新春トップインタビュー
横浜ゴム
“ヨコハマ夏の陣”
新商品を集中的に市場投入
【昨年を振り返って】
前年度の第1四半期は、日本における降雪もあり新型コロナウイルス感染拡大の中、収益的にはまずまずの結果を得ることができた。しかしながら第2四半期に入ると、後半になってから原材料価格の高騰や世界的なサプライチェーンの混乱によるコンテナ不足の影響を受けて減速した。第3四半期では、半導体や部品不足による自動車メーカーの大幅な減産を受けて、非常に厳しい結果となった。第4四半期も原材料高、コンテナ不足が継続し、中国の電力不足による生産の一部停止といった逆風があったものの、11月中旬からは自動車メーカーの生産が戻ってくるなど、明るい兆しも見られた。こうした経済環境にあって、第3四半期までの当社のタイヤ事業は、経営環境の変化に迅速に対応した結果、売上収益、事業利益とも前年同期を上回ることができた。新車用タイヤについては国内、北米、中国などにおいて自動車メーカーの減産による影響を受けたものの売上収益、事業利益ともに前年同期の実績を上回った。市販用タイヤについても高付加価値品の拡販に努め、北米、欧州などで販売を伸ばした結果、売上収益、事業利益とも前年同期の実績を上回ることができた。MB事業についても売上収益、事業利益とも前年同期の実績を上回っており、ホース配管事業は、市況の回復により建機向け油圧ホースの販売が好調に推移し売上収益、事業利益とも前年同期の実績を上回った。工業資材事業は、コンベヤベルトについては国内販売が好調であったことから増収増益となったが、海洋商品は伸び悩んだ。航空部品事業は、民間航空機向けの需要減退の影響を大きく受けた。ATGについては、原材料や海上運賃の高騰による影響があったものの、農機メーカー向けや市販向けが、おう盛な需要を背景にともに販売が好調に推移した。その結果、売上収益、事業利益とも前年同期の実績を上回り、過去最高を達成した。
【中期経営計画について】
昨年度における中期経営計画「YOKOHAMA Transformation2023(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン=YX2023)」の進ちょく状況については、タイヤ消費財において新車用向けは、プレミアムカーへの「アドバン」「ジオランダー」の新車装着に力を注いだ。市販用向けにおいては、21年を〝ヨコハマ冬の陣〟と位置付け、国内では4年ぶりとなる新商品「アイスガード7」、海外では欧州向けウインタータイヤ「ブルーアースウィンターⅤ906」を発売した。昨年1~11月までのアドバン、ジオランダー、ウインタータイヤの販売本数構成比率は前年の40%に対し、42%まで引き上げることができた。18㌅以上のハイインチタイヤの販売本数構成比率も、前年の18%に対し、20%まで引き上げることができた。タイヤ生産財では〝DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進〟として、タイヤのデジタル化による情報サービスの強化に向けて、先進センサータイヤの開発を進めている。その一環として昨年8月にはオリックス自動車様と、10月にはゼンリン様の協力の下、タイヤ空気圧の遠隔監視システムなどの実証実験を開始した。タイヤ生産財事業の成長ドライバーであるOHT事業については、昨年1月にOHT事業の強化を目的に横浜ゴムのOHT事業、ATG、愛知タイヤ工業の間でグローバルにおける事業統合を行い、「ヨコハマ・オフハイウェイ・タイヤ(YOHT)」と冠した新組織を立ち上げた。売上高目標として1000億円を計画していたが、その計画を前倒しして達成する見込みとなっている。昨年8月にはおう盛な需要への対応として、インドに建設中の新工場の生産能力を当初計画の2・2倍に増強する決定を行った。ホース配管事業においては、中国建機メーカーへのOEM納入や補修市場に対応する目的から、中国工場の生産能力を現在の3倍に増強する計画を決めた。ハマタイト事業については、昨年4月にSika社への事業譲渡を決定し、予定通り11月1日に譲渡を完了した。人事戦略では、生・販・技・物の統合によるスピーディーな意思決定と従業員の働き方改革を目的として、新橋本社と平塚製造所の統合を決め、昨年3月に本社ビルを売却した。平塚製造所への移転は、来年3月末を予定している。ESGでは、カーボンニュートラルの2050年に向けた行程表を策定した。ますます厳しくなる各国政府や、カーメーカーからの環境要求に対応していく方針で、詳細については、本年2月に開催を予定している決算発表時に説明する。
【今後の展望と抱負については】
昨年11月に公表した前期決算の通期修正予想値について、その達成に向けては〝自動車メーカーのばん回生産〟〝物流網の混乱などの環境変化〟に対し、生・販・技・物が一体となり、いかに迅速に対応できるかに掛かっていると考えている。足元では、日本の降雪量が平年並みか多いと見込まれているが、新型コロナウイルス変異株であるオミクロン株の感染拡大が懸念されることから、最後の最後まで気を緩めることなく、公表値達成に向けて全社を挙げてまい進していく。中期経営計画の2年目となる本年は、〝新型コロナウイルス〟〝原材料価格の高騰〟〝自動車生産の動向〟〝物流網の混乱〟などにより、変化の激しい経営環境が続くと想定している。こうした経営環境の変化に対し、少しでも先手を打って、柔軟に対応していく。タイヤ事業においては、高付加価値品のアドバン、ジオランダー、ウインタータイヤの比率をさらに拡大していく。本年はYX2023の〝ヨコハマ夏の陣〟とし、「アドバン・スポーツV107」「アドバン・ネオバAD09」「ブルーアースRV RV03」などの新商品を集中的に市場へ投入し、拡販に取り組む。価格面についても、日本を含む全世界の他社の動向を注視しながら、慎重に値上げの検討を進めていく。MB事業では、ホース配管事業および工業資材事業にリソースを集中することで収益を伴った成長を目指す一方、厳しい事業環境が続く航空部品事業については事業構造の変革を行っていく。ESGにおいては、自社の省エネ改善と再生可能エネルギーへの転換を進め、カーボンニュートラルを推進するとともに、サーキュラーエコノミーの取り組みも着実に推進する。改訂コーポレートガバナンス・コードを受け、ガバナンスの改革も進めていく。