【ホース・チューブ・継手特集】東拓工業
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目標は新たな市場の開拓
東拓工業が手掛けるホース・パイプ事業を取り巻く需要環境は、2020年度(3月期)は需要分野ごとに浮き沈みがあったものの、全体的には前年度の実績をクリアするものと見ている。利益面についてはコロナ禍による経費の減少などという要因もあり、手放しでは喜べない一面もあるが増収で着地する見通し。今期の事業展開は新型コロナウイルス感染症による感染拡大といったみぞうの状況に振り回されたが、緊急事態宣言の発出に対応し、何よりも従業員の健康と安全に配慮しながら、事業への影響を最小限にとどめるよう可能な限りの手を打った。工場の生産活動以外ではテレワークを積極的に導入し、営業受注業務もテレワークで対応できる体制を整えた。営業面では現場への直行直帰を推奨した後、これらの制度化にも踏み切った。
最初の緊急事態宣言の発出時においては、かつてない経験だけに、業務対応に少し混乱した部分はあったものの、再発出時には支障なく対応。コロナ禍においては、現場や担当者との間でのコミュニケーションにおいて営業活動が制限を受けていることから、インサイドセールス(非対面営業)を積極的に取り入れるようにした。展示会についても、新型コロナウイルス感染症が収束する様子が当面は見通せない状況から、直近は出展を見送るなどの選択を採ったため、今後については状況に応じて次善の策を検討する。
事業分野別の動向は、工業用ホースの減収分を土木・電設資材の販売によって巻き返し、特に土木資材によってカバーできた。土木・電設分野の現場、特に公共工事案件においてはコロナ禍の影響が大きく響くことがなかったことから、工事案件が従来通りに進められたことによって賄うことができた。ただし、大都市における代理店への営業訪問数の減少を余儀なくされている現状があり、その対応策が練られている。その一方で、最もコロナ禍の影響を受けた事業の工業分野においては、前年と比べて2ケタ近い減収となる見込み。特殊要因も影響しており、一般国内製造業の新規設備投資が、弱含みで推移した状況も拍車を掛けた。厳しい環境にあって、IT・半導体分野は堅調に推移している。電設資材分野の売り上げは堅調に推移しており、再生エネルギー関連においては従来のメガソーラーに加え、風力発電の引き合いが活況化している。同社が手掛ける角型多条敷設管(角型難燃FEP)「角型TACレックス」は、国交省の無電柱化事業の低コスト手法に注目されている角型FEPのパイオニア的な管材であり、関連機関に対して、同社がさまざまな協力を行ってきた実績が実を結んだ。
昨年度より販売を開始したインフラメンテナンス用の新製品も高い評価を受けており、引き続き期待している。電設資材分野では、関東おやま工場の生産体制が充実してきたことが奏功し、市場への供給能力が向上したことで、サプライチェーンで威力が発揮され、コロナ禍の需要環境における販売機会の損失を緩和した。以前より課題として抱えていた供給体制の全体最適が、実際の成果として力を発揮した。
土木分野では公共工事事業の堅調に加え、特に災害対策事業や民間における太陽光発電関連需要が活発に推移し、前年比2ケタ台の増加を見込んでいる。
今期(2021年3月期)の計画としては、前期の売り上げ面を若干上回る計画を立てている。分野別では、工業分野は前期の落ち込み分を取り戻し、土木・電設分野については、引き続き堅調に推移するものと見込んでいる。工業用ホースでは「TACダクト耐摩耐油」の上市を予定通り行っており、評価も高く期待度も大きい。TACダクト耐摩耐油は耐摩耗性と耐油性といったニーズの高い性能を両立させており、静電気防止効果にも優れたダクトホースとなっている。従来品では対応が難しかった油分を含んだ粉粒体を輸送することが可能。金属加工の廃油・廃材、油を含む産廃、集じん機、ガソリンベーパー回収、穀物・飼料搬送などに適しており、サイズラインアップもφ38、φ50、φ65、φ75、φ100と豊富に取りそろえられている。市場で好評のオリジナル金具「しめTAC」については大口径タイプを開発しており、対応ホースをさらに充実させ、一層の拡充を目指す。現状では非公開ながら、新しい用途に適したホースの開発も進めており、事業における攻めの姿勢は揺るぎない。これまでは顧客や代理店に、これら新製品の認知度を高める場として、商品説明会などを行ってきたが、コロナ禍の影響によって従来路線での製品紹介は難しい状況となっている。その改善策として同社ではホームページにおいて、動画ページを開設した。動画ページでは、新製品であるTACダクト耐摩耐油から掲載を開始。一般的な製品紹介を行う手法ではなく、汎用ホースとの耐摩耗試験比較、静電気防止性能比較、耐油性比較といった特長的な品質を動画化しおり、視聴者がよりリアルに製品への理解が深められるようになっている。年度内に引き続き、オリジナル金具のしめTACや、脱塩ビホース「TACエコSD―AS」などを掲載する予定で、動画がある程度そろった時点で、これらを用いたオンラインによる商品説明会の開催を計画している。
今年は2021年度を初年度とする新しい中期経営計画をスタートさせるが、ここでは前中計でやり残した課題の継続とコアの拡大を実施しながら、今後の経営の最大課題である新規事業の創出についての取り組みを、組織を設けて改めて推進。「コロナ禍、原材料価格の上昇など不安定要素が多い経営環境にあって、一方で、コロナ禍の逆風も追い風に変えた経験を生かし、〝常に変革を起こす〟ことを社員にも組織にも植え付けていきたい」(豊田社長)。新規事業の創出は、既存事業における新製品ではなく、新たな市場の開拓が目標。「自社による開発力、ノウハウだけでなく、サプライチェーン全体におけるマーケティング力によって、新たなニーズを開拓していきたい」(同)。