2020年4月5日

松井製作所
factor4 tech-studiosをリニューアル

来場者に感動を与える空間へ
プラ成形への発想
進化を促す気付きが目的

松井製作所

松井製作所(松井宏信社長)は、成形現場に潜む無駄の削減実現に向け、実際の装置に接して成果が目にできる大阪府枚方市の体験型提案施設「factor4 tech―studios(ファクター4テック―スタジオ)」を全面的にリニューアルし、4月1日にオープンさせた。2013年の開設以来7年目の再構築で、成形現場に寄り添い、来場者にとって関心の高い成形品の仕上がりや、現場の生産性向上に向けた最新技術のソリューションを実際に目の前で提案する。最大の売り文句は〝体験〟で、実際に成形機を会場に持ち込み、来場者自らに感動を与える本質から〝成形分野のアトラクション〟と言える。初期のファクター4テック―スタジオは〝実用面重視〟のムードがうかがえたが、今回のリニューアルによって、さまざまな側面から新しいインパクトを与える驚きの空間に仕上がった。

ファクター4の考え方は、95年にエネルギー問題の革新者であるエイモリー・B・ロビンス氏らが発表した「ある一定量の資源から、どれだけの財やサービスを作り出せるか」という〝資源生産性〟を4倍にすることにより、今の豊かさを2倍にし、資源消費は半分にできるというロジックが背景。松井製作所ではその考えに共感し、プラスチック成形工場のパートナーとして〝2020年までに成形工場のファクター4を実現する〟という使命を掲げた。

同社では、その象徴的な施設であり、目標として掲げた使命を果たすためのモデル施設として13年にファクター4テック―スタジオを大阪府枚方市招提田近2-19の同社大阪事業所内に開設。目的としては①顧客の課題をいち早く解決に導くソリューションの紹介②新規顧客への〝MATSUI〟のアピール③シェア40%(現在は約38%)の壁を突破する――であったが、施設が果たした最大の貢献は「お客様が日常的に松井製作所に来社頂けるようになったこと」(同社)だと言う。18年度の来場者(見学者)の実績は、この6年間で営業日数247日のうち、192組(使用率77・7%)で、海外から来日した団体を含め、さまざまな業種の工業会の一行がバスをチャーターして見学に訪れた。新入社員の研修の一環として利用されたケースもあると言う。

開設当時は、2020年までに成形工場のファクター4を実現するために、カタログや仕様書だけでは伝えきれない製品の魅力を伝え、ソリューションを導入した際の実際の効果を体験できる実践型施設を目指し、成形現場に潜んでいる無駄の気付きを促す施設としての役割に期待。プラスチック成形にかかわる来場者の発想の進化を促すきっかけづくり(気付き)を目的としてきた。2020年を迎え、同社ではファクター4の認知度向上やコンセプトの浸透、不良率低減といった実際の実効性が認知されたと判断。「使命として掲げた2020年までの準備期間を経て、次のステップとして今後はファクター4の実際の浸透に向けて本格的に打って出る」(松井社長)。

驚きと発見に満ちた体験型施設

リニューアルされたファクター4テック―スタジオの新たな特長は、〝驚きと発見に満ちた体験を提供していく体験型施設である〟ことから、施設としての役割に見合うだけのリ・イマジネーションを実施。まずはブランディングとして全体にMATSUIカラー(百群=柔らかい白色を帯びた青色)に統一。体験ツアーを盛り上げる仕掛けを設置し、体感できる設置によって効果を分かりやすく示した。映像コンテンツを大幅に拡充することで、近未来的な印象で効果を打ち出し、説明内容のインパクトを高めた。

施設は、スタジオ―テック1~3にエリア分けされており、それぞれの区画がテーマをもって役割を担当。来場者の動線を計算したかのように、来場者は施設内の諸設備や映像に引き寄せられるように誘導され、スタッフの説明を聞きながらそれぞれのスタジオにおいて、新たな情報やそれぞれの成果の説明に耳を傾け、目からうろこを落としていた。

海外からの来場者も意識しており、創業100周年を迎えた同社の映像を多方向スクリーンでアピールできるビジュアルルームを設置。グローバル展開を意識しており、世界のMATSUIブランドを技術以外でも印象付ける。前スタジオからは基本コンセプトを同一にしながらも、イノベーションを重視した改装が図られており、実際の設備の配置も理路整然。内容的にも実際に成形機を使ってヒート&クール設備でテストを行っている。依頼者の金型持ち込みも可能で実際の生産現場の再現をこの設備を使って行うことができる。

不良品の対応には、AIやIoT技術に対応した取り組みを提唱。成形業者にとって、最も頭が痛い問題が不良品の発生で「一番のロスであり、リサイクルにもコストがかかる」ことから関心が高い。温度などのゆらぎが由来していると考えられており、それを瞬時にとらえて改善。独自のデバイスを開発しており、既成品との組み合わせも可能となっている。

現場でのレイアウト改善によるテスト環境の整備や各種テスト装備も充実。従来よりもレベルアップしたテスト環境が構築されており、同社では「受注前にどんどんテストを実施してもらい、評価を受けることで品質向上への協力を惜しまない」(同社)としている。新たな装備としては、これまで配備していなかった小型成形機向けのコンパクトな金型交換台車を配備。金型を交換する段取り時間の短縮にもつなげる。

樹脂成形工場においては、金型や熱交換機に使用する冷却水の水質が、成形サイクルや製品品質に大きな影響を与える重要な要素。この課題に関しても、水が蒸発しない画期的な水冷システムを準備。独自開発品で、全く新しい技術を実際にスタジオで目にすることができる。

6年間の歳月を経て、そこから得られた知見やノウハウを総動員しており、再構築された新施設はもはや隔世の感すらある。プラスチック成形にかかわるユーザーにとって本当に知りたい情報の宝庫であり、驚きと発見に満ちた体験を提供していく体験型施設として生まれ変わった新生ファクター4テック―スタジオに足を運ぶことで、事業の発展に向けて役立つ何かが必ず得られるはずである。

新顧客獲得に向けたイベント企画

なお、同社ではファクター4テック―スタジオを起点としたソリューションビジネスを全社一丸となって加速させる計画。新規顧客獲得に向けたイベント企画や、施設内では国内外で話題を集めた製品を紹介する「プロモーションステージ」を開設しており、ユーザーに求められているニーズなどといった情報収集の面でも有効。活用シーンとしては職場改善のアイデア基地、事前テスト基地という役割だけでなく、新入社員の教育の場、商社やメーカーの勉強会の会場としての活用の場として期待されている。これまでも講演依頼が舞い込むなど、さまざまな可能性が両手を広げて待っている。見学予約はだれでも、いつでも、ウェブからでも可能で、アドレスは「http://matsui.net/jp/tech–studios/UDRS/」。

松井社長のあいさつ
資源生産性を4倍に

松井宏信社長

世界中が新型コロナウイルス肺炎という強敵と戦っている真っ只中ながら、異なる使命感を持ってファクター4テック―スタジオをリニューアルし、皆さんに発表、お露目する。人類の未来をもっと長い目で見据えると、非常に重要で大きな地球規模での課題を抱えている。現在の地球の人口は約70億人で今世紀末には100億人に達するとも試算されている。世界的に貧困の輪が広がっており、今後はそうした問題に向き合い、さまざまな物資の供給量を増やすことで豊かで健全な世界をつくり出していかなければならないと考えている。資源の消費を削減しなければ環境への負担は増大する。資源は豊かさの源であり、豊かさへの追求は、消費削減とは相入れない事象でもある。われわれとしては、この矛盾する戦いにこれからも臨んでいかなければならない。そこで当社ではfactor4(ファクター4)を展開しており、生産量アップ×付加価値アップで豊かさ2倍、消費資源を半分にすることで、資源生産性を4倍にする取り組みを行っている。この10年間で技術を一段と充実させ、有効な独自技術であれば国境に関係なく、海外からも導入して発展させてきた。2020年は、ぜひとも皆さんに実際にファクター4を始動させて頂きたい。そのためにもリニューアルを図り、新製品や稼働状態を見学するだけでなく、手で触れてもらって体感して頂くことで、新しさを知る喜び、新機構を身近で感じる楽しさを味わって頂けるよう工夫を重ねた。成形現場の最新のアトラクションを終結したテーマパークであり、技術的な観点から心から楽しめる施設を作り上げたつもりである。魅力を味わっていってほしい。