【ホース・チューブ・継手特集】タイガースポリマー
タイパワーホース
バランスの取れた製品提供
タイガースポリマーが手掛けているホース事業の現況は、コロナ禍の影響を大きく受けた前期からの回復傾向を着実にたどっており、先月公表された2022年3月期の第3四半期の実績においても、業績は改善。第4四半期においても同様の状況が続いており、今期の見通しとしては対前期比でプラス、当初の計画値よりも上回って着地するものと見ている。予想を上回る回復傾向を示したものの、コロナ禍前の19年度の実績には届いていないことから、巻き返しに向けて今後も引き続き事業活動の活性化に力を注ぐ。分野別の状況としては、家電用ホースは伸び悩んだものの、産業用ホースは堅調に推移。好調な需要分野であった太陽光発電向けは、一時期に対して落ち着きを見せているものの受注は残っている。カーボンニュートラルへの取り組みが社会的な機運として高まりを見せているが、今後のサステナブルなエネルギー確保のムードにおいては風力発電が有望。洋上風力発電設備の増設が進んでおり、政府が持続可能エネルギー確保の切り札として、洋上風力における電力導入目標を明示するなど、さらに市場拡大に向けた道筋がついている。同社では「今までほとんどなかった需要分野だけに、風力発電を取り巻く状況に大きな関心を寄せている」(渡邊営業部長)としている。
ウィズコロナの現状において、業務におけるリモート体制について社内では定着。会議などは対面とリモートを使い分けて実施しており、新たな選択肢が確立されたことで、業務の効率化という面でのメリットも得られた。その一方で、社会的に浸透が行き届いていない側面もあり、相手先に実際に出向いてコミュニケーションをとる状態に近い仕事の進め方を模索している。同社としてはデリバリーに関しても対応を進めており、受注から納品までの時間短縮に向けて配送元を各地に分散、さまざまな観点からサービスの向上に取り組んでいる。
製品の品質についても、ユーザーにとって最適な性能や仕様を追求、ユーザーニーズに即しながらバランスの取れた製品を提供している。既存製品では、耐摩耗・耐圧・静電気帯電防止機能を備えたデリバリーホース「タイパワーホースWSU型」が現場での幅広い使用条件を満たすこともあって高い評価を獲得。さらには、顧客からの「搬送物に廃油が混入しており、油に強い同様のホースがほしい」といった現場のニーズに対しては、耐久性に耐油性が兼ね備わった「タイパワーホース耐油WS型」を開発してラインアップに加えた。このほかケーブル保護管についても、現場での取り回し性に配慮した「タイレックス」に加え、スリット加工を施したことで開管を可能にした「スリットタイレックス」などをラインアップしている。
最近の課題としては特に、原材料不足。また天然ガスや電気などといったユーティリティコストも上昇しており、製造コストがかつてない勢いで跳ね上がっている。原材料については価格高騰に加えて量的確保にも危機感が漂っており、原材料メーカーとの価格交渉の余地も残されていないことから、即座に収益を圧迫し始めている。顧客に対しては昨年8月に値上げをお願いし、受け入れてもらったものの、原材料などの価格は続騰。「今年も自助努力に懸命に取り組んできたが、5月からゴムシート、押出製品全般において再び値上げのお願いをすることになった。製品の安定供給にも影響が出てくる可能性があることから、苦渋の選択をせざるを得ない」(渡邊営業部長)と、同社では心情と実情の乖離(かいり)に苦しめられているメーカーとしての苦悩を訴えている。