2019年12月15日

西部ゴム商組
地域ごとに明暗分かれる
「ホース商工懇談会」より

(既報)西部工業用ゴム製品卸商業組合(岡浩史理事長)は11月28日、大阪市北区の中央電気倶楽部において、「ホース商工懇談会」を開催した。今回は商業社から10社10人、賛助会員であるホースメーカーからは10社14人が参加。

ホース商工懇の様子

メーカーによる生産・販売状況の報告では、一般ホースについては十川ゴムの松江耕執行役員大阪支社長、樹脂ホースにおいてはタイガースポリマーの植富男大阪支店長、高圧ホースについては住友理工ホーステックスの亀山修平大阪事業所長がそれぞれ担当した。松江執行役員は一般ホースの地域別動向について、関東圏は土木向けシールドマシン工事向けが好調で太陽光発電による需要も伸びている。東北地区も震災復興に向けて樹脂・サクションホースが好調で、関西地区においては米中貿易摩擦、韓国との関係悪化の影響によって半導体製造装置分野が低調。しかしながら5Gと自動車のEV化による追い風によって半導体分野が復活する見通しが立っている。中部地区は安定しており、四国も横ばい、九州は低迷しているが今後への期待が高まっている。

十川ゴムの松江執行役員

樹脂ホースについては、塩ビ工業・環境協会による“軟質塩ビ樹脂生産出荷実績表統計”の数字をバロメーターとして説明。2019年の生産出荷実績は18万1017㌧で「ここ4年間の実績で最も低迷している」(植氏)。原油・ナフサ価格が安値安定の傾向にあって、樹脂ホースの最近の値上げの背景については「樹脂ホースのコストは原料よりも運送費の高騰によって大きな打撃を受けている。確かな品質で高付加価値製品を出荷しているので、ぜひとも理解してほしい」と胸の内を明かした。

タイガースポリマーの植支店長

高圧ホースの概況について亀山所長が解説。建設機械が苦戦しており、自動車用も伸び悩んでいる。建設機械の中でも機種によって好不調を分けておりコンクリート機械、ミニショベル、建設用クレーンは前年実績を上回っているものの、トンネル向けや道路関連は伸び悩んだ。工作機械は9カ月連続で減少しており、中国向けや米国向けが前年同期比で半分にまで落ち込んでいる。足元については「大型台風の影響によるサプライヤーからの供給が途絶えたことで、建設機械やフォークリフトメーカーにおける生産が停止したが、最近では再開を果たしつつあり、海外からの輸入でリカバリーするなど、以前の状態を取り戻しつつある」(亀山所長)。

住友理工ホーステックスの亀山所長

引き続きホース部会からの提議・質疑事項の討議に移行。商社側からの質疑事項である、高圧ホースの海外品の流入に対する懸念に対して、メーカー側では「海外品による影響は見られず、価格競争の問題にも発展していない。そもそも海外品の参入は10数年前から始まっており、品質を重視する国内のOEM、セットメーカーは相手にしてこなかった。価格優先で、品質を無視して販売している業者は確かに存在するがほんのわずかに過ぎない。グローバル化の進展に伴い、米国からの輸入もあるが、品質においては日本に届いていないので、問題はないと考えている」と回答した。

 物流面に対する質問に対しては「物流に関しては費用の増大ばかりではなく、大型ホースについては出荷制限が掛けられるなど、状況は厳しさを増している。物流業界の人手不足の深刻さを考えると、われわれの置かれる状況も今後は一段と厳しさが増すものと予想している。チャーター便に切り替えざるを得ない事態を迎えており、そのチャーター代についてもメーカーが負担している。今後はお客様の理解を得た上で、状況に応じた転嫁をさせてもらえないものかと考えている。現在は運送会社がお客を選ぶ時代になっており、従来のやり方では現在の運送コストの高騰が解消される見通しは立たない。われわれメーカーとしても地方の配送業者を使うなど新たな手立ては考えている。配送会社によっても搬送物やルートなどの得手不得手があり、さまざまな運送会社とのすり合わせを行っている。メーカーのわれわれが各拠点に十分な在庫を持ち、受注量が多い場合は他拠点から持ち込むことで、なるべく数量をまとめることによってコスト削減を図る方法にも取り組む」と対応策を示した。

 人手不足については「モノづくりの人材は確保できているが、開発や営業といった人材の不足感は大きい。自動化、多能工化でカバーしているほか、一部では海外生産に頼って欠品を防いでいる」「人手不足の背景にある課題としては、若年層の離職率の高さがある。若い人材の確保に迫られていることから、海外の研修生の受け入れも行っている。自動化への設備投資を実施しながら、生産力の維持ができるような取り組みにも臨んでいく必要があるだろう」と実態についての説明が行われた。