【ホース・チューブ・継手特集】ユーシー産業
ユーザーの開発依頼
希望に沿える準備は常に
ユーシー産業の前期(2020年12月期)の業績は、1~8月までの売上高は前年同期比3%減で、計画値にも8%程度届かなかった。新型コロナウイルス感染拡大の影響については、4月までは大きな影響を受けることなく、昨年レベルを維持していたものの、5月に入ってからはユーザーの生産調整や一時休業などによる影響を受け、15%程度落ち込んだ。6月は前年並みで持ちこたえたものの、本来であれば空調関連資材の最大需要期である7月において、長雨の影響もあって伸び悩み、懸命にばん回に努めたものの、賄い切れなかった。8月前半は、猛暑の影響もあって好調に推移したが、最終的には前年を少し割り込んだことで、累計では前年同期の実績を上回ることができなかった。
同社の仕事においても、自治体やJVなどといった拡販活動は本来、個別訪問の繰り返しで、アナログな活動が中心であったが、今後はネットやSNSの活用が必須。同社としても今後、SNSによる拡販活動に取り組む準備を進めている。能動的な拡販活動に取り組む一方、同社としては、製品に対する品質と信頼性が強みを発揮。同社の取引先を含めた商域では、同社が得意とする技術や生産方式について、ユーザーだけでなく、販売窓口においても高い理解を有しており、新たな企画が立ち上がったとしても、同社製品が該当する場合、高い確率で同社製品をセレクトする慣例が組み上がっている。こうした流れによって来期にスタートする大口の新規企画が確定、コロナ対応に関連する新規開発案件も複数立ち上がってきている。
空調機器分野の新規製品の立ち上げ状況は、空調機器メーカー向けに今期2品目の新製品が立ち上がったが、その売り上げ増の効果によって他部門の業績の落ち込み分の多くがカバーできた。NDH関連およびEDU(業務用向け市場)については、学校向けの物件がほぼ昨年で完了。ただ各物件ともコロナの影響によって停止していた時期もあったことから期待するような結果は出せなかった。
「エバフリー」シリーズの市場での動きとしては、販路は確実に広がってきているものの、今期予定されていた工事物件の一時的な停止や、遅れの実情があって、現状における販売量としては伸び悩んだ。ただし大口物件のリピートや、新規物件において今までにないエリアでも動きが出てきており、確実に成長を続けている。今後の拡販政策としては、同社の現行商品群において、すべての市場のニーズをカバーすることは不可能であるとしても、カスタマイズの希望を含めた多くのケースで対応が可能。接続する塩ビ管の長さを調整することで条件を満たし、適切なアドバイスにより規格品内において、ほぼ問題なく施工できているという強みがあり、信頼性の下地ともなっている。
同社では、今回の新型コロナ感染防止対策についても、徹底した対応を実施。緊急事態宣言の発令以降は、テレワークと出社組をシフトで振り分け、宣言中は出社人数を3分の1以下にまで抑制し、解除後も3分の1のテレワーク人員を維持している。希望者には時差出勤も容認し、営業車・自転車利用による出勤も許可したことで、公共交通機関の利用機会を削減している。営業スタッフには、ほぼ全業務をリモートで実施できるよう全員にモバイル機器を配布。自宅にネット環境の整っていないスタッフにはWi―Fi環境も整えた。営業活動においても、基本的に最小限の訪問・面会・打ち合わせにとどめるよう推奨している。面会の必要性の高い場合にのみ訪問による営業活動を実施し、出張に関してはより限定。顧客要望のあった場合のみ赴くなど、リスク回避に徹底して力を注いでいるという。そのため現行で大きな問題はなく「本来の活動状況からは大きく異なったものとなってしまっている」(永吉昭二社長)が、必要な営業活動はこなせている。今後は、コロナ禍でなくてもリモートによる各業務がスムーズに実行できるよう、環境整備や業務内容の見直しを進めていく。リモートで仕事を遂行できるような体制を構築することで、業務効率の改革を推進。通勤による労働負荷軽減を図るように柔軟性を持たせる。工場での各定例会議においては、テレビ会議を活用、将来に向けて全面的にリモートによって完結するのではなく、環境が改善されたときには〝フェイス・トゥ・フェイス〟によるコミュニケーションも復活。リモートとの組み合わせによって、それぞれの局面でコミュニケーションをとれるようにしていく。
今後に向けては、現状のほとんどのエアコンに換気機能が付いておらず、そのニーズが高まるとみられる。空調機器による冷房・暖房だけでなく、熱交換機を使った外気を取り入れ、換気とともに空気を循環させるシステムのハウジングメーカーでの採用率が一段と上昇。コロナ収束後も、換気とともに空調関連で新たな要求が市場によってもたらされる可能性は高く、今までにない機能が付加されたダクトやドレンホースなどといった製品の必要度は高まってくる。各ユーザーより開発依頼が高まれば、それにこたえられるよう、希望に沿ったスペックの製品開発を短期で行えるよう絶えず準備を整えている。同社製品の有効性の認知度を高める絶好の機会でもある。
今期の9月以降の動きとして業績回復につながる大きな動きは見えていないものの、10月より特定ユーザーに新規企画が立ち上がっていることで期待は高まる。来期以降としてはこの新規企画による販売量が大幅に拡大すると予測。来期の増加量だけで今期実績の2倍の規模となり、来期におけるユーシー産業の総売り上げを3~4%押し上げてくれる可能性が大きい。業界全体に対する予測は困難ながら、同社としては得意分野の技術を一段と磨き、常に差別化した製品づくりを推進し続けることで、他社の参入が困難な市場を創生し続けるとともに、それを支える技術力向上も果たす。