ランクセス
2021年度の事業活動を説明
安定して事業を維持継続
今後の方向性示す
ランクセス(張谷廷河社長)は4月9日、日本法人オフィスとオンラインを通じて、2020年度の業績および21年度の事業活動状況を解説する「2021年度の活動に関する記者説明会」を開催した。説明会には張谷社長が出席。自らが詳細について語った。日本市場におけるコロナ禍での市場の取り組み、その結果と要因、21年度の成長への布石として実施している現在のプロジェクトや施策などを詳細に説明。持続可能な事業展開を通じて、成長軌道をたどる同社の今後の方向性も示した。
張谷社長は「世界中がコロナ禍によって大きな打撃を受ける社会環境において、グローバルでも日本市場においても当社は非常に堅調な業績を上げることができた。パンデミック下にもかかわらず事業を推進し続けた結果であり、われわれはコロナ危機に打ち勝った」と強調。その上で、今後の取り組みを通じて新たな局面に向けての姿勢を示すことで、成長軌道の次の段階に駆け上がるのろしを上げた。勝利をうたうエビデンスとしては、13年のさまざまな世界的な要因によって引き起こされた経済危機下での業績を引き合いに出して明確化。12年のEBITDAが12億2300万ユーロであったのに対し、経済危機を迎えた13年には前期比40%減の7億3500万ユーロと大幅減、12年のEBITDAマージンも4・5㌽の低下に見舞われた。今回の新型コロナウイルスのパンデミック下での影響は、EBITDAで同15%減の8億6200万ユーロ、EBITDAマージンが0・9㌽減にとどまり、いずれも下落したものの、降下率は大きく改善されている。20年度も製造現場およびオフィスにおける衛生管理の徹底を図った結果、製造プラントはほぼ計画的に稼働、ロジスティクスと原材料供給はおおむね安定して事業を維持継続した。「ポートフォリオの改善財務体制の強化などさまざまな布石を打つこともでき、成長軌道を維持した」と報告。コンシュマープロテクション部門の新設を軸に、水処理事業を再編するなど、次のステップにつなげる体制の土台づくりが計画通りに進んでいることを訴えた。特にコンシュマープロテクション部門については、消毒剤と農薬分野の好調により売上高で同6%増の11億1000万ユーロ、EBITDAで同18%増の2億3300万ユーロとなり、増収増益を達成、事業の強固な柱となっている。
21年度に向けた布石の一つとして、コンシュマープロテクション部門の補強施策としてエメラルド・カラマ・ケミカル社を買収。同部門の防腐剤や香料などといった既存ポートフォリオとの理想的なマッチングを図り、潜在的なポテンシャルにより、相乗効果を引き出す。
同社ではグローバルな成長分野として電気自動車向けバッテリーの存在を重視しており、バッテリー向け化学事業に新たに参入。これまでもバッテリー用の重要な製品である電解質、バッテリー保護向け難燃剤、高性能プラスチック、イオン交換樹脂、バッテリーパックの効率的な液浸冷却に向けた熱伝達流体などを供給してきた背景があり化学品、バッテリーセル、モジュール、バッテリーパックといった各切り口からさまざまな戦略に取り掛かる。
同社は世界の全部門において良好な事業展開を行っており、21年通期のEBITDAの見通しとして9億~10億ユーロ、第1四半期のEBITDA予測値として2億5000万ユーロを見込んでいる。