いたコア営業利益を精査すると、経費における固定費部分の割合が少し大きいと分析している。これらの固定費は、企業努力によって改善できる余地があると考えており、一般的な経費削減策に加えて、採算性などをみながら事業内容や品目を見直すことで、利益率を高めることができるだろう。
当社では中長期経営計画に沿って経営戦略を進めているが、その内容において新事業の創出、コア事業の拡大、ものづくりの深化と進化、個人と組織の働き方改革という4つの指針を定めている。この指針は周囲の環境に惑わされることなく遂行するもので、当社の成長の原動力として位置付けている。そのため今後も、投資などは指針通りに推し進める方針であり、増産投資についても、必要度に応じてベストなタイミングを見図らって実行していく。
【新たな事業ポートフォリオの構築に向けては】
当社では、今年の4月に「医療機器事業推進部」を設置した。当社グループには医療機器事業を育てるためのリソースがそろってきている。医療機器製品などを手掛けている〝Aimedic MMT社〟はこの戦略の重要な役割を果たす位置付けだ。現在、当社が開発した伸縮性ひずみセンサ〝C—ストレッチ〟を用いた製品開発に取り組んでおり、Aimedic MMTの事業基盤を活用しながら協業を行い、新たな可能性を見いだしていきたいと考えている。
【今後の見通しと展望については】
新型コロナウイルスの影響によって生じた落ち込み分は、第3、第4四半期には前年同期の水準まで段階的に戻ってくるだろうとみている。事業分野によって戻り幅やスピードに違いは出ると思うが、最終的には8割程度にまでは回復していくとみている。この前提の下、通期の業績は売上収益750億円、コア営業利益20億円を予想している。
今般の感染拡大後、「アフターコロナ」ではなく「ウィズコロナ」の時代となると考えている。われわれのお客様対応のやり方も変化を余儀なくされる部分もあるだろう。例えば、バーチャル展示会による当社のモノづくりにおける先進技術の紹介など、ウェブを強化してお客様との接点を持つことなど一部取り組みは始めている。一方で、お客様に寄り添う企業姿勢は変わらないものだと考えている。新しいテクノロジーと培ったノウハウをうまく融合させていきたい。われわれは長年、さまざまな産業分野の発展に貢献してきたが、デジタルトランスフォーメーションが加速することで、社会から求められる役割も変化していくだろう。新しいニーズに対しても、迅速さがより強く求められるようになるのは確実で、われわれとしては喫緊の課題だけでなく、将来的な社会課題にも目を向け、事業活動を行っていく必要があると考えている。これにより、進化を遂げることによって、真に社会に求められる企業として発展させていきたいと考えている。