2022年2月25日

トップインタビュー2022
弘進ゴム

時代の変化に呼応
アジア市場の拡大を目指す

【これまでの業績を振り返って】
前期にあたる2021年5月期の業績については、売上高は前年比3・9%減の118億1100万円となった。部門別の内訳としてはSW(シューズ・ウェア)部門が同3・2%減の69億8200万円、化工品部門は同4・9%減の48億2900万円となった。売上高は職域シューズの主力需要先である飲食業界の低迷などで前年実績を割り込んだが、コロナ禍での出張の見合わせによって旅費交通費が抑制されたほか、シューズ製品の冬もの在庫の減少に伴う保管料の低減や、為替の円高傾向での輸入コスト削減などで減収ながら増益を確保することができた。

今期がスタートしてからの状況としては、上期(2021年6―11月)は前期からの厳しい環境が継続しており、市場環境は想定していたよりも改善が進んでいる兆しはうかがえなかった。中国工場の停電による影響で輸入品の調達が滞り、機会の損失が発生したことに加え、売り上げの多くを占める厨房シューズにおいても需要先業界の苦戦によって販売が鈍化するなど、(コロナ禍以前の水準に)市場が回復するにはまだ相応の時間を要すると見ている。一方、化工品部門の工業用品においては、昨年度は自動車関連および建機・農機向けが顧客メーカーの生産調整で販売が落ち込んだものの、今期上期では堅調さを維持しており前年同期の実績を上回って推移した。ただ、半導体をはじめとする部品不足で自動車メーカーの生産が揺れていることから、顧客の生産動向の影響は少なからず被っており、今後の安定した需要の確保に向けて大きな懸念材料となっている。

【通期の見通しについて】
今期は、売上高は前年比104・7%の123億7100万円の増収計画で推進している。しかしながら、利益面については前年より一層厳しさを増すと見通している。昨年からの原材料価格の高騰が工場の収益向上を阻んでおり、ほかにもコンテナ不足による輸送費の高止まりや、為替が円安に振れる場合の輸入製品のコストアップなどが利益を圧迫する大きな要因となる。社会情勢の安定と外的要因のプラス変化に望みを託しているものの、2022年度の業績については増収減益を見込んでいる。

【今後の課題と対策について】
製品調達面での対応としては昨年、中国工場からの輸入品に支障をきたしたことを背景に、通年もののゴム長靴において国産インジェクションブーツでの代替提案を進めている。厨房用シューズについても、国内での生産・供給を手掛けているメーカーは少なくなっているので、品質と供給面での強みを打ち出しながら改めて拡大に努めていきたい。今期からスタートした3カ年の中期経営計画では「変革への挑戦」というテーマを掲げており、その中の喫緊の課題としては、供給力の向上に重点を置いている。しかしながら、モノ不足に起因する原材料や物流費の高騰は自助努力で吸収できる限界を既に超えており、昨年は品質の維持と安定供給を第一に考えて製品価格の改定に踏み切った。今後も原材料と輸入製品の価格上昇に歯止めがかからなければ製品値上げの検討を余儀なくされる局面が訪れるかもしれないが、まずは外的要因に左右されずに利益を確保できる、筋肉質な収益体質づくりに引き続き取り組んでいく。

【さらなる拡大に向けた販売戦略は】
化工品は、従来までの基本的な業務を進めることに加え、さらにユーザーとの緊密なコミュニケーションを図っていくことを念頭に着実な需要の取り込みを目指す。シューズ製品などの消費財については、流通形態が目まぐるしい変化を遂げており、Eコマースやウェブ販売を最大限に活用しながら、お客様と深くつながっていくことを大切にしたい。一人ひとりのニーズをしっかりとつかみ、それを製品に落とし込むことでユーザーの満足度の向上につなげていく。

【新たな取り組みについて】
これまで取り組んできた〝働き方改革〟の一環として、まずは間接部門の業務の見直しを行っている。単純作業や人がかかわらなくてもできる仕事はさらに自動化を進めていく。コロナ禍におけるテレワークの導入によって置き換えの可能な業務が浮き彫りになってきたので、機械化によって手の空いた人員を利益に直結する付加価値の高い仕事へと振り向けていく。昨年から逐次導入してきた新たなコンピューターシステムでは、まずは顧客と連携する業務を優先させ、同時に社内業務のIT化のさらなる進展を目指している。受注から出荷まで、すべての流れの中で人の手を煩わせていたムダ取りを目標にしており、現在そのプラットホームの構築を急いでいる。特に消費財においてはSNSを管掌する情報系部門の整備と強化を図りたい。来期以降の課題としては化工品部門におけるシステムの導入を見据えている。

【注力する製品は】
一昨年から展開しているワークブランド「ULTRAMAN」は、幅広い世代から親しまれているウルトラマンの〝強さと安心感〟をコンセプトとしており、その機能性とデザイン性は徐々にではあるが支持を拡大しつつある。今年はシリーズ最新作の映画も公開されるので、その機に乗じてさらなる拡販を狙いたい。また工業用品ではサクションホースなど汎用品の拡大に努め、全体の底上げを図っていく。そのためには、やはりお客様との強固な信頼関係を築き上げていくことが大切で、営業面ではオンラインによる打ち合わせを活用しながらも、なるべくユーザーから近い距離からの提案活動を強化していきたい。

【今後の展望を】
長期的な視点に立って供給面の問題を考えると、国内回帰をいかに進めていくのかを見直す必要を感じている。安価な製品を製造・調達するために新興国での生産を行い、一時的な製造コストの抑制が図れたとしても、SDGsやカーボンニュートラルといった社会的課題に取り組む上で、果たしてそれを継続していくべきなのかという疑問を持っている。今後は海外に生産拠点を置いて推進するにあたっては〝地産地消〟が基本になると考えており、ただ価格を求めて調達国を変えていくという手段はもう通用しない時期にきている。市場としての海外展開ではタイの食品工場をはじめ韓国、香港にも輸出しており、海外向けにおいても国産品質の信頼を強みに、さらにアジア市場の拡大を目指していきたい。

今年はさらに時代が大きく変わり、当社にとっても大きな転機になる年と考えている。さまざまな面で、これまでの考え方が通用しなくなると気持ちを一新しており、時代の変化に呼応しながら新しい取り組みにチャレンジしていくスタートの年にしたい。