大阪ゴム工業会
「技術講習会」を開催
ニッタの次世代Namdテーマに
大阪ゴム工業会(清水隆史会長)は11月11日、大阪市北区の大阪第一ホテルで11月恒例の「技術講習会」を開催した。今年はニッタの計らいにより、同社テクニカルセンター開発研究グループの小向拓治課長(Namd=エヌアムドプロジェクト・サブリーダー)を講師に迎え、技術情報を習得。小向課長は3年前の技術講習会でもカーボンナノチューブ(CNT)の分散技術と炭素繊維複合化材料について講義。CNTと炭素繊維(CF)を複合化させる同社の独自技術「Namd」の独創的な特長などについて説明した。今回の技術講習会のテーマは「CNT複合化技術〝Namd〟の創出とCFRP業界への進出」で、この3年間における進化の過程を詳細に説明した。
開会に先だって、同工業会の会員会社であるヤマウチの常務取締役を務める山内孝夫氏があいさつに立ち「長期にわたってコロナ禍によって苦しめられてきたが、最近になってようやく街中に活気が戻ってきた。本日、こうした講習会を実際に開催できたことを本当にうれしく思い、講習内容についても楽しみにしている。3年前にも同様のテーマで小向先生を講師にお迎えして開催したが、この3年間で数々の賞を受けられ、技術の内容も一段と進化を遂げている。こういった技術について学ぶ機会は少なく、ニッタさんのご厚意により、実現に至ったことに感謝している」と、述べた。
技術講習会の冒頭、小向課長はニッタが新たに制定した企業理念を紹介し、Namdの開発に至った重要なポイントとして、ニッタの技術開発に対する考え方や体制の在り方の賜物として強調。ナノ分散CNTをCFへ均一複合化する技術においては、CNTは分散性が悪いことからチューブ同士が絡まったままで凝縮し、分散剤が不可欠であった。そのため、分散剤の最適化や表面改質などにおける研究が、世界中で膨大な方法によって行われてきた。実用化に向けて進められた従来の手法は、CNTの本来の特性を利用し、カーボンのCNTネットワークを構築するもので、マルチフィラメント表面のCNT膜の密度や、長尺差の均一性などを思い通りにコントロールできなかったことから実現には至らなかった。
CNT技術は、現時点で最強の硬度を獲得することができ、細くて軽量、熱伝導率も高く、加えて導電性、絶縁性を持たせることが可能(半導体として利用できる)であることから、夢の素材として開発競争は途切れることなくグローバルに激化。ニッタではこうした開発競争の行き詰まり状態に対して、思い切って分散剤を使用せずにナノ分散させる取り組みを試みた。CNTの自己凝集力を応用し、独自複合化技術を駆使することによってCF表面へのCNTネットワーク構造の形成に成功。このNamd技術を応用し、Namd糸とエポキシ樹脂を複合化したCFRP中間材料を開発した。通常のプリプレグと同様の成形方法を利用することが可能であり、新たに開発された第2世代の「2G(第2ジェネレーション)―Namd」は、CFRPを構成しているCF―CF間をCNTによって架橋した構造をとることによって、樹脂由来のひずみ速度依存性を低減し、通常のCFPRの3倍以上の引っ張り強度を引き出した。
第1世代のNamd技術は金属よりも軽量で、弾性率の速度依存性が低いことから主にスポーツ用品において採用が進展。バドミントンラケットやゴルフシャフト、バイクフレームなどに採用されており「一度使うと手放せなくなる手ごたえから、採用品種は拡大の一途にある」(小向氏)。このNamd技術を、産業分野にまで拡大する目的を持って改良が図られた新技術が2G―Namdで、CF表面にCNTを不織布状に膜形成していることから、高い振動減衰性を発揮し、産業分野で求められる〝高速での位置決め性能〟〝作業の高速化〟などといった付加価値向上に貢献するものと期待されている。同社が強味とする需要業界における特有のニーズを独自の性能に織り込む目的から、国際ナノテクノロジー展に出展し、さまざまな業界が求める物性をヒアリング。その結果、工業品の製造工程では、いろいろな成形法を用いて製造することから、それらの要望に対し、あらゆる製品の製法に適用できるように改良に取り組んだ。成形工程において絞って引っ張られる状態では、界面接着強度に由来する課題を克服することで解決。CF原糸に対して2G―Namdの界面接着強度は2倍にまで高められており、引き抜き成形にも対応させたことで、産業界からの信頼度は一気に高まった。
今後の展開について小向氏は「客先に対して2G―Namdのアピールを積極的に行っているが、さまざまな賞を頂いたことによって大きな関心を集めることができ、高い効果が得られた。現在もいろいろな取り組みを行っているが、これまで存在しなかった特質を要求されるケースも多く、それに対してち密に応じていくことで、Namdをさらに進化させていく」と抱負を述べ、技術講習を終了した。