2020年3月5日

三洋化成工業
世界初の全樹脂電池商業化へ

用地、建物取得し資金調達も実施

三洋化成工業(安藤孝夫社長)は、同社子会社で次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発を行うAPB(本社・東京都千代田区、堀江英明代表取締役)が、全樹脂電池の量産検証の開始のため、福井県越前市において用地および建物を新たに取得した。APBでは本工場用地および建物の取得によって、世界初の全樹脂電池の商業化に向け、早期での量産技術の確立を目指していく。

APBは、三洋化成工業とAPBの現代表取締役で、日産自動車の電気自動車「リーフ」のリチウムイオン電池開発の主導的立場を担った堀江氏が共同で開発したバイポーラ積層型のリチウムイオン電池である全樹脂電池(オール・ポリマー・バッテリー)の製造、販売等を行うスタートアップ企業。全樹脂電池は、界面活性制御技術を有する三洋化成工業が新たに開発した樹脂を用いて活物質に樹脂被覆を行い、樹脂集電体に塗布をすることで電極を形成している。このような独自の製造プロセスによって、従来のリチウムイオン電池よりも工程を短縮することで、製造コスト・リードタイムの削減を実現するとともに、これまでにない高い異常時信頼性とエネルギー密度を実現している。部品点数が少なくて済むバイポーラ積層型で、樹脂で構成されているため、電極の厚膜化が容易に行え、セルの大型化が可能で形状自由度が高いことも特長で、リチウムイオン電池の理想の構造とも言える。

本計画の概要は次の通り。

▽名称=APB福井工場(仮称)▽所在地=福井県越前市庄田町▽敷地面積=約2万3733㎡▽延床面積=約8628㎡▽事業内容=全樹脂電池の設計、製造▽操業開始予定=2021年

またAPBが、JFEケミカル、JXTGイノベーションパートナーズ合同会社(JXTGホールディングスのCVC)、大林組、慶應イノベーション・イニシアティブ1号投資事業有限責任組合、帝人、長瀬産業、横河電機の計7社を引受先とする第三者割当増資により、総額約80億円の資金調達を実施することを明らかにした。

今回の資金調達はAPBが開発を行う全樹脂電池の量産工場設立を主たる目的とするもので、今回の資金調達を踏まえて、全樹脂電池の量産技術の確立、製造販売の開始に向けて投資を実施する。全樹脂電池の量産やその後の市場展開において必要となる各分野で、豊富な経験を持つ新たなパートナーの支援を得ることでAPBは成長を加速させていく。

APBの堀江代表取締役は「われわれは今回、世界で初めて集電体を含めた電池骨格をすべて樹脂材料で再構築し、またバイポーラ構造を採用することで、出力は従来同様に確保しつつ、異常時においても電池内部での急激な発熱・温度上昇を抑制する、世界初の電池デザインとそれを支える一連の革新的な技術群を創出し、この高性能電池を『全樹脂電池』と名付けた。今回の増資で既存株主に加え、新たなパートナーからの支援を頂くことにより、さらに強力な体制で工場建設・新生産プロセスを実現し、いち早く本技術の社会実装を図っていく」とコメントしている。

三洋化成工業の安藤社長は「曲げても釘を打ちつけても発火せず安全で、形状自由度が高く、低コストにつくれるという革新的でユニークな全樹脂電池は、あらゆる生活の場面を豊かにし、持続可能な社会の創造に貢献できるもの。当社はAPBの株主としてそのような全樹脂電池の事業化を支援し、パートナー企業の皆様とともに『オールジャパン』の体制をつくっていければと思っている。10月には日本触媒との統合を控えているが、三洋化成・日本触媒の強みを融合し、経営リソースを投入して統合後も引き続きAPBをサポートしていく。10年後には数千億円程度の事業へと成長させたいと考えている」と、今後の展開に期待を寄せている。