2021年9月5日

ランクセス
自動運転に有効な熱管理性能

レーダーセンサーコンセプト開発

ランクセス(マティアス・ツァハトCEO)は、自動運転に有効な熱管理性能を備えたレーダーセンサーの新しいコンセプトを開発した。同社は高性能な熱可塑性プラスチックの主要サプライヤーであり、「ニューモビリティ」分野の開発パートナーであると一部で位置付けられている。

運転支援システムは、次世代の自動車における主要機能として、その重要性がますます高まっている。車両周囲360度の監視は、特にレーダー波によって可能となり、レーダーセンサーは距離制御、車線変更監視、衝突回避、死角監視システムなどにおいて、不可欠な要素を構成する。センサーは防じん・防水であることが不可欠であり、完全に密閉されたシステムとして設計される。しかしながら、これは内部からの効果的な放熱を困難にし、その結果、電子機器の性能およびセンサーの耐久性を損なう可能性も顕在化。そこで同社では、金属製の冷却素子と熱伝導性プラスチックを組み合わせて熱を逃がすコンセプトを開発した。個々のセンサー部品の組み立ては、一体化されたスナップフィットとホットリベットを使用して行われる。このプロセスは、従来までのネジを使用する方法と比べ、はるかに安価で時間の短縮にもつながる。

一つのレーダーセンサーにおいて、ランクセスの新しいコンセプトでは、フロントカバー(レドーム)、レーダー吸収体、アンテナなどのポリ塩化ビフェニル(PCB)および一体化された冷却素子を備えたバックカバーなど、個々のコンポーネントで構成。レドームは車両の外方向に向けられ、レーダー波に対して高い透過度を提供するプラスチック製であることが不可欠。ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、低い誘電率(Dk)と損失係数(Df)を備えているため、レドームに最適な材料となっている。

背面カバーは、アセンブリ全体の中で最も複雑な部分で、ポリアミド6と金属冷却素子を用いたプラスチック金属化合物(ハイブリッド)技術で製造される。これにより、エンジニアは射出成形プロセスによって提供される膨大な設計自由度を活用することができ、補強リブや冷却リブ、コネクタ用スロット、ケーブルのひずみのない取り付けなどの機能を統合できる。最も重要なポイントである、金属冷却素子の表面が薄いプラスチック領域で過剰に形成される課題については、PCBの電子部品で発生した熱を、これらのプラスチック領域を通じてアセンブリ全体から効率的に放散されることで解決される。

ハイブリッド設計のもう一つの利点は、金属製の冷却素子が電磁放射に対してレーダーセンサー内の電子機器を遮へいすることであり、その機能が外部放射によって損なわれないことを実証。アセンブリは、2成分射出成形プロセスで形成されたOリングまたはシールリップで構成されている。

プラスチック製のレーダーセンサーのほとんどのコンセプトにおいては、レドームと背面カバーは常に熱可塑性プラスチックで作られており、互いに溶接して完全に密閉されたアセンブリを作ることが可能。一般に、2つの構成要素を接合するために同じプラスチックを使用しなければならないことを意味しているが、ランクセスのアプローチでは、材料の選択に制限が少なく、テーラーメードのコンパウンドの使用を容易にする。

ランクセスは、このアプリケーション分野で大きな成長の可能性を見いだしており、レーダーセンサーのコンセプトのような独自のアイデアで技術革新を進めたいと考えている。