2019年12月25日

東レ
海水淡水向けRO膜創出 

世界最高レベルの造水性能保有

RO膜の分離機能層の微細構造

東レ(日覺昭廣社長)は、従来品比で造水量を約1・7倍に高めた世界最高レベルの造水性能を有する海水淡水化向け逆浸透(RO)膜を創出した。同開発品を用いることによって、エネルギーの使用量を増大させずにプラントの造水量の増加を図り、造水コストを低減させることができる。今後、3年以内の製品化を目指して開発を加速し、RO膜法による海水淡水化プラントの普及拡大に貢献したいと考えている。

 RO膜による水処理は技術革新によって造水コストの低減が進み、水問題解決に貢献するインフラ技術として中東の海水淡水化プラントを中心に世界中で採用が進んでいるが、将来、一日に生産できる造水量が数十万~百万㌧と膨大な超巨大プラントの時代が到来しており、使用エネルギーを抑えながら、高水質かつ高造水量を得られる技術への期待が高まっている。しかしながら、従来のRO膜では、造水量を高めると水質が低下してしまうトレードオフの関係があるため、新たな技術開発が求められていた。

 東レはこれまでの研究・技術開発で、ナノ材料分析で高い水準を有する東レリサーチセンターの技術を活用して、RO膜の分離機能層の㌨㍍(10億分の1㍍)サイズの微細構造分析を極限追求し、ひだ状構造と造水量、細孔構造と水質との関係等を見いだしてきた。今回、新たに分離機能層を形成する精密界面重合技術を開発し、ひだ状構造の表面積・厚み制御と、細孔の孔径制御を同時に行うことで、さまざまな成分を含んだ海水から淡水を選択的かつ効率的な透過を可能とし、水質を維持しつつ造水量を従来の約1・7倍に高めることに成功した。

 同開発品は水質を維持したまま造水量を増大させることができる上、造水量を増やしても使用エネルギーの増加を抑えることから、海水淡水化プラントの造水コストを低減させることができる。その結果、世界の水処理問題の解決に向けた海水淡水化用RO膜のさらなる普及拡大につながることを期待している。

 なお同成果は、アラブ首長国連邦のドバイで開催された当該分野で最も権威ある学会である、国際脱塩協会(IDA)の国際会議「IDAワールド・コングレス2019」で発表された。