2021年6月15日

ダイキン工業
戦略経営計画「FUSION25」策定

25年度に売上高3.6兆円目指す

ダイキン工業(十河政則社長兼CEO)は6月7日、同社の5年先の目指す姿、その実現のための重点戦略を定めた戦略経営計画「FUSION25」を策定。大きな構造変化を踏まえ、未来のありたい姿を起点にバックキャスティングで取り組む①カーボンニュートラルへの挑戦②顧客とつながるソリューション事業の推進③空気価値の創造の3つの新たな成長戦略テーマを絡めながら実現することで、2025年の定量目標として売上高3兆6000億円、営業利益率12%レベルの企業規模にまで持っていき、理想を実態へと昇華させる企業経営に取り組む。

同社では環境・社会課題の解決に貢献しながら事業を拡大し、成長・発展し続ける目的に向け、8000億円を超える投資を計画。成長戦略のテーマの下、既存事業強化に向けて「北米空調事業の強化」を設定。最大市場である北米空調事業では、今後の環境規制やエネルギー効率規制など環境政策の強化を予想。市場のインバータ化、ヒートポンプ化、低GWP冷媒化を推進する。住宅用、ライトコマーシャル事業での省エネ機器の拡大、大型空調機(アプライド・ソリューション事業)でソリューションを本格展開し、25年度に北米市場ナンバーワンを目指す。また大きな市場成長が見込まれているインドについては現地生産を強化、事業を拡大し、一大拠点化を目指す。

①については、50年の達成に向けて19年を基準年に設定。未対策のまま事業成長した場合の排出量と比べ(成り行き比)、温室効果ガス実質排出量を25年に30%以上、30年に50%以上の削減を目指す。環境先進技術を確立することでカーボンニュートラルへの道筋をつけ、社会的責任を遂行。ヒートポンプ暖房・給湯機、インバータ化など省エネ機器の普及拡大による消費電力削減への貢献、冷媒の低GWP化や回収・再生のエコサイクル構築などに取り組む。ヒートポンプ暖房・給湯事業は、欧州と北米を最重点地域と位置付け、空調事業で培った技術を生かし、燃焼式暖房・給湯からヒートポンプ式へのシフトを加速させる。市場拡大とCO2削減への貢献が期待できるスマートシティプロジェクトへの参画や創エネなど環境新事業にも挑戦する。

②における空調ソリューションでは、多様な顧客ニーズに対応し、機器だけでなく、コントロール・エンジニアリング・サービスなどを組み合わせた包括的なビジネスモデルに変革する。病院や工場などといった用途・市場別にユーザーと直接つながり、機器運転データの活用、エネルギーマネジメントやIAQ技術を組み合わせることによって、個別最適な空間の提供や快適性・安全性の向上など、新たな価値提供に取り組む。低温ソリューションでは、空調事業で培ってきた省エネ・環境技術を横展開。空調や低温機器、店舗設計やメンテナンスも含めた独自の店舗ソリューション事業の確立や、生産地から消費地までコールドチェーン全体をつなぐ事業に挑戦し、食品ロスの削減や食の安心・安全といった社会課題に貢献する。

③ではコロナ禍での空気・換気の需要の高まりに対応した新商品やサービスを創出することによって、グローバルにおける空気・換気の一大事業化を展開。空調機のデータとバイタルデータを蓄積・分析し健康増進につなげるなど、ヘルスケア領域にも挑戦するほか、暮らしを豊かにする空気・空間の価値創造に取り組む。

これらの成長戦略テーマに加え、経営基盤強化5テーマ「技術開発力の強化」「強靭なサプライチェーンの構築」「変革を支えるデジタル化の推進」「市場価値形成・アドボカシー活動の強化」「ダイバーシティマネジメントの深化による人材力強化」を体制的な取り組みとして実行し、ニューノーマル時代を勝ち抜く。技術開発力の強化においては、外部環境が急速に変化する状況にあって、成長戦略にかかわる技術領域・テーマにリソースを集中。ダイキングループの技術のコントロールタワーであるテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)と、グローバルの研究開発拠点など関連部門との連携、社外との協創も活用し差別化技術・商品を創出する。

強靭なサプライチェーンの構築では、感染症拡大や災害などによるグローバルにおけるサプライチェーンの寸断や世界規模でのデカップリングの進行など、不確実性が急速に高まる状況にあって供給体制の盤石化を推進。地域主体の調達へのシフトによる地産地消の一層の追求、リスクに備えた生産のバックアップ体制、デジタル活用によるサプライチェーン改革を行う。

変革を支えるデジタル化の推進ではデジタル投資を大きく拡大し、多様化する顧客のニーズに適した価値提供を行い、デジタル技術開発のスピードアップ、データプラットフォームの構築、機器のコネクテッド化、ものづくり・SCM改革を推進。社内の人材育成では、新たな商品・サービス・ビジネスモデルの創出につなげる目的から、ダイキン情報技術大学を中心に23年までに1500人のデジタル人材を育成する。

市場価値形成・アドボカシー活動の強化ではカーボンニュートラルの実現や空気質への貢献などについては、社会課題解決につながる同社の技術や商品に対して幅広いステークホルダーの共感を獲得することで、持続的に市場価値を高める。R32やインバータ機の普及率が低い地域における普及拡大の推進や、地球温暖化抑制に向けたヒートポンプ化の加速、冷媒回収・再生の推進などに取り組む。空気の新たな価値創造に向けては大学や研究機関、業界を巻き込み、安心・安全の新たな基準作りを推し進める。

ダイバーシティマネジメントの深化による人材力強化では同社の成長・発展の基盤である“人を基軸に置く経営”をベースとする企業文化、組織のDNAを、時代の変化に合わせてさらに磨き上げ、グループ全体へと徹底・浸透を図る。世界中で活躍するすべての人材が多様な個性、無限の可能性を最大限に発揮、成長できる人事施策を展開。新型コロナの影響で働き方や生活の在り方が変わる中、ニューノーマル時代に合った、生産性を高め新たな価値創造につながる仕組みづくりを実行する。