2022年2月5日

日本ゼオン
長寿命な大容量リチウム金属電極実現

SGCNTを用いたシートで

日本ゼオン(田中公章社長)は、産業技術総合研究所(石村和彦理事長)と共同で、スーパーグロース法によって製造される単層カーボンナノチューブ(以下、SGCNT)を用いて作製したシートにより、リチウム金属の充放電時に発生するデンドライト(樹枝状結晶)を抑制する技術を開発した。今回開発された技術によってリチウム金属電極(負極)の大幅な寿命向上を達成し、高エネルギー密度、大容量のリチウム金属電極(同)の実用化加速が期待される。

リチウムイオン二次電池は、IoTや電気自動車などの用途拡大に伴い、さらなる軽量化・大容量化が求められており、新しい電極材料や全固体電池・空気電池・リチウム硫黄電池等のさまざまな形式の蓄電池が開発されている。中でも、リチウム金属は非常に高いエネルギー密度を有しており、二次電池の負極材料として、盛んに研究が行われている。しかしながら、充放電時にリチウムデンドライトが成長することで、その電池の材料構造が変化するため、短時間で電池容量が減少することが課題となっていた。

今回、リチウムとの親和性が高いSGCNTを用いて、高比表面積と高空孔率を有するSGCNTシートを作製し、このSGCNTシートをセパレーターとリチウム金属電極との間に挟むことによって、電流密度10mA/平方㌢㍍、循環容量10mAh/平方㌢㍍、耐久時間1000時間以上を達成し、リチウム金属単体と比べて5倍の電流密度と循環容量、20倍以上の寿命を実現した。同SGCNTシートは量産が可能で、今後高性能なリチウム金属電極の実用化が期待される。

なお、同シートは同社より試料提供が行われる予定。