2022年4月15日

ゴム技術フォーラム
第34回公開フォーラムを開催

特殊ゴム・エラストマーの未来

ゴム技術フォーラム(平田靖代表)は3月24日、オンライン配信によって「第34回公開フォーラム」を開催した。今回のテーマは〝特殊ゴム・エラストマーの未来展開〟で、同フォーラムでは2019年に「特殊ゴム・エラストマーの未来展開」調査委員会(竹村泰彦調査委員長・日本ゴム協会名誉会員)を発足させて調査研究を実施。今回、その調査報告を行うとともに、環境問題を背景にゴムの最大需要先である自動車も大きく変わろうとしている時期であることから、世界的な温暖化ガス削減の動きと自動車のEV化の加速に関連した基調講演を交えて行った。

平田代表のあいさつの後、日産自動車テクニカルセンター材料技術部XD3の小松基主管を講師に招き、「脱炭素社会とEV化の動向とゴムなどの高分子材料への影響」をテーマに基調講演を実施。世界では、コロナ禍によって経済活動が停滞し、二酸化炭素排出量は減ったものの、地球温暖化を抑えることはできず、気候変動の影響がコロナ禍で多数発生している。この気候危機に立ち向かうため、各国がカーボンニュートラルを宣言、自動車業界もその対応が急務となっており小松主管は「この状況下で材料はどう貢献していく必要があるか」を主題にCO2低減を考慮しながら、技術革新を進めるための素材ニーズについて紹介した。

引き続き、特殊ゴム・エラストマーの未来展開調査委員会による報告に移行。調査委員会を代表して竹村調査委員長が総合報告を行った。ゴムは90年代以降もタイヤ分野が需要の中心。自動車の発展とともに進化を遂げてきた。特殊ゴムも自動車に多く用いられており、その技術も含めた進展は自動車側からの要請にこたえることで果たされてきた。ワーキンググループ(WG)では、この30年における各種特殊ゴムの発展の軌跡を報告。日本では20年10月に「2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロにする」という目標を宣言しており、欧米や中国においても30年代の内燃機関車から電動車への切り替え方針を表明、規制強化促進に踏み出しており、今後の自動車の変革に応じて特殊ゴムも大きな動きを見せるものと推測されている。こうした状況についても各WGリーダーから説明が行われた。今回の調査研究内容は今後、約1年をかけて成書にまとめ上げる計画で、来年の公開フォーラムの参加者に届ける予定で活動を継続していくスケジュールを明らかにした。

調査委員会の報告プログラムに移り、WG1のリーダーである神戸祐哉氏(デンカ)が代表して〝NBR&NV&NE、HNBR、ACM&AEM〟についての検証結果を報告した。これらのエラストマーは、現状ではガソリン自動車用のシールやガスケット、ホースなどが主用途先。経済産業省から、2030年には日本の20~30%をEV車(プラグイン・ハイブリット車含む)とする目標を打ち出しており「今回の調査対象はガソリン自動車における用途がメーンであったが、SDGsの意識の高まりの中で、将来に向けては、EVやロボットなどといった新たな用途を探索する必要がある」と強調した。

その後、WG2のリーダーである石川哲也氏(ブリヂストン)が〝CR、CSM、CM、CO、FKM〟、WG3のリーダーである逸見祐介氏(三ツ星ベルト)が〝EPDM&EPM、ノルボルネンゴム、エポキシ化NR、U〟、WG4のリーダーである前田哲生氏(日本ケミコン)が〝Q、多硫化ゴム(T)、フォスファゼンゴム(PZ)〟について同様に報告。WG5のリーダーである篠塚翼氏(住友理工)が〝全てのTPE〟を対象にした調査結果を報告した後、調査委員会の世話人を務める滝澤俊樹氏が閉会のあいさつを行い、今回のフォーラムの幕を降ろした。