【ホース・チューブ・継手特集】
八興
主力製品で特許取得
導電スーパー柔軟ホースシリーズ
八興の2022年3月期の業績は、過去最高の売上高を更新した。今期も下半期を迎えようとしているが、4―8月の実績では前年同期と同じ水準で推移しており、7、8月の状況についてはこれまで追い風となっていた半導体市場向け製品において一服感が漂っているものの、前期からの流れを維持している。価格改定による是正効果もあって今期の業績は、前期比105%で計画している。
価格改定は樹脂原料、金属、副資材、ユーティリティの価格高騰を受けたもので、製造原価が大幅に上昇、厳しい経営状況が継続している。コスト削減などに懸命に努めてきたものの、上昇を続ける価格高騰によるコストアップ分は既に自助努力では賄えないレベルに達していることから、本年7月10日の受注分からの製品の値上げに踏み切った。価格改定が浸透することによって適正な利益水準に是正され、同社としては、引き続き品質維持や安定供給における信頼性を確保する。価格の高騰は原材料における需給バランスの悪化という要因が背景にあり、樹脂原料のタイト感という局面が土台となっていたが、その状況については以前よりも沈静化。しかしながら世界情勢・為替リスクなどといった不確定要素が多いことから、同社では予断を許すことなく、サプライチェーンの見直し、在庫の積み増しなどによって外的要因にかかわらず、可能な限り安定供給が実施できるよう努めている。
主力製品の新たな展開としては「導電スーパー柔軟ホースシリーズ」で特許を取得した。導電スーパー柔軟フッ素ホースシリーズは、これまで市場に流通していた導電ホースとは全く異なる設計コンセプトで開発。従来の導電性樹脂ホースは、ホースの長さによって電気抵抗値が上がることから実使用長さにおいては、ホースに帯電する流動帯電を安全に除去することが難しいという課題があった。特許技術はホース長さに比例して電気抵抗値が上がらないことから、1~20㍍の長さまでは導電性(1KΩ≦R∧1MΩ)を担保できる画期的な製品であり、導電スーパー柔軟フッ素ホースシリーズは、静電気対策の技術指針のIEC/TS60079―32―1:2013に準拠、可燃性流体や縁性流体の搬送時の流動帯電を安全に除去することができる。
このほか、ニーズ対応製品としてはスーパー柔軟フッ素チューブの改良版である「スーパー柔軟フッ素チューブ・ウルトラソフト」があり、同社がこれまで展開していた「スーパー柔軟フッ素チューブ」の柔軟性を上回るソフトさを求める顧客の声を反映させた。発売開始とともに市場に好評に受け入れられ、8月にはサイズ拡充を実施した。「柔軟フッ素ホースシリーズ・フェルール継手加締め品」は、衛生性や洗浄性を必要とするさまざまな市場で大きな反響を得ており、年々売り上げを伸ばしている。
市場のニーズにこたえた展開としては「CPC(米国コールダー・プロダクツ・カンパニー)社製クイックカップリング対応チューブ」として、主力5製品に対して新サイズを追加した。CPC社は、樹脂継手のトップメーカーでありながら自社ではチューブのラインアップをしていない。そのため日本においては、適合するチューブサイズも限定的であり、継手にチューブをマッチさせるためには、ユーザーの専門的な知識を必要としていた。八興では、この課題に着目。CPCのメーンサイズの樹脂継手に合わせたサイズのチューブとして「スーパー柔軟フッ素チューブ(E―SJ)」に4・3×6・4、8×10、「スーパー柔軟フッ素チューブ・ブラック(E―SJ―BK)」に4・3×6・4、8×10、「スーパー柔軟フッ素チューブ・ウルトラソフト(E―SJUS)」に2×4、3×5、4・3×6・4、8×10、「スーパー柔軟フッ素チューブ・ウルトラソフト・ブラック(E―SJUS―BK)」に2×4、3×5、4・3×6・4、8×10)、「KYチューブ(E―KYT)」に4・3×6・4、1/4×3/8(6・35×9・53)、8×10を新たに取りそろえた。これにより、顧客の利便性がさらに向上。八興では常に顧客の声を聞き、顧客課題の解決のために市場になかった製品を開発している。
今後の事業への取り組みとしては、コロナ感染対策を厳格に実施しながら、顧客との新しいコミュニケーションの在り方や機会の創造に力を入れる。エリア・業種によって顧客の考え方は多様であることから、顧客に合わせてウェブミーティングや訪問面談、ウェビナーなど、情報提供の手段を選択できるような体制で業務に臨む。同社では10年以上前から自社ホームページの強化に着手。従来は会社案内と製品紹介のためのツールとしての位置付けであったものを、改善後は顧客とのコミュニケーションを図るために顧客開拓手段として活用していく。ホースなどの工業部品を選定する顧客層も若返ってきており、スマホ世代となっていることから、さらにウェブサイトの利便性向上が必要になると考えている。
八興の需要業界の見通しとしては半導体市場は高い水準で需要がおう盛であり、今後は医療機器、ロボットや精密機械、分析機器、クリーンエネルギーなどの液送配管の分野に期待を寄せている。前期は過去最高の売り上げを達成したが、それをさらに上回る計画を立てている今期の目標達成に向けて、今後も懸命に事業の拡大と活性化に取り組む。売り上げは、コロナ禍前の19年を上回る数値にまで盛り返したが、利益面においても追随できるように、さらなる業務の効率化・原価低減などといった収益改善に向けて取り組んでいく。