〈2022年3月期第1四半期決算説明会〉日本ゼオン
四半期ベースで過去最高を更新
全事業部門が増収増益に
日本ゼオン(田中公章社長)は7月30日、オンラインで決算説明会を開催し、同社の松浦一慶取締役執行役員は「今期の第1四半期は、エラストマー素材ならびに高機能素材事業ともに堅調に推移した。新型コロナウイルスによる調達および生産への影響もなかった」と同決算期を取り巻く業況を説明、今期が好調な滑り出しであったことを事前に強調した。
説明によると売上高は前年同期比25・4%増の871億7100万円、営業利益は同221・7%増の138億6500万円、経常利益は同192・6%増の148億3100万円、四半期純利益は同181・1%増の100億5100万円となり、売上高と純利益は四半期ベースで過去最高を更新した。今期の滑り出しの高感触に、松浦取締役は「原料上昇によって製品価格が上昇、在庫面でも価格に反映された」ものと分析している。収益面では為替差益による押し上げも要因として想定している。
セグメント別では、エラストマー素材事業部門の売上高は前年同期比40・4%増の487億1800万円、営業利益は同61億8600万円増加し、60億6900万円(前年同期は1億1700万円の損失)。営業利益面での増益要因は、販売価格改定などで71億円、出荷量増で14億円、為替差益で6億円のプラス要因があり、原価差による15億円、海上運賃上昇など販管費増による14億円を大きく上回った。内訳は合成ゴム関連では、主要市場である自動車産業向けを中心に需要は堅調に推移。国内・輸出・海外子会社ともに販売の好調が続いた結果、売上高、営業利益ともに新型コロナウイルス感染拡大により世界経済が急減速した前年同期の実績を大幅に上回った。合成ラテックス関連では、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした医療・衛生用手袋向けの需要拡大が継続、樹脂改質用途が堅調に推移したことなどにより、売上高、営業利益ともに大きく伸ばした。化成品関連は欧米、アジアとも需要は底堅く推移。水島工場およびタイ子会社の定期検査による出荷調整といった要因による販売減という状況に置かれたものの、売上高、営業利益とも前年同期の水準を上回った。
高機能材料事業部門の売上高は同12・7%増の251億5900万円、営業利益は同61・2%増の77億6100万円。営業利益面での増益要因は、出荷量増加などに伴う数量差で18億円、生産増に伴う製造固定費減や原価低減などにより11億円、為替差益2億円ならびに販管費差による1億円の増益要因があり、価格差による2億円のマイナス要因を打ち消した。内訳としては、高機能樹脂関連では、光学樹脂、光学フィルムともに販売が堅調に推移した結果、高機能樹脂関連全体の売上高、営業利益ともに前年同期の実績を上回った。高機能ケミカル関連ではトナーおよび電池材料は売上高、営業利益ともに前年同期を上回って伸長。化学品および電子材料は、売上高は前年同期を下回ったものの、営業利益は上回り、高機能ケミカル関連全体の売上高、営業利益ともに前年同期を上回る伸びを示した。電池材料の出荷状況については同166%、EV向けが欧米・中国の堅調により同195%、民生用は家電などの好調やモバイル用途向けの復調、産業用途(ESS)も堅調に推移したことから同118%と好調な伸びを見せている。「前年は新型コロナの影響を見据えて電池材料の生産を控えたが、今期は回復してきたことで非常に大きな伸びを見せた。今後もEVは伸びが見込まれており、特に欧州は大市場候補となっており、現地生産の流れを急がせる必要性に迫られている」(同)。
その他の事業部門の売上高は同32・5%増の139億9000万円、営業利益は同161・7%増の5億8100万円。その他の事業においては、子会社の商事部門等の売上高が前年同期の実績を上回った。
今後の業績については、最近の動向を踏まえて予想を修正。通期は売上高3330億円(前回予想3100億円)、営業利益420億円(同330億円)、経常利益445億円(同350億円)、当期純利益315億円(同250億円)に上方修正した。