JATMA
新会長に山石氏(横浜ゴム社長)就任
交替会見、新副会長は山本氏(住友ゴム社長)
日本自動車タイヤ協会(JATMA、東正浩会長)は5月24日、定時総会において役員改選を行い、新会長に横浜ゴムの山石昌孝社長、副会長に住友ゴム工業の山本悟社長を選任した。任期は2年。東前会長が就任した2020年はコロナ禍のまっただ中であり、定時総会も中止せざるを得なかったが、今回は対面による開催が実現。オンラインで行われた「会長交替記者会見」を通じて東前会長は「任期中に最も心を砕いた事柄としては、コロナ禍の状況でも実施できる活動を模索することだった。屋外でのタイヤ点検などは中止せざるを得なかったが、改訂版〝タイヤのライフサイクル(LC)CO2ガイドラインVer.3・0〟を発表できたことは大きな成果だったと思う」と振り返った。山石新会長はその実績に対して「ガイドラインを活用し、先頭に立ってカーボンニュートラルへの貢献に向けて最大限に取り組んでいく」と抱負について語った。
タイヤのLCCO2ガイドラインVer.3・0は、東前会長のリーダーシップの下、JATMAが発行したもので、タイヤのライフサイクルにおける温室効果ガス排出量の基本的な算定方法、算定例を明記、国内各タイヤメーカーにおける温室効果ガス排出量の算定や、JATMAにおける国内市場のCO2排出量削減効果の算定などに活用されている。「タイヤ業界全体における環境への貢献度が定量化でき、低燃費タイヤの転がり抵抗低減によって、2006年~2020年にわたって280万㌧を超えるCO2の低減が図られた事実が明確に伝えられた」(東前会長)。
会見では、最初に東前会長が退任のあいさつを行った。「本日をもって2年間の任期を終え、会長の役割を退くことになった。この2年間はコロナ禍対策に全力を尽くしてきたが、路上でのタイヤ点検などは取り止めざるを得なかった。実際に現場での活動はできなかったものの、デジタルツールを使うなど、新たな手法で取り組む道が開かれた状況は進歩と言えるのではないかと思う。モビリティに求められる根源的な要素は安全であり、車にとってタイヤはモビリティを支える重要な部材である。環境負荷の低減もモビリティにとっての普遍的なテーマとなっており、人の生命を守るさまざまな施策を講じながらタイヤの製造、使用、廃棄(リサイクル)によって生じる環境負荷低減に向けて力を尽くしてきた。日本政府は2050年にカーボンニュートラルという指針を打ち出しているが、タイヤ業界においてはタイヤのLCCO2ガイドラインVer.3・0がその貢献に向けて大きく役立つものと期待している。騒音に対する社会のニーズも高まってきているが、規制に適正に則した商品を円滑に供給していくことで、社会に貢献することができる。段階的に推し進めてきたが、ようやく自主的な取り組みとして制度構築のめどをつけることができた。コロナ禍という制約を受けながらも施策を練って問題解決に向けて着実に進むことができ、任期を全うすることができたことは皆さんのお陰と感謝している。今後は山石新会長の下で、JATMAがその役割を今まで以上に果たされることを願っている」と、期待の気持ちを伝えた。
引き続き、就任のあいさつを行った山石新会長は「就任に先立つ2年間は、新型コロナウイルス感染症をいかに抑えるかという問題に対して、日本社会、さらには全世界が総力を挙げて取り組んできた期間であった。こうした取り組みが功を奏してきており、感染が沈静化に向かうことを強く願っている。東前会長からバトンを引き継ぎ、JATMAの会長としての任を果たしていきたいと考えているが、会長が代わろうともJATMAの役割が変わることはない。自動車タイヤはモビリティの主役であり、最重要部品の一つとして自動車タイヤに求められる役割は〝安全〟と〝環境〟であることはいつの世にあっても変わることはない。世界は日々大きく変化しているが、タイヤに求められる安全と環境は何なのかをわれわれは常に考え続け、その時代に求められる安全と環境というニーズを満たすタイヤを提供していく必要がある。JATMAの活動も、こうした考えに沿ったものとなる。時代を経るに従って、社会はより高度な安全を求めるようになっており、タイヤに関する国連規則の規定も強化される方向で議論が続くものと思われる。JATMAとしては、こうした国際的な議論に参画し、われわれの意見を反映させるために、これまで以上に取り組んでいく必要がある。国内においては、タイヤの空気圧管理の適正化はいまだ大きな課題として残されており、新たなメディアを通した普及・啓発活動をこれまで以上に進めると同時に、路上でのタイヤ点検といった地道な努力についてもこれまで通り注力していく必要がある。JATMAの会長として、こうした取り組みに積極的に参画したいと考えている。環境を巡る社会の変化は早くて大きく、その最たるものが地球環境問題への対応となっている。日本政府は、2050年カーボンニュートラル実現という目標を掲げており、われわれ自動車タイヤ製造事業者としても、2021年に改訂したタイヤのLCCO2算定ガイドラインを活用しながら、その達成に向けて最大限の貢献を果たしていきたいと考えている。市販用タイヤの騒音対策に関する自主的な制度は、東前会長の下で構築にめどがついたところであり、今後は完成を経て、有効な制度として運営されていくことが重要であると考えており、JATMAとしても今後しっかりと取り組んでいく。変わる世にあって決して変わることのない、われわれの目標である安全と環境の実現に向けてJATMAとしての活動を実施していく。そのJATMAの会長として、私自身も与えられた職責を全うすべく全力を尽くす」と述べ、力強く意気込みを伝えた。
新役員体制は次の通り(敬称略)。
▽会長・山石昌孝(横浜ゴム代表取締役社長)=新任
▽副会長・山本悟(住友ゴム工業代表取締役社長)=同
▽専務理事・倉田健児(日本自動車タイヤ協会)
▽理事・木水秀和(ブリヂストン常務役員)、西口豪一(住友ゴム工業取締役専務執行役員)、山本忠治(横浜ゴム常務執行役員)、笹森建彦(TOYO TIRE取締役執行役員)
▽監事・菱沼直樹(ブリヂストン日本事業CFO統括部門長)=新任、提箸欣也(翼法律事務所弁護士)
▽顧問・東正浩(取締役代表執行役Joint Global COO)、清水隆史(TOYO TIRE代表取締役社長)