フォルボ・ジークリング・ジャパン
新春トップインタビュー
本格的な一歩踏み出す
“改革”レベルでアプローチ着手
【昨年を振り返って】
2020年12月期の決算については売上高は前年比9%減となり、利益面においても同2ケタ以上の減少になると見込んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大が業績に与えた影響は甚大で、昨年2月ごろから市場の雲行きが怪しくなり、当社においても、特に4~5月は業務の自粛を余儀なくされた。工場は感染対策に最大限に配慮した上で稼働を継続したが、本社・支店の間接部門ではテレワーク、フレックスタイム、時短勤務などの導入で円滑な業務が遂行できる体制づくりに努めた。その後、緊急事態宣言が解除されたことで6月からようやく通常の業務体制に戻れたものの、引き続き感染リスクを回避するため、在宅勤務が可能な社員に関しては週2日を上限に仕事に取り組んでもらった。夏場は自粛傾向が再び強まってきたので再度テレワーク制を敷いたが、9月の連休明けから原則的に全員出勤に戻し、現在もその体制を継続している。一方、営業面で最も苦慮した点は当社の強みである、対面販売によってお客様の課題解決に貢献する提案営業が十分に実施できなかったことに尽きる。最低限の打ち合わせは電話やメールでも可能だろうが、当社がモットーとする〝顧客の近くで事業を営む〟という姿勢からは程遠く、そういったコロナ禍による障壁も少なからず販売面に影響を及ぼした。ただ、そのような厳しい環境下でも打つべき対策はもっとあったのではないかと反省しており、〝ウィズコロナ〟における事業形態への移行とスピードアップを深く考えさせられた一年であった。現在では社内はもとより、オンラインを活用した顧客対応が既に構築できつつあり、さまざまなデジタルツールを駆使しながら、従来にも増してユーザーとの緊密なコミュニケーションを結ぶことを念頭に拡販活動を推進している。
【需要分野ごとの状況と今期の計画について】
主力を形成する食品関連では、インバウンド需要が激減していることでお土産物やギフト産業向けのベルトの新規販売・交換需要が低迷した。しかしながら、スーパーやコンビニエンスストアなどで販売される加工食品を取り扱うユーザーに向けては(ステイホームを背景に)活況を呈しているので、今後もそういった需要のさらなる拡大に努めていきたい。一方、もう一つの柱である物流関係では、搬送機械メーカーのOEM需要は一服感があるものの、ECマーケットの勢いはなお継続しており、物流施設向けの販売は好調をキープしている。工業用途では、自動車産業に象徴されるように当社のベルトの販売も大きく落ち込んだが、印刷業界や化学業界向けは堅調であった。需要業界をつぶさに見渡すと、いずれの分野もユーザーによって好不調の明暗がはっきり分かれている様子がうかがえる。今後はより成長が見込めるマーケットを見極めながら、その領域の需要の掘り起こしと拡販にさらに力を入れる。これにより、今期の計画で掲げている売上高8%増を達成し、当社本来の実力である2019年実績の水準まで販売量を回復させていきたい。
【現状の課題について】
昨年9月以降は自粛ムードが緩和されたことで街にも活気が戻り、パートナーである代理店とお客様の元を訪れる機会も増え、一時の閉塞的な状況からは脱してきた。今後も現実の活動はもちろん、精神面でもいかに停滞感を打破していくのかをタスク遂行の重要なカギととらえている。昨年末の時点では、またも全国的に感染者数が増大している状況でもあり、ウィズコロナにおけるコミュニケーション活動は、社内外とも状況を注視しながら慎重に対応していく。
【新たな取り組みについて】
昨年から月に一度、社内的なコミュニケーションの一環として、オンラインで社長の〝生の声〟を配信して全社的な意思統一を図っている。内容としては今年の方針をはじめ、月次の業況報告のほか、社内外でのさまざまなトピックスを紹介している。対面による意思疎通ができにくい環境下、この取り組みは継続して定着させていきたい。また対外的な配信も検討しており、お客様のインターネット環境にも留意しながら実現させたいと考えている。ほかにも、ウェビナーによる研修会やセミナーの開催など、今後の情勢に応じた顧客とのコミュニケーションの在り方も充実させる。
【さらなる拡大を目指す注力製品は】
主力の食品分野では、昨年6月からHACCP義務化の法令が施行されたので、2019年からキャンペーンを展開してきた「Prosan(プロサン)」シリーズの需要が少しずつ刈り取れるようになってきた。プロサンは対前年比で23%増と高い伸びを示しているものの、まだまだ期待していたほどには拡大できていないので、ベルト内部への液体の浸透を防ぐオプションの「スマートシール加工」とともに、引き続き販売促進に力を入れる。ほかにも、プラスチックモジュラーベルトの「プロリンク」も洗浄性に優れる構造でかなり伸びており、そのような衛生面に特化した製品でユーザーの〝食の安心・安全〟にさらに貢献していきたい。
【新たに策定したビジョンについて】
当社は、2018年12月に日本法人として設立50周年を迎え、2019年12月に社内・社外それぞれで周年記念行事を執り行った。その場で次の50年に向けた思いと方向性を話したが、その成し遂げていこうとする構想をより具体的な形で表している。新ビジョンでは『最高のムーブメント~躍進し続けるInnovation Company~』と掲げており、その達成のためには「最強の組織を目指す」「最適な製品・ソリューションをお客様に提供する」「最先端を走り続ける成長企業になる」「最良のパートナーとともに成長し続ける」「環境のために最善を尽くす」という5つの行動規範を定めた。当社は外資系なのでもともとトップダウンがベースにあったが、世代間のギャップも考えると、ミドルアップダウン、ボトムアップな手法も日本法人として取り入れていくことが重要である。そういった観点から、今回のビジョン策定にあたっては社員同士が自発的に発案した内容になっており、一人ひとりが持っているべき〝柱〟として、当社が目指す方向性をお客様と社会にコミットするものになっている。
【新年の抱負を】
今般のコロナ禍で当社も大変厳しい状況に直面したが、これまでは良好な市場環境に恵まれていた側面もあり、それを認識できたことについては、次のステップに進むための布石になったと前向きにとらえている。今年は組織の再構築から戦略面まで、改善というよりは〝改革〟レベルでのアプローチに着手しながら、将来を見据えた本格的な一歩を踏み出していく年にしたい。