日本ゼオン
セパレータ可視化技術に貢献
早稲田大学のLIB安全性試験で
日本ゼオン(田中公章社長)は、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構による、リチウムイオン二次電池(以下、LIB)の釘刺し試験(短絡安全性試験、LIBの代表的な安全性試験で、LIBに釘を刺して内部短絡・ショートに対する耐性を評価する)におけるセパレータ可視化に共同で取り組み、その技術の確立に貢献した。
セパレータは電池内の正極材と負極材の間に配置され、リチウムイオン伝導を確保しながら、電極間の短絡を防止する役割を併せ持つLIB主要材料の一つで、近年ではLIBの安全性向上に関する技術に着目。セパレータの熱特性と強度の向上が求められるとともに、そのメカニズムの検証が待たれていた。今回、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構と取り組んだセパレータ可視化技術により、釘刺し試験の挙動をoperando(オペランド)観察(試験中に起きている現象の直接観)することに成功した。この技術は、セパレータの役割、機能をより明確にすることによって、LIBのさらなる安全性向上に役立つことが期待されている。
今回の技術の詳細は、11月10日に福岡国際会議場で行われた「第63回電池討論会」において発表された。電池討論会において早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構と共同で〝超高速X線スキャナを用いたセパレータを可視化したLIBにおける短絡安全性試験のoperando観察〟と題して発表。セパレータ表面にX線散乱断面積の大きい金属の酸化物微粒子を塗布することによって、短絡安全性試験中にセパレータの挙動をX線スキャナによって可視化し、直接観察することに成功した成果を伝えた。これまでは、短絡安全性試験中にLIBセル内部の電極短絡現象と熱暴走初期過程の解析を行ってきたが、今後はセパレータの電池安全性に対する役割や機能が明らかとなり、セパレータ材料開発の加速が期待される。
日本ゼオンでは、セパレータ用接着剤「AFL」の開発を通して、セパレータ表面への材料塗工技術を磨き、実績を蓄積。今回、同社が積み上げてきた技術を応用し、酸化物微粒子を最適な状態に塗工することで、セパレータの機能を維持しながら、その可視化を可能とした。今回の技術の成功により、同社はLIBのさらなる安全性向上に貢献、より高度な材料塗工技術を蓄積することができた。
同社は、中期経営計画における全社戦略に〝既存事業を磨き上げる〟を掲げ、電池材料の強化を目指している。今後も同材料のさらなる強化と、LIBの安全性向上に貢献するための事業展開と技術開発に努めるとともに、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構や関係企業との連携により、LIBの技術発展に貢献していく。