積水化成品工業
新中期経営計画策定
「Spiral―up2024」
積水化成品工業(柏原正人社長)は、2022~24年度までを実行期間とした新中期経営計画「Spiral―up2024」を策定し、5月11日に大阪市北区の大阪本社において発表した。21年度までの前中期経営計画「Make Innovations Stage―Ⅱ」の次のステップとして策定されたもので、再成長に向け収益のV字回復を目指す。PDCA(業務管理における継続的な改善)を循環させるとともに、〝持続可能な社会の実現〟への挑戦と〝持続的な企業価値向上〟を好循環させていく意思を根幹に置いて設定。前中計の反省を踏まえ〝「持続可能社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の実現に向けて「ESG経営」を土台に強靭な収益基盤を確立する〟目標を基本方針として定めている。定量目標として、24年度の売上高を1350億円(3年間の伸長率5%)、営業利益50億円(同50%)、経常利益48億円(同50%)、当期純利益30億円、ROE3・0%を目指す。設備投資については能力拡大、合理化・省力化、開発、DX等に向けて前計画比180%増となる220億円を計画している。
同社グループでは前中計において、3つの重点施策として〝事業ポートフォリオの進化による企業価値の向上〟〝グループ経営基盤の強化〟〝持続可能社会への貢献〟を掲げてまい進。「SKG―5R」活動を中心とした持続可能な社会への取り組みの推進と、組織再編などによるグループ経営基盤の強化は果たされたものの、新型コロナ感染拡大や半導体不足、原燃料高騰などといった市場構造が大きく変化する厳しい事業環境への対応が進まず、計画に対して大幅未達となった。
新中計では重点課題の1番目に〝収益体質の強化〟を掲出、基盤事業のさらなる安定化と成長事業の創出および拡大を図るためのターゲット事業領域として「食」「エレクトロニクス」「モビリティ」「医療・健康」「住環境・エネルギー」の5分野を重点分野として設定し、経営資源の選択と集中によって事業ポートフォリオを再構築する。抜本的な生産革新に取り組み、開発品を収益力向上の成長ドライバーと位置付け、早期の収益化を図ることで強い事業体質へと変革する。成長性を見込める領域に資源を再配分し、食は基盤領域として環境貢献製品の市場投入、食の安心・安全の提供やフードロス削減に寄与し、環境・社会課題の解決に貢献する。エレクトロニクス、モビリティは注力領域とし、先端素材や環境貢献製品などといった差別化製品によって事業の高収益化を推進、デジタル技術の普及と高度化に貢献する。Proseatとのシナジー最大化および新素材・新用途展開によって、EVなど次世代モビリティの技術革新の一翼を担う。「Proseatにおける需要はM&A時の予測を大きく下回って推移したが、本年以降は緩やかに回復していく見通し」(同社)であり、構造改革によって固定費、労務費圧縮といったコスト削減効果額12億円を引き出す。拠点再編としてUK拠点の撤退、東欧生産拠点の統合を推進中で、生産性改善を目指して自動化、集約化による合理化も推し進めている。期待領域として医療・健康、住環境・エネルギーを設定。メディカル・ヘルスケア領域のニーズに対しては独自製品の高度化によってこたえ、グローバルに新たな価値を提供。防災・減災やインフラ整備に対応する製品を展開することによって持続可能なまちづくりに貢献する。
土台となるESG経営については、〝環境・社会課題解決型事業への転換〟〝経営基盤の強化〟の2重点課題を設定。社会価値と経済価値の両立に向けて、資源循環(サーキュラーエコノミー)を軸に据えた事業構造に転換、事業活動に伴うCO2排出の最小化と技術・製品など新しい価値創出によるCO2削減を同時に進める手法によってカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを推進する。その実現に向けて同社では、グループ全体において環境に関する業務を一元的にけん引していく組織として、4月に「GX推進部」を設立。経営基盤の強化をより一層推進する前提として、マテリアリティ(経営重要課題)を特定した。マテリアリティで特定された項目のマネジメントを徹底することにより、持続可能な社会の実現に向けて貢献していく。財務体質の強化に向けては、〝PL重視の経営〟から〝資本効率重視の経営〟へと移行。キャッシュフロー改善、運転資本回転率を重視し、各事業分野での安定したキャッシュフロー創出と維持向上を目指す。財務レバレッジのコントロールによって適切なバランスシートの管理を実現、事業ポートフォリオ、ビジネスモデルの変革によって事業効率を改善し、利益水準を拡大させる。成長分野への重点的な経営資源配分、デジタル・先端技術などへの戦略的投資などといった資本の有効活用によってROEの向上につなげ、確固たる財務体質を構築し、企業としての成長を果たす。