2021年2月15日

東レ
しなやかでタフなポリマー材料創出

ナノアロイの超微分散化で実現

東レ(日覺昭廣社長)は、エンジニアリングプラスチックのポリアミド6(以下、PA6樹脂)が持つ高い耐熱性、剛性、強度を維持しながら、繰り返し折り曲げ疲労耐久性を従来の15倍まで飛躍的に高めた新規ポリマー材料を創出した。本開発品は自動車、家電製品、スポーツ用品など疲労耐久性が必要な用途に広く展開が期待される。2021年度から本格的なサンプルワーク開始を目指すとともに、幅広い工業材料分野で用途展開を進めていく。

PA6樹脂は自動車のエンジンルーム内部品や、家電製品の筐体などに多く用いられている。PA6樹脂に材料の寿命に関連する疲労耐久性を付与するには、柔軟なエラストマーを配合するが、疲労耐久性を向上させると耐熱性、剛性、強度が低下するトレードオフの関係があり、PA6樹脂が持つ特性を維持しながら、高い疲労耐久性を実現する新規材料の開発は長年の課題であった。

東レは、外力が加わった際に可動可能な構造を有するポリマーとして、分子結合部がスライドするポリロタキサンに着目し、ポリロタキサンをPA6樹脂中に均質に微分散化することで、PA6樹脂の特性と疲労耐久性の両立を目指した。そこで、複数のポリマーをナノ㍍オーダーで微分散させることにより、従来材料と比較して飛躍的な特性向上を発現させることができる同社独自のナノテクノロジーである「ナノアロイ」による精密アロイ制御技術を駆使し、PA6樹脂中に、ポリロタキサンを最大限の効果発現が期待できるPA6結晶構造サイズの数10ナノ㍍に微分散化することに成功した。このしなやかな応力分散機構により、PA6樹脂が持つ高い耐熱性、剛性、強度を維持しながら、繰り返し折り曲げ疲労耐久性を従来の15倍まで高めた新規ポリマー材料を創出した。

本開発品は、高輝度放射光X線(SPring―8)による試験で、外力を受けた際にPA6樹脂の結晶構造変化が抑えられることを確認している。今後、自動車、家電製品、スポーツ用品など疲労耐久性が必要な用途への展開を進めるとともに、繰り返し折り曲げが要求される部材等の新規用途開拓を推進していく。