2022年1月5日

新春トップインタビュー
バンドー化学

コア事業生かし事業見直し
医療分野にも可能性

【昨年を振り返って】
2020年に比べ、経済的に回復の兆しは見えてきたが、依然としてコロナに振り回される状況は変わらず、その影響を前提に置いた活動を余儀なくされた一年であった。当社においては、感染防止対策を徹底していたことからお客様への製品供給がストップするなどの問題は生じなかったことは良かったと思う。

需要先各社の感染防止対策もあって、顧客密着型の営業スタイルを強みとしている当社にとっては大きな変革を迫られた。このような中、ホームページへのバーチャル展示会コーナー設置やウェビナー実施などオンライン対応を行い、一定の成果が得られた。また、デジタルマーケティングの手法も活用しているが、営業の形態が変わっても、顧客に密着し、お客様の声を重視するという当社の姿勢の根幹は揺るがないと考えている。

働き方改革の面でも、当社では2018年から介護や育児の支援目的から在宅勤務制度を取り入れ、コロナ感染拡大防止策として一昨年3月から暫定的にその適用範囲を拡大していたが、昨年4月からは感染症対策にとどまらない恒久的な制度として全従業員を対象に、自律的に集中して取り組むことで生産性が上がる業務を在宅で行うことも可能とした。これを従来の働き方である、事業所で協働してアイデアを出し合い発展させていく働き方と組み合わせることで、組織全体の成果を増進することを目指している。働き方の一つの選択肢として定着させていく。

【環境対応などサステナブルへの意識が世界的に高まっていますが】
当社においても、会社経営における業績向上に向けた事業活動と同様に、サステナビリティを含めたESG経営に対する意識が高まった一年であったと思う。当初、「2030年度目標」としてCO2排出量を2030年度までに13年度比で18%削減するというロードマップを掲げていたが、日本政府からカーボンニュートラルに向けて、より高い目標が公表された状況を踏まえ、一段と実効力を備えた目標設定へと改め、計画内容の見直しを行っている。

SDGsについては、中期経営計画の取り組みとも関連が深く、最も貢献できる項目として3つのグループ目標を設定した。目標7”エネルギーをみんなに、そしてクリーンに”に対しては、22年の製品の内訳として、独自基準を満たす環境対応製品の比率を50%以上に高める。目標12”つくる責任つかう責任”については、新しい製法の開発を進める取り組みによって、廃棄物やエネルギー使用量の大幅な削減を果たす。目標8の”働きがいも経済成長も”に関しては、個人と組織の働き方改革を推進し、効率よく付加価値を生み出すための取り組みを推進する。

当社では昨年、東京証券取引所から新市場区分における「プライム市場」の上場維持基準への適合が認められ、「プライム市場」に上場する判断を行った。今まで以上に企業の質が問われる市場であり、コーポレートガバナンスに対する要求水準も高く、SGDsやサステナビリティへの取り組みについても一段と力を入れていく責任感を感じている。

【今後のテーマと取り組みについて】
自動車のEV化という時代の変遷を見据え、当社のコア技術を生かしながら事業の見直しを図る必要がある。具体的には、ゴムやエラストマーなどの配合や分散、複合化技術をEV分野で生かすことを模索している。高熱伝導シート「HEATEX」などといった製品はEV分野でも高い付加価値が発揮できるものと期待しており、また、視認性向上に向けて大型化が進む車内ディスプレイには光学用透明粘着剤シート(OCA)「Free Crystal」に期待している。

自動車の塗装についても脱VOCの流れが強まっており、塗料から加飾フィルムへの切り替え提案を進めているところだ。

自動車以外では、医療分野にも可能性を見いだしており、伸縮性ひずみセンサ「C―STRETCH」を活用した医療機器・ヘルスケア機器の実用化も進んでいる。また、電子資材分野では精密研磨材「TOPX」シリーズが需要を伸ばしてきており、ディスプレイなどといったガラス研磨で高い評価が得られている。

【今後の展望について】
事業環境については、コロナ禍の先行き見通しの難しさもあって予断は許されないが、22年度は個人消費や輸出が回復に転じ、国内外ともに経済が活性化すると予測している。原材料の高騰という懸念があるものの、世界経済の回復に伴って原油産出量が増加すれば、高止まりも収束するのではないかと見ている。当社グループにとっては、中期経営計画の最終年度を迎える年となるため、そこで掲げた課題については、しっかりとやり切ることを目指したい。