2021年3月15日

帝人
モビリティ用ソーラールーフ開発

豪AEV社と共同で低速EV向け

帝人(鈴木純社長)は、LS―EV(ロー・スピード・エレクトリック・ビークル=低速EV)の軽量化に向けた開発パートナーであるオーストラリアのアプライドEV(ジュリアン・ブロードベントCEO、以下、AEV社)と共同で、ポリカーボネート樹脂製の近未来モビリティ向けソーラールーフを共同開発した。

近未来のモビリティ像としてCASEやMaaSが示される時代にあって、環境負荷低減や超高齢化社会への対応を強化する目的から、世界各国において自動車の電動化や自動運転化に向けた技術開発が進展。世界的な指標として、自動車の動力源であるガソリンや電気などの製造過程から完成車の駆動に至るまでのエネルギー効率を総合的に評価する〝Well to Wheelゼロエミッション〟が掲げられるなど、自動車社会においては、さらに大きな変化の到来が予測されている。こうした情勢にあって帝人とAEV社は、将来のEVに求められる技術基盤を獲得・整備する目的から、2019年よりLS―EVの共同開発を進めており、最近の成果として、用途に合わせた車体を搭載して自動走行が可能な多目的LS―EV向けのプラットフォーム「Blanc Robot(ブランク・ロボット)」を作り上げた。

今回開発されたソーラールーフは、帝人のポリカーボネート樹脂「パンライト」グレージングを表層に用いた、太陽電池搭載のLS―EV向けルーフで、帝人が長年にわたって培ってきたポリカーボネート樹脂グレージングに関する知見を駆使、ガラスでは難しい車体ルーフに適した曲面形状を一体成形することで、品質として求められる強度や剛性を実現している。ポリカーボネート樹脂は耐衝撃性に優れる一方、耐候性に課題があり、屋外での長期間の使用に向けては適切な加工が必要となるが、今回使用したパンライトグレージングは、帝人独自のハードコート技術を活用することによって、自動車に要求される10年相当の耐久性を実現。このソーラールーフに搭載された太陽電池セルの出力は、豪州の日照条件下でのテストにおいて、一般的なソーラーパネルと同等の約330㍗を記録した。帝人とAEV社ではソーラールーフのエネルギー効率を実証する目的から、一般車両向けLS―EVを想定した10㌔㍗/hのバッテリーを搭載したプロトタイプ車体を製作、ブランク・ロボットに装てんして、豪州の日照条件下で試験を実施したところ、走行距離が30~55㌔㍍(最大約30%)伸びることが確認された。

両社では今後、各部品に帝人の素材や技術を活用した量産向け軽量LS―EVの実用化を、22年後半に目指しており、今回開発したソーラールーフの技術向上を図りながら、Well to Wheelゼロエミッションの実現に向けた取り組みを進めていく。帝人は、AEV社との取り組みを一層強化していくことで近未来のモビリティへのニーズを先取りし、自社の高機能素材や設計、デザイン、複合化技術による技術提案力を強化していく。
 帝人では、注力すべき重点領域として「環境価値ソリューション」を掲げており、持続可能な循環型社会の実現に貢献するソリューションを提供していく。